2011/06/14号◆各界のトピック「ASCOでのがんアドボケートたち〜目的に向けてつながる」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/06/14号◆各界のトピック「ASCOでのがんアドボケートたち〜目的に向けてつながる」

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2011/06/14号◆各界のトピック「ASCOでのがんアドボケートたち〜目的に向けてつながる」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年6月14日号(Volume 8 / Number 12)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf

____________________

◇◆◇各界のトピック◇◆◇   

ASCOでのがんアドボケートたち〜目的に向けてつながる

    コの字型に並べられた椅子の前方に、腫瘍内科医二人が着席した。どの椅子にも癌のアドボケイト(支援者)が座っていて、その日1日のまとめとしてASCO年次総会で発表された主な研究について専門家の意見を聞こうと意気込んでいる。

スローンケタリング記念がんセンターのDr.Andrew Seidman氏とシカゴ大学のDr.Sonali Smith氏にとって、礼儀正しい質問の嵐となった。

乳癌サバイバーのShirley Mertzさんは、シカゴ大学に設置されたNCI支援の乳癌研究推進特別プログラム(Specialized Program of Research Excellence)の諮問委員でもあり、末梢循環腫瘍細胞の値が前立腺癌の治療を受けている患者の予後と相関関係にあったという試験の結果について知りたかった。このような測定値が将来、患者の診療を拒否するのに用いられる可能性があるのではないか、と心配そうに質問した。

乳癌アドボケイトであるAdvancedBC.org(進行乳癌の団体)のMusa Mayerさんは、卵巣癌の臨床試験で、「高リスク」と称された女性たちはあらかじめ患者群として組み込まれていたかどうかといぶかった。その試験結果は、抗癌剤ベバシズマブ(アバスチン)治療によって高リスク患者の生存期間が延びることを示唆していた。しかし、事前にこの特定の患者群解析が計画に盛り込まれていなかったとしたら、米国食品医薬品局(FDA)による規制判断に極めて大きな影響を与える可能性があるのではないかと注意を促した。

一人ずつコの字型の真ん中にあるマイクスタンドに近づいて、疑問を追求し終えるとまた疑問を投げかける。Seidman氏はその日、(多くが懐疑的な)ジャーナリストたちが部屋一杯につめかけた記者会見の司会を務め終えていたが、明らかに感心していた。

からかいながら一言、「ウォールストリート・ジャーナルやCNN、ブルームバーグなんかの記者よりいい質問をされますね」とも。

研究者とアドボケートをつなぐ

土日の2日間、日程の最後に開催されるレビューセッションは、ASCO公式アドボカシー・プログラムのおそらくハイライトである。この検討会は、ほとんどが自費で参加しているアドボケイトたちにとって、癌研究の進渉状況について研究者たちから直接、さらにもっと学ぶことができる機会である。

乳癌を2度経験してサバイバーとなり、ASCOアドボカシー関連プログラムを統括しているJeannine Salamoneさんの説明によれば、アドボケイトは参加費用軽減のために参加費の割引や奨学金を受けることができる。今年の総会には約350人のアドボケートが参加した。

アドボケートの多くが教育セッションに参加したり、自分たちの癌や活動の目的に関する情報の宝石を求めて大展示ホールにあるポスター要旨をくまなく調べながら5日間の総会を過ごす。一方、教育だけが総会に参加することではない。活動することでもある。Valerie Guildさんの予定をざっと見ただけでもそれは明らかである。

総会のほぼ毎日、Guildさんの予定はぎっしり詰まっている。7年前にAIM at Melanoma(メラノーマの団体)を創設したGuildさんは、研究に関するセッションに加え、製薬会社の諸代表者と会って研究の取り組みや次の臨床試験について話し合い、学術研究者たちから研究についてさらに詳しく聞き出し、ほかの患者支援団体のスタッフとは現在共同して取り組んでいることやその可能性について話し合う。

