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血管脳関門を通過する薬剤がマウスにおける脳転移形成を減少させる

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血管脳関門を通過する薬剤がマウスにおける脳転移形成を減少させる

NCIニュース 2009年9月29日

新しく行なわれた試験によると、薬剤vorinostatは血液脳関門を通過し、本剤を投与しなかったマウスと比較すると脳の大きな転移性腫瘍の発現を62%減少させることができる。本剤は、ヒトでは皮膚T細胞性リンパ腫と呼ばれる癌の治療用として米国食品医薬品局に承認されているが、他の癌に対する有効性を検討するために実験的に使用することもできる。米国国立衛生研究所の一機関である国立癌研究所(NCI)の治験責任医師らとその共同研究者らによる本研究が、2009年9月29日付けClinical Cancer Researchオンライン版に発表されている。

ヒトの場合、乳癌患者の生存率はさまざまな治療によって改善しているが、乳癌の脳への転移は増加している。脳内の毛細血管の特殊な構造である血液脳関門が薬剤の到達を強く制限し、多くの薬剤はこの血液脳関門で脳から積極的に外に排出されるため、乳癌の脳転移はほとんど治療不能であることが知られている。そのため、脳転移と診断された乳癌患者の1年生存率は僅か20%程度である。

Vorinostatは、マウスにおいて、いくつかの異なる癌で原発腫瘍の成長を遅らせることが明らかになっている。これまでの試験で、Vorinostatは脳に取り込まれることが示唆されていたが、転移性腫瘍に対す効果はほとんど判っていなかった。そこで研究者らは、脳転移の形成におけるvorinostatの効果を研究するために、ヒト乳癌のマウスモデルを使用した。研究室で培養したヒト乳癌細胞を免疫不全マウスに注射すると、乳癌細胞は脳に移行し、転移を形成した。

「血液脳関門を通過し、転移性腫瘍の大きさや発現率を減少させることのできる薬剤が、早急に求められています」と、著者であるNCI癌研究センターのPatricia S. Steeg博士は述べた。研究者らは、vorinostatが正常なマウスの脳に速やかに吸収され、本剤で治療した転移巣での薬剤蓄積は周囲の脳組織に比較すると最大3倍も高いことを発見した。また、小さな腫瘍の発現(微小転移巣)も、この治療を受けなかったマウスと比較してvorinostatにより28%減少した。

脳の転移性病巣を減少させるvorinostatの作用は、新しい二つの機序に関係している。本剤は、DNAの二本鎖の両方を切断し、Rad52と呼ばれるDNA修復遺伝子の機能を低下させることができる。

本試験に参加している研究者の数人が今年6月に「Molecular Cancer Therapeutics」誌に論文を発表し、脳転移を有するマウスにおいてvorinostatが放射線療法の効果を高めたことを示した。ヒト乳腺腫瘍を脳に移植されたマウスは、vorinostatと放射線治療を受けた場合に最も生存期間が長く、本剤が放射線療法に対する癌細胞の感受性を高めることを証明した。「今回の知見を考えあわせると、研究者らはヒトにおける臨床試験でこの薬剤を検討するための非臨床基盤を確立したと言えます」、とSteeg博士は述べた。

参考:Palmieri D, Lockman PR, et al. Vorinostat Inhibits Brain Metastatic Colonization in a Model of Triple-Negative Breast Cancer and Induces DNA Double-Strand Breaks. Clin Cancer Res. Sept. 29, 2009. Vol.15, No. 19.

Steeg博士の研究についての詳しい情報は、http://ccr.cancer.gov/staff/staff.asp?profileid=5851をご覧ください。

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snowberry 訳
榎 真由 監修
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原文

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