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マウス腫瘍におけるタンパク質の変化の測定が画像技術によって可能となる

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マウス腫瘍におけるタンパク質の変化の測定が画像技術によって可能となる

NCIニュース 2009年7月1日

多くの乳癌および一部の卵巣癌や前立腺癌、肺癌で正常量を超えて認められるHER2タンパク質が、新しい画像技術により生体マウスでの測定が可能となった。マウスで妥当性が実証された後、追試を待っているこの新しい方法によって、HER2が発現している腫瘍と、そのHER2タンパク質を直接ターゲットとした標的治療の適応となる人を非侵襲的にリアルタイムで特定することが可能となる。

この方法により、医師が個々の患者に対する治療を最適化することに役立つ情報も提供されるであろう。本試験は、米国国立衛生研究所の一部である国立癌研究所および国立画像生物医学・生物工学研究所 (NIBIB)の研究者らにより実施されThe Journal of Nuclear Medicine誌の2009年7月号に掲載された。

HER2タンパク質は、乳癌患者の約20%から25%において過剰発現(正常値異常に産生)がみられる。HER2過剰発現の腫瘍は侵攻性が強く、HER2過剰発現のない腫瘍よりも再発しやすい。HER2を直接狙った標的療法は、HER2が過剰発現している腫瘍の成長を遅延または停止することができる。

現在、HER2発現は、生検標本、すなわち、体内から取り出した腫瘍標本で測定する。しかしながら、これらの標本でのHER2発現は、腫瘍全体としてのHER2発現を正確には示していない可能性がある。さらに最初に診断された後は、フォローアップとしての生検は一般的には行われず、標的治療薬がその標的に達するまでの時間や、その効果、および効果の持続時間を評価する手段はない。

この試験では、研究チームは、HER2に特異的に強固に結合するタンパク質であるAffibody Moleculeに放射性原子(フッ素-18)を結合させたイメージング化合物を用いた。Affibody AB(ブロンマ、スウェーデン)により開発されたAffibody Moleculeは、抗体よりも非常に小さく、容易に腫瘍表面に達する。放射線原子により体内のAffibody Molecule分布のPET(陽電子放出断層撮影)での解析が可能となる。

研究チームはまず、マウスでのHER2発現腫瘍を描出するために放射性標識Affibody Moleculeを用いた。HER2の発現がないものから非常に高いものまでの様々なHER2発現レベルを持つヒト乳癌細胞をマウスの皮下に注射した。3週間から5週間後、腫瘍が形成されてから、マウスにAffibody Moleculeを注射しPETを撮像した。PETで測定されたHER2発現のレベルは、外科的に切除された同じ標本を従来の検査方法で測定した発現レベルと一致していた。

次いで、この方法が治療に対する反応としてのHER2発現の変化を測定するために用いることができるかどうかを確かめるために、研究チームは非常に高いもしくは高いHER2発現を示す腫瘍を持つマウスにAffibody Moleculeを注射し、HER2発現を減少させることが知られている薬剤である17-DMAGで治療した。PETスキャンを17-DMAGでの治療前と後で行った。研究者らは、17-DMAGで治療されていないマウス群と比較して、非常に高いレベルでHER2が発現していた腫瘍を持つマウスにおいてHER2レベルは71%減少し、高いレベルでHER2が発現していた腫瘍を持つマウスにおいては33%減少したことを見いだした。研究者らはこれらの減少を、マウスから切除された腫瘍内のHER2濃度を従来の検査方法を用いて確認した。

「われわれの研究により、Affibody Moleculeを用いたPET検査が、HER2発現の2〜3倍の低下を検出するのに十分な感度を有することが示された。」と上級著者であるNCI癌研究センターのJacek Capala博士は述べた。「それゆえ、PET検査は現在の方法を大きく上回る利点があると思われる。われわれの技術でHER2標的療法対象患者がより適切に選択可能となり、腫瘍の標的療法への反応性の有無や耐性獲得を早期に検出できるだろう。」

「この手法は、乳癌以外の他の癌に対しても容易に応用を広げることが可能である。」とCapala博士は続ける。「Affibody Moleculeは、特定の細胞タンパクを標的として選択できるため、他の腫瘍に特有な標的タンパク質について同様な化合物が作成可能である。」

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高杉友紀子 訳
平 栄(放射線腫瘍医、がん治療認定医、医学物理士)監修
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原文

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