Guildさんは進行期メラノーマの診断を受けた25歳の娘をそのわずか9カ月後に亡くしている。薬剤名や臨床試験の頭文字がよどみなく口をついて出る様子から、腫瘍内科学研究界の複雑な専門用語に慣れているのは間違いない。Guildさんにとって総会は、一カ所で何でも揃う豪華なショッピングモールのようなものであり、短期間に多くの目的に向けて進展が得られる。

「見つけたい人が見つかる年に一度の機会です」と言うGuildさん。これまでにASCO年次総会に5回参加した経験から、世界最大級の医学研究会議を最大限に活かすにはどのようにすればよいのか今では把握していると話す。最初の1、2年はそうはいかなかった。

Guildさんは次のように話す。「それはもう、まさに圧倒されました。この分野の人や臨床医、企業のことをよく知りませんでした。それで、アドボケイト用ラウンジで多くの時間を過ごして、ほかの癌のアドボケイトの方たちと話をしたり、アドバイスをいただいたりしました」。

アドボケート全員にとって、といってもおそらく総会に初参加または2回目というアドボケートたちにとってはさらに、アドボケート用ラウンジは総会の慌ただしさから離れて息をつける場所である。ちょっとしたオアシスであり、アドボケートたちがリラックスしてスナックをつまみ、まわりの人とおしゃべりすることができる。総会でのアドボケート活動の拠点でもある。

Research Advocacy Network(RAN、リサーチ・アドボカシー・ネットワーク)の共同創設者であるElda Raileyさんは、「アドボケート用ラウンジは、ネットワーク作りにはとてもすばらしい場所です。ラウンジにいるときに起こることといったら、かけがえのないものです」と語った。

知識をコミュニティに持って帰る

RaileyさんをはじめとするRANは、ASCO年次総会に参加する患者アドボケートの強力な支持団体であり、財源は眼中にない。毎年、奨学金を用意してアドボケートの一団を総会に送っている。奨学金には総会参加費、旅費、食費、宿泊費が含まれている。総会の前に、一流研究者によるオンラインセミナーなどトレーニングを奨学金受給者に受けてもらい、総会を最大限に生かしてもらうための手助けをする。その見返りとして、アドボケートたちは自分たちのコミュニティの団体に協力して活動し、学んだことを広めていく。今年、RAN奨学金を受けてアドボケート15人が総会に参加した。

「私たちが目指すのは、アドボケートたちが総会で発表される最先端の研究を携えて、自分のコミュニティの患者さんたちに持ち帰ることです」とRaileyさんは説明する。

アドボケート用ラウンジで休憩をとっていたアラバマ州ハンツビルのSusan Leightonさんは13年来の卵巣癌サバイバーである。RAN奨学金を得て今年のASCO総会に参加していると説明した。背後にあるテーブルで、フード付きの白いトレーナーを着た年配の男性が時折プレッツェルの袋に片手をつっこみながらiPadをトントンと叩いている間に、Lilies of the Valley Foundation(スズラン財団)の創設支援者でもあるLeightonさんは、卵巣癌研究費調達のための地方、州および国家レベルでの働きかけについて詳しく話してくれた。

Leightonさんは、癌の研究費が削減される見込みに怒りともとれる懸念を隠さない。卵巣癌発症率や死亡率をスラスラと早口であげて、患者の臨床試験参加に配偶者が絶大な影響を及ぼしているというLeightonさんが先に出席したポスター発表のデータを詳しく説明してくれた。

「自分がやっていることに夢中なのは間違いないわね」とも言った 。

展示ホールを覗くと

アドボケートの存在は展示ホールでも感じられた。ホール正面入り口に近い一等地にあるASCOブース、そして大きな楕円形の特設場に20のがん支援団体のアドボケートたちが個々のスタンドにいて、近くの通路にはさらに30以上の各団体のブースもある。

