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血中マイクロRNAが膵臓癌のバイオマーカーになる可能性

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血中マイクロRNAが膵臓癌のバイオマーカーになる可能性

NCIニュース 2009年9月1日

血液サンプルから検出が可能な、マイクロRNAとして知られる小分子が、膵臓癌患者の識別に役立つ可能性があることが研究でわかった。この研究は、ヒューストンのテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らによって行われ、米国国立衛生研究所(NIH)の一部である国立癌研究所(NCI)の早期発見ネットワーク(EDRN)の支援を受けている。この論文は2009年9月1日、Cancer Prevention Research誌電子版に掲載された。

膵臓癌が高度に致死的な疾患なのは早期の発見が難しいからである。癌が局所的に進行するか、他の部位に転移するまで患者には症状が出ない場合が多い。早期に症状が現れないこと、また現時点では有効かつ低侵襲性の検診や診断技術がないことから、治療の選択肢は限られる。この状況が膵臓癌患者における高い死亡率の一因となっている。

「膵臓癌の早期発見と診断のためには、低侵襲性検査の開発が大いに必要です」とNCIの癌予防部門Cancer Biomarkers Research Groupの主任、Sudhir Srivastava博士は言った。「マイクロRNAのように循環血液中にあって、膵臓癌を罹患しているか否かの判別に使えるバイオマーカーを同定することが、重要なステップなのです」

マイクロRNA(miRNA)とは短鎖のRNAであり、タンパク質を合成する遺伝的指令を伝達するメッセンジャーRNAという種類のRNAを、翻訳レベルで調節することにより遺伝子発現を制御している。以前の研究で、miRNAが正常な細胞増殖の制御と癌の両方において重要な役割を果たしていることが示されていた。他の癌と同様に、膵臓癌においてもmiRNAの発現のパターン変化が観察されている。また最近になり、腫瘍由来のmiRNAが血中から検出可能であり、保存された血液サンプルにおいても分子が安定しているとの報告があった。

このように、血中miRNAは膵臓癌の発見と診断のために、画期的なバイオマーカーとして役に立つ可能性を持っているのである。

血中miRNAを膵臓癌のバイオマーカーとして使えるかどうかの実行可能性を評価するため、研究者らは膵臓癌と関連するmiR-21、miR210、miR-155、miR-196aという4種のmiRNAs群を選んだ。その中でmiR-155が早期膵臓癌のバイオマーカー候補に同定された。また病状悪化にともない、miR-196aの発現が増加することが示された。4つのmiRNA群のレベルは28人の膵臓癌患者と19人の健康なボランティアからの血液サンプルによって評価された。試験の対象者は、2002年から2008年の間にM.D.アンダーソンがんセンターで登録された、病理学的に膵臓癌と確認された患者と健常人で構成された。4つのmiRNAs群の遺伝子パネルを使用した場合の感度、すなわち膵臓癌を正確に発見する能力は64%であることがわかった。また遺伝子パネルは89%の特異度を示した。特異度はすい臓癌を罹患していない試験参加者のうち健常であることが正しく識別された比率のことである。

「われわれの研究結果から、膵臓癌のためのmiRNAシグネチャーにもとづいた血液検査の開発における原理証明が示されました」と論文の上級著者でM.D. アンダーゾンの分子病理学部のSubrata Sen博士は述べた。「この戦略を評価するため、癌の別のグレードや病期でのさらなる研究が必要です。EDRNのメンバーと共同で、そのような研究を開始するところです」例えば、研究者らは別の患者群で膵臓癌を発見するmiRNAsの能力を試験する予定である。

膵臓癌は、アメリカでは4番目に多い癌死の原因となっており、他の癌種と比較して生存率は低い。アメリカにおける膵臓癌患者の5年生存率は5%以下である。

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M.D.アンダーソンthe Department of Molecular Pathologyについての詳しい情報はこちらhttp://www.mdanderson.org/education-and-research/departments-programs-and-labs/departments-and-divisions/molecular-pathology/index.html.
国立癌研究所のEDRNについての情報はこちら  http://edrn.nci.nih.gov.

参考文献: Wang J, Chen J, Chang P, LeBlanc A, Li D, Abbruzzesse JL, Frazier ML, Killary AM, and Sen S. MicroRNAs in plasma of pancreatic ductal adenocarcinoma patients as novel blood based biomarkers of disease. Cancer Prevention Research. Online September 1, 2009.

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岡田章代 訳
鵜川邦夫(消化器科/鵜川医院)

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原文

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