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大腸がん・肛門がんに新適用のチェックポイント阻害剤(ASCO2016)

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大腸がん・肛門がんに新適用のチェックポイント阻害剤(ASCO2016)

欧州臨床腫瘍学会(ESMO) プレスリリース

 

2016年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会ハイライト

 ・トピック:消化器がん/腫瘍免疫学

2016年ASCO年次総会(6月3日~7日、米国、シカゴ)の口頭抄録セッションで、3種の大腸がんおよび肛門がんを新たに適用としたチェックポイント阻害剤の研究結果が発表された。これらの研究から魅力的な結果が得られたが、標準療法は依然として変わっていない。マイクロサテライト不安定性の大腸がんにおけるPD-1阻害剤単独療法またはCTLA-4阻害剤との併用療法、マイクロサテライト安定性の大腸がんにおけるMEK阻害剤とPD-L1の併用療法、肛門扁平上皮がんにおけるPD-1阻害剤について、さらなる調査が必要となる。

 

マイクロサテライト不安定性が高い大腸がんにおけるPD-1阻害剤単独療法またはCTLA-4阻害剤との併用療法

早期の大腸がん(CRC)の約15%は、DNAのミスマッチ修復システムの機能低下を意味する高いマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を示すが、転移性大腸がん(mCRC)では約4%がMSI-Hを示す。MSI-Hの大腸がんはmutation burden(*監修者注:どのくらい多岐にわたる遺伝子異常ががん細胞に内在されているか、ということ)が例外的に高いことが知られている。大腸がんにおいてMSI-Hは免疫浸潤と免疫チェックポイント調節因子の発現の増加に関与している。MSI-HおよびMSI-Hでない転移性大腸がん患者におけるニボルマブ単独療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法を評価する第2相CheckMate-142試験の中間結果が発表された(1)。

 

変異が高頻度でみられる腫瘍における腫瘍特異的な新抗原の増加は、腫瘍浸潤リンパ球数の増加や、プログラム細胞死1(PD-1)やPD-1 リガンド 1(PD-L1)などの免疫チェックポイント受容体やリガンドの過剰発現と相関する。PD-1阻害剤やCTLA-4阻害剤などのチェックポイント阻害剤は、MSI-H大腸がんに特に有効であると期待されている。

 

今回の中間解析で、ニボルマブ単独療法のMSI-H患者に対する有効性だけでなく、ニボルマブとイピリムマブの併用療法の予備的有効性も有望なものであったことが、発表から明らかになった。ニボルマブ単独療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法の効果はMSI-H患者で持続した。

 

ニボルマブ単独療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法は、臨床上の有益性と関連する忍容可能な安全性プロフィールを示し、これは他の固形がんでみられた結果と同一であった。

 

これらの有望な結果から、MSI-H転移性大腸がん患者および潜在的にはミスマッチ修復の機能低下を伴う他のがん種の患者において、ニボルマブ単独療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法を継続的に評価することが支持される。

 

マイクロサテライト安定性の大腸がんにおけるMEK阻害剤とPD-L1の併用療法

MSI-H大腸がんは、DNAのミスマッチ修復の機能低下および高い変異荷重と関連し、PD-L1/PD-1を標的とする単剤療法が効果を示す。これは、mutation burdenが高い腫瘍は、がん免疫療法の効果が高いという仮説と一致する。しかし、MSI-H大腸がんは転移性大腸がんの約4%でしかみられない。マイクロサテライト安定性(MSS)の転移性大腸がん患者において、強力かつ持続的な効果をもたらす治療の必要性は、依然として満たされていない。

 

MAPキナーゼ経路は、成長因子受容体の過剰活性化または活性化型変異を原因として、がんにおいて高頻度で調節異常をきたす経路の一つである。MEK阻害剤は単剤では転移性大腸がんにほとんど効果を示してこなかった。ミスマッチ修復機能に問題がない大腸がん(MSS)におけるPD-L1/PD-1を標的とする薬剤の効果は、その他のがん種でみられる効果より低かった。

 

前臨床モデルでは、MEKの阻害により、腫瘍細胞のMHC Iの上方調節および腫瘍内のT細胞浸潤が誘導され、抗PDL1活性が増加した。そのため、研究者らは進行固形がん患者において、MEK阻害剤であるcobimetinib[コビメチニブ]とatezolizumab[アテゾリズマブ]を併用する第1b相臨床試験を実施した(2)。KRAS変異大腸がんを含む腫瘍特異的な拡大コホートと固形がんにおける連続生検コホートが開始された。

 

コビメチニブとアテゾリズマブの併用療法は、化学療法抵抗性のKRAS変異転移性大腸がん患者において、最大用量でも良好な忍容性を示した。本併用療法はMSS患者において、コビメチニブ単独療法またはアテゾリズマブ単独療法から予測されるより高い臨床的奏効率を示した。全奏効率(ORR)は17%、6カ月全生存率(OS)は72%で、これまでの本病態の標準ケアによる全奏効率1%および生存期間の中央値約6カ月を上回る臨床的改善を示した。

 

これらの結果から、コビメチニブは腫瘍細胞のMHC I発現を増加し、腫瘍内のCD8 T細胞の集積を促進することで、腫瘍をアテゾリズマブに反応しやすくすることが示唆される。

 

この有望な予備的結果に基づき、第1b相臨床試験の拡大が転移性大腸がんにおいて現在進行中である。

 

肛門扁平上皮がんにおけるPD-1阻害剤

世界中で毎年27,000人以上が肛門がんと新規に診断される。肛門がんの発生率は毎年上昇し続けている。難治性転移性肛門扁平上皮がん患者に対する標準ケアは確立されていない。転移性がん患者に対する前向き第2相臨床試験は今まで完了していなかった。

 

症例の約80~95%はヒトパピローマウイルス(HPV)と関連している。ウイルス誘発性疾患患者の治療に対する新規治療薬として免疫チェックポイント阻害剤を使用する理論的根拠は、このがん種の腫瘍発生に果たすHPVの役割から説明できる。

 

研究者らは、難治性転移性肛門扁平上皮がん患者において完了予定の初の前向き第2相臨床試験の結果をASCO 2016で発表した(3)。ニボルマブ単剤療法は忍容性が良好であり、奏効に係る主要評価項目を満たした。HIV陽性患者において、追加的な予期できない重篤な有害事象はみられなかった。迅速な患者登録が達成された。肛門管の転移性扁平上皮細胞腫瘍の「まれな」がんを適用としたFDAの承認取得を期待する場合、継続的な臨床試験への患者登録が重要である。

 

最新のcfDNA追加データが、ESMO世界消化器がん学会で発表される予定である(2016年6月29日~7月2日、スペイン、バルセロナ)。

 

参考文献
1. Overman MJ、 Kopetz S、 McDermott RS、 et al. Nivolumab ± ipilimumab in treatment (tx) of patients (pts) with metastatic colorectal cancer (mCRC) with and without high microsatellite instability (MSI-H): CheckMate-142 interim results. J Clin Oncol 34、 2016 (suppl; abstr 3501)
2. Bendell JC、 Kim TW、 Goh BC、 et al. Clinical activity and safety of cobimetinib (cobi) and atezolizumab in colorectal cancer (CRC). J Clin Oncol 34、 2016 (suppl; abstr 3502)
3. Morris VK、 Ciombor KK、 Salem MS、 et al. NCI9673: A multi-institutional eETCTN phase II study of nivolumab in refractory metastatic squamous cell carcinoma of the anal canal (SCCA). J Clin Oncol 34、 2016 (suppl; abstr 3503)

 

原文掲載日

翻訳下野龍太郎

監修林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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