サバイバーシップに重点を置いたグループから、がんでもよくみられるものから稀な癌のアドボカシー・グループ(患者支援団体)まで、ありとあらゆる団体が出展している。稀な癌のアドボカシー・グループの一つに、創設4年のCholangiocarcinoma Foundation(胆管癌財団)がある。ブースには代表のMarion Schwartzさんがいた。

ホール内の人混みと熱気、数えきれないほどのプラズマスクリーンに映るビデオ映像をさえぎりながら、Schwartzさんは発症率が10万人中わずか2、3人というまさに稀な癌支援活動の難しさを詳しく話してくれた。ただ、出展したおかげで、総会に来ている医師たちと話をして財団を通して利用できる資源を知ってもらうというほかにない機会が持てたことの素晴らしさは、言葉では言い尽くせない。

Schwartzさんは、「出展し始めた頃は、立ち寄ってくださったほとんどの方が私たちの存在をご存じありませんでした」と言う。2、3年後には状況が変わった。「医師の方々は、私たちに患者さんの援助ができると本当に理解してくださっているようです」と語った。

目指すものに達する

1990年代半ばから癌アドボカシーに関わり続け、2005年にはFight Colorectal Cancer(大腸癌と闘おう)を創設したNancy Roachさんによれば、ASCO総会に参加するかどうかはアドボケートまたはがん支援団体それぞれの目的次第である。

Roachさんはアドボケート用ラウンジにあるクッションつきの大きな椅子に座り、両肘を膝の上について同僚二人を指した。Kate MurphyさんとPam McAllisterさんは毎年ASCO総会に参加して科学的研究を吸収している。Murphyさんは同団体のホームページにあるブログに新しい研究の結果について書いている。

新しい研究の支援を主な目的とする団体や個人にとって、総会参加は重要である。「科学研究にまさにさらされることになりますから。それにもっと大切なのは、研究者たちと実際に会って話ができることです。そうすれば研究評価の質も上がりますし、さらに効果的に貢献することができます」と、Roachさんは話す。

一方、多くのアドボケートにとっては、助けを必要とする人たちに即時に手を差し伸べることに総会参加の意義がある。Leightenさんは、「ここに来て研究を学ぶことができます。そのあとで、研究を理解したいと望む患者さんやサバイバーのみなさんを実際に助けることができるのです」と語った。

その情報が、「患者さんやサバイバーが医師と一緒に知識に基づく治療決定をするときに道しるべになる」かもしれない、とLeightenさんは言う。

— Carmen Phillips

【上段画像下キャプション訳】 2011年ASCO 年次総会の研究検討会で癌アドボケイトからの質問に答えるAndrew Seidman医師(写真提供:ASCO、DeShanna McGee) [画像原文参照

【下段画像下キャプション訳】 2011年ASCO 年次総会の研究検討会で質問する癌アドボケイトのShirley Mertzさん(写真提供:ASCO、DeShanna McGee) [画像原文参照

12月、サンアントニオにアドボケイトが結集毎年12月に開催されるサンアントニオ乳癌シンポジウムには、Alamo Breast Cancer Foundation(アラモ乳癌財団)が調整する公式アドボカシー・プログラムがある。アドボケイトは、会議の成果を自分のコミュニティに報告する予定や機構が整っていれば、このシンポジウムに参加するための奨学金を受けることができる。 「アドボケイトの方々は一度奨学金を得て参加してみて、シンポジウムで学べるものがわかると次の年にまた参加するために貯金を始めたがります」。そう説明してくれたのは、同財団長のSandi Stanfordさんである。このシンポジウムにはメンター・セッションと呼ばれる一日の終わりに開かれる報告会がある。メンター・セッションに参加するには、アドボケイトやシンポジウム参加者である必要はない。Stanfordさんによれば、「ですからいつも、コミュニティからたくさんの医師が乳癌の最新研究を学びにいらっしゃいます」。

 

******
ギボンズ 京子  訳
林 正樹(血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院) 監修
******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward