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小児癌の一種に関連する遺伝子変異

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小児癌の一種に関連する遺伝子変異

NCIニュース 2009年10月5日

体の軟部組織に発生し横紋筋肉腫と呼ばれる小児癌の増殖や転移に関与すると思われる遺伝子が、研究者らによって同定された。この研究成果により、横紋筋肉腫に対する治療の新たな標的が明らかになった。米国国立衛生研究所の構成機関である米国国立癌研究所(NCI)および米国国立心肺血液研究所の研究者ら、ならびにオーストラリアのウエストミード小児病院および米国オハイオ州コロンバスのネイションワイド小児病院の研究者らによる本研究は、Journal of Clinical Investigation誌2009年10月5日号に掲載された。

横紋筋肉腫(RMS)は小児において最もよくみられるタイプの肉腫である。この侵襲性の強い癌は、体のさまざまな部位で発生するが、通常、筋組織を形成する細胞に発生する。RMSの治療を受けた患者の全生存期間は延長しているが、癌が広がった、すなわち転移した患者の5年生存率は30%に満たない。

今回新たにRMSと関連付けられた遺伝子は、線維芽細胞増殖因子受容体4(別称FGFR4タンパク質)と呼ばれる物質を産生する。このタンパク質は、受容体チロシンキナーゼとして知られている受容体ファミリーに属しており、受容体チロシンキナーゼは、細胞の増殖、成熟、生存ならびに新生血管形成の制御を助ける細胞内シグナル伝達に関与している。受容体チロシンキナーゼ遺伝子の変異は、これまで他のヒト癌において確認されている。これら変異のいくつかは、通常活性化に必要な外部からのシグナルがない場合でも、チロシンキナーゼを活性化させ、この不適切な活性化により癌の発生が促進されると考えられる。

本研究チームおよび他の研究者らによる以前の研究では、RMS腫瘍においてFGFR4遺伝子が高度に発現することが報告された。また、この遺伝子は、筋発生過程において発現するが、成熟筋細胞には発現しない。この研究結果からRMSにおいてFGFR4タンパク質が果たす役割が示唆されたが、FGFR4がこの疾患にどのように関与しているのかは不明であった。

新たな研究では、研究チームは先ず、臨床追跡データが得られた患者のRMS腫瘍におけるFGFR4遺伝子の発現状態を調べた。FGFR4遺伝子の発現レベルが高いと、転移や患者予後不良を含め、疾患が進行しているという相関関係があることが分かった。次に、研究者らは、遺伝子操作技術を用いて、ヒトRMS細胞のFGFR4遺伝子の発現を阻害した。実験室での実験では、FGFR4遺伝子の発現を抑制すると、細胞の増殖が鈍化した。また、これらの細胞をマウスに移植すると、細胞の増殖は更に緩徐になり、FGFR4遺伝子の発現を抑制していない細胞と比べ、肺に転移する可能性は少なかった。

本研究チームは、次に、NCIが資金援助しているCooperative Human Tissue Networkや小児病院より入手した94個のヒトRMS腫瘍のFGFR4遺伝子に変異があるかどうか調べた。入手した腫瘍の7%超が変異を有し、FGFR4タンパク質のチロシンキナーゼ部分に変化を引き起こしていたことが分かった。

FGFR4遺伝子の2つの部位にそれぞれ2個ずつ存在する計4つの異なる変異が、FGFR4タンパク質の機能を変化させると予測された。研究者らは、実験室でこれら変異のうち2つを更に詳しく研究したところ、両方とも、自己活性化促進能を持つタンパク質を産生することが判明した。これは癌に関連するチロシンキナーゼ変異の顕著な特徴である。また、これら変異は、RMSおよびその他の癌における細胞増殖や生存ならびに転移に関連する細胞内シグナル伝達経路の構成要素の活性化と抑制に関与していると思われる。また、変異を有するRMS細胞の場合、FGFR4活性阻害剤による治療に対して感受性がより高いことも明らかになった。従って、変異FGFR4遺伝子はRMSのアキレス腱といえる。

これらの知見は、RMSにおける受容体チロシンキナーゼの変異に関する初めてのものであると研究者らは指摘する。「われわれの研究は、FGFR4が発現増加または変異のいずれかにより過剰に活性化されると、RMSの増殖と転移において重要な役割を果たすこと、そして、この遺伝子が治療の重要な標的であるかもしれないということを示しています。」と本研究の統括著者であるNCI癌研究センターのJaved Khan医師は述べた。「また、その他重要な未知の変異が、高リスク癌すなわち転移癌に隠れている可能性も強調しています。従って、われわれおよび他の研究者らは、小児癌やその他の癌の原因となりうる変異を全て探しだすために、最先端の次世代技術を駆使し、全ゲノム(DNA)の配列を解析し、
個別化治療、つまり個々の患者に応じた治療のために潜在的な標的の発見に努めています。」

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Khan医師の研究に関する詳細は以下のURLを参照のこと。
http://ccr.nct.nih.gov/staff/staff.sap?profileid=5584

横紋筋肉腫に関する詳細は以下のURLを参照のこと
http://www.cancer.gov/cancertopics/types/childrhabdomyosarcoma

本研究に携わったNHLBI研究者に関する情報および連絡先に関しては下記まで連絡のこと。
NHLBI Communications Office、電話:301-496-4236、e-mail:nhlbi_news@nhlbi.nih.gov

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Yuko Watanabe 訳
北村 裕太(農学/医学生)
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原文

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