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乳癌予後不良の指標となるバイオマーカーを特定

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乳癌予後不良の指標となるバイオマーカーを特定

NCIニュース 2009年5月26日

乳癌生存率と血液中の濃度が高いとき炎症の指標となる2種のタンパク質との関連性が見出された。米国国立衛生研究所の一機関である国立癌研究所主催の、健康・食生活・活動・ライフスタイル(HEAL)研究のデータを用いて、C反応性タンパク質 (CRP)と血清アミロイドA (SAA)が高レベルの乳癌患者は、低レベルの乳癌患者に比べて、年齢、腫瘍病期、人種、BMI指数、心疾患病歴などにかかわらず、早期死亡率または再発率が、おおよそ2倍から3倍高いことがわかった。この研究結果はJournal of Clinical Oncology誌2009年5月26日号電子版に発表された。

炎症は免疫反応のひとつである。それは、病原体、損傷した細胞、その他の刺激物など、有害要素に対する生得の身体防御の一部であり、治癒プロセスの促進に役立っている。炎症は急性と慢性に分類できる。急性炎症は有害刺激物質に対する短期的で有益な反応であり、慢性炎症は、炎症状態が持続し組織損傷に繋がる可能性を持つ病態である。

CRPとSAAは炎症に反応して血液中に蓄積される。CRPは肝臓と脂肪細胞で産生され、いくつかの免疫に関連した機能を持つ。SAAもまた肝臓から分泌され、肝臓から胆汁へのコレステロールの輸送と炎症箇所への免疫細胞の補充に関与している。どちらのタンパク質も軽度の慢性炎症がある人の血液中に高濃度で検出される。慢性炎症は乳癌の進行と転移の一因になると考えられており、慢性炎症がある乳癌生存者は再発のリスクが高い。また高CRPレベルは、心臓疾患のリスク上昇とも関連付けられている。

「炎症と乳癌生存率に関するHEAL研究は、両者の関連性を検討したこれまで最大の研究であり、この新しい研究分野に対して無類の貢献をしている」と本研究の共著者であり、NCI癌制御・人口学部門、HEAL研究の試験統括医師であるRachel Ballard-Barbash医師/公衆衛生学修士は言う。「HEAL研究には、食生活、身体活動、および体重の詳しいデータがあり、これらの健康行動性向が、この関連性をどの程度変化させるか調査することができた。」

この研究は、CPPとSAAが癌生存率を下げる指標であることを確認する一連の進行中の研究のひとつである。これまでの研究では、転移性前立腺癌、胃癌、食道癌、大腸癌、手術不能の非小細胞肺癌、および膵癌で、CRPレベルの上昇と予後不良との相関が示されている。別の研究では、SAAと胃癌、腎細胞に対して同様の相関が示されている。研究結果から炎症が癌の進行に関与している可能性が示唆されるが、どのように関与するかその正確なメカニズムは明白ではない。

本稿はNCIのHEAL研究の結果として発表される多くの論文のひとつであり、HEAL研究は、身体活動、食習慣、体重増減パターン、食生活、ホルモン、およびその他の要因が、乳癌予後に与える影響を調査するべく計画された取り組みである。この研究のために早期乳癌の女性1,183人が、シアトルのフレッドハッチンソンがん研究センター、アルバカーキのニューメキシコ大学、ロサンジェルスの南カリフォルニア大学の3つのがんセンターから募集された。参加者は研究に参加した時点でライフスタイルに関する質問票を記入した。2年後の次回訪問時(最初の診断からおよそ2.5年後)には血液サンプル採取(CRPとSAAレベル解析に使用)と身長および体重が測定された。これらの女性は計10年にわたって追跡調査される。

この研究は、乳癌生存と治療後に計測された炎症バイオマーカーとの関係を考察した、最初の大規模集団ベース研究である。バイオマーカーは診断からおよそ31ヶ月後に計測されており、各患者が受けた乳癌治療による急性炎症ではなく慢性炎症の影響を、正確に評価できるほど十分に時間が経過していると考えられる。

研究者らは炎症バイオマーカーと全生存および無病生存の関係を検討した。全生存は、フォローアップ面会から患者の死亡(死因は問わない)、または研究期間の終了までの時間と定義される。無病生存はフォローアップ面会から患者の乳癌の再発、別の癌や新たな癌の診断、患者の死亡、あるいは研究期間の終了までの時間と定義される。SAAおよびCRPのレベルが高いと、(統計学的有意に)全生存が減少することが報告された。SAAのレベルが高い女性は、早期死亡率が3倍高く、CRPが高い女性は早期死亡率が2倍高い。無病生存についても同様のことが示されたが、相関は弱く、SAAレベルが高いと癌の再発による死亡率が2倍高く、高CRPレベルの女性は死亡または再発率が1.5倍多いという結果であった。このことは、SAAとCRPは無病生存よりも全生存により密接に関連していることを示唆している。より精密にリスクを見積もるためには、更に研究を深め、これらの関連性やその他の潜在的仲介因子をもっとよく理解する必要がある。

「炎症は、肥満、運動不足、心疾患などのいくつかの可変的リスクファクターと関連付けられている。これらはすべて癌生存者の予後に影響を及ぼす可能性をもつ」とNCI癌制御・人口学部門ディレクターのRobert Croyle博士は言う。「次の重要な課題は、薬物療法やライフスタイルを変更によるマーカー値の減少が、乳癌の再発と生存に与える効果を調査することだろう。」

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NCIは、癌予防や癌生物学の研究、新たな治療法の開発、新たな研究者の育成や指導を通して、癌による負担を大幅に軽減し、癌患者やその家族の生活を改善するために、国家癌プログラムやNIHの取り組みを統率している。癌に関する詳細は、NCIウェブサイトhttp://www.cancer.gov を閲覧いただくか、NCI癌情報サービスへご連絡ください。1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)

Health, Eating, Activity, and Lifestyle (HEAL) 研究に関する詳細情報はhttp://appliedresearch.cancer.gov/surveys/heal/ を閲覧してください。

リファレンス:Pierce BL, Ballard-Barbash R, Bernstein L, Baumgartner RN, Neuhouser ML, Wener MH, Baumgartner KB, Gilliand FD, Sorensen BE, McTieran A, Ulrich CM. Elevated Biomarkers of Inflammation Are Associated With Reduced Survival Among Breast Cancer Patients. Online May 26, 2009, J Clin Oncol 27

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杉田 順吉 訳
原 文堅(乳腺科)監修
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原文

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