膵臓癌リスクは、血液型を決定する遺伝子の変異に関連している | 海外がん医療情報リファレンス

膵臓癌リスクは、血液型を決定する遺伝子の変異に関連している

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

膵臓癌リスクは、血液型を決定する遺伝子の変異に関連している

NCIニュース 2009年8月2日

米国国立衛生研究所の一機関である米国国立癌研究所(NCI)を初め多くの大学や研究機関の共同研究によると、ヒトの血液型を決定する遺伝子における共通の変異が膵臓癌のリスク増大と関連しているとのことである。2009年8月2日にNature Genetics誌の電子版で発表されたこの研究は、50年以上も前に初めて得られた知見と整合している。

この研究で、第9染色体のABO式血液型の遺伝子が存在する領域における遺伝的変異が膵臓癌リスクと関連していることが見出された。血液型A、BまたはAB型を表す変異を有する人は、血液型O型を表す変異を有する人に比べ膵臓癌リスクが高い。この知見は、過去の研究(その一部は1950年代や1960年代に遡る)と整合しており、AおよびB血液群(すなわち血液型A、B、およびAB型)の人において胃癌、膵臓癌のリスクが増大することを示した。今回の結果は、これまでの知見に遺伝学的根拠をもたらすものである。

ヒトの血液型は、どの型のABO遺伝子を両親から受け継いでいるかに依存する。ABO遺伝子により生成されたタンパク質は、赤血球や膵臓の細胞を含むその他の細胞の表面に存在する糖鎖(糖複合体)のタイプを決定する。AおよびB型の遺伝子でコードされたタンパク質は異なる糖鎖を細胞表面に送出し、AおよびBの血液型になる。O型の遺伝子は、糖鎖を送出する機能がないタンパク質をコードする。他の研究者による研究により、膵臓の腫瘍細胞におけるABOタンパク質のコーディング配列は正常な膵臓細胞とは異なることが示されている。

膵臓癌リスクに寄与する遺伝的変異を見つけるために、研究チームはゲノムワイド関連研究(GWAS)を行った。GWASでは、ある疾病に罹患している人と罹患していない人ゲノムにおいて、一塩基多型(SNPs)と呼ばれる共通の変異を解析する。最初に1,896人の膵臓癌患者と1,939人の対照患者のゲノムを解析し、膵臓癌と強い関連をもつSNPsを特定した。その後、別の膵臓癌患者2457人と非膵臓癌患者2,654人のゲノムを解析することにより、この研究結果を検証した。最終的に、研究チームは第9染色体の長腕上にいくつかのSNPを特定した。これらは膵臓癌リスクと関連し、ABO遺伝子上に位置づけられている。

「学際的な取り組みを行い、十指に余る研究グループが協働して初めて、膵臓癌リスクにおけるABO遺伝子の潜在的な役割という重要な発見をすることができた」と共著者のNCI癌疫学・遺伝子学部門(DCEG)のPatricia Hartge科学博士は述べた。「さらに多くの研究が必要になると思われるが、この発見は、とても心待ちされている診断と治療行為の改善に繋がる可能性がある。」

膵臓癌は、米国において、癌による死亡原因の第4位である。検出が困難で、身体の他の部位へ転移するまで診断されない人が多い。米国人膵臓癌患者で診断後5年以上生存するのは5%以下でしかない。リスク因子には、喫煙、糖尿病、人種、および膵臓癌の家族歴がある。

「膵臓癌は、いわゆるハイスループット・ジェノタイピングの恩恵を受ける最新の例である。ハイスループット・ジェノタイピングは、過去2年間に癌やその他の疾病のリスクに関連する遺伝学的に突然変異を起こしやすい部位を多数もたらした。」と共著者である、NCI DCEGゲノム翻訳研究室長Stephen J. Chanock医師は述べた。「さらに多くの変異が見つかり、それらの生物学的効果を検証する追跡研究が進むにつれて、膵臓癌の発生に至る遺伝的なリスク因子やメカニズムがよりよく理解できるようになるであろう。」

本研究は、PanScan の一部であり、14の学術センターからなる膵臓癌コホート・コンソーシアム(PanScan)によって実施された膵臓癌のGWASである。膵臓癌に対する感受性の標識となる可能性がある共通した遺伝子変異を特定するために、全ゲノムのスキャンが行われている。

PanScanの解析結果とデータはNCIのcaBIG (Cancer Biomedical Informatics Grid)から入手可能になるだろう。乳癌と前立腺癌に関する同様のデータの結果概要は、すでに本ウェブサイト上で、他の研究者らが自由に利用できるようになっている。

*****
杉田 順吉 訳
鵜川 邦夫(消化器病学、内視鏡学)鵜川医院監修
******


原文

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4がんに対する標的光免疫療法の進展
  5. 5若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  6. 6「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  7. 7HER2陽性進行乳癌治療に対する2種類の新診療ガイド...
  8. 8ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward