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医療ニュースが正確かどうかを判断するには

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医療ニュースが正確かどうかを判断するには

Cancer.Netとは、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の患者向けサイトです。

【リサーチアドボケート】(患者が研究を支援する)

がん研究への招待 はじめに―

 

2014年6月、Cancer.Net Editorial Board承認

■キーポイント

・がんの予防や検診、危険因子、新しい治療法に関するニュースを読む際、それらの根拠となる新研究の信頼性や重要性を見極める方法を知っておくことが重要です。

 

・研究が行われた場所、同じテーマに関する既知の情報との適合性、その研究がどの程度進んでいるのか、報告されている値の算定基準などを確認する必要があります。

 

・がんに関するニュースの内容がご自身に当てはまるのかを知るための最善の方法は、主治医に相談することです。

 

医療ニュースは頻繁に移り変わり、新たな「画期的糸口」が見つかった翌週にはその妥当性に異議が唱えられて終わってしまう場合もあります。そのため、どのニュースを信じるべきか、習慣や特定の個人的嗜癖(依存症など)を改めるべきかを判断することは難しいのです。

 

そこで、医療ニュースの見極めに役立つと考えられる確認事項を次に挙げましょう。

 

■ニュース記事の発信元はどこか

全国紙あるいは大手の地方紙、ネットワークテレビ局など定評のある報道機関は、科学や医学分野を専門とするリポーターをスタッフにもっているのが一般的です。専門リポーターは概して、医療情報の分析経験が豊富であり、新たな情報を先行研究との関連性に沿って考慮することで、医療ニュースをできる限り的確に報道するよう努めます。病院、大学、がんセンターのプレスリリースは、その医療機関で実施された研究の発表であり、当該研究の質は高くても結果が誇張される場合もあります。ブログや小規模の報道機関は、すでに全国的に報道されているニュースを取り上げることが少なくありません。これらの小規模報道機関の多くは良質な記事を掲載していますが、中には誌面や時間を節約するために重要な情報を省略することもあります。また、科学や医療を専門とするリポーターがいないブログも多いと考えられます。

 

概ね、行政機関や非営利団体がスポンサーとなっているウェブサイトが提供する医学研究情報がもっとも正確といえるでしょう。「組織紹介」タブをクリック、あるいはホームページにリンクすれば、そのウェブサイトのスポンサーがわかります。

 

■そのニュース記事が調査・研究に基づいているのであれば、その調査・研究が最初に発表されたのはどのメディアを通してか

Journal of Clinical Oncology誌、米国医師会誌(JAMA)、Journal of the National Cancer Institute誌、Lancet誌、New England Journal of Medicine誌、サイエンス誌などの一流の医学雑誌は、厳格なピアレビューのプロセスを採用しており、このプロセスを経なければ記事は掲載されません。つまり、同じ分野の専門家が精度、重要性、結果の再現性の観点から当該研究を審査し、そこでの承認を得てはじめて記事が発表されるのです。しかし、一流の医学雑誌で発表されたという理由だけで、標準的に実施されている診療方法がその研究結果に基づいて変更されるというわけではありません。

 

■ニュースの内容は当該研究分野全般に及ぶのか、それとも1つの研究についてのみ報告しているのか

概して、1つの研究のみ述べているニュース記事において、新しい治療法・知見がおよぼすリスクや有益性を適切に示すことはできませんし、研究が及ぼす長期的な影響を考察しているわけではありません。ほとんどの医師は、たった1つの研究結果から患者さんに健康習慣を改めるよう勧めることはありません。もし何か質問したい研究があれば、主治医や担当の医療スタッフに相談しましょう。

 

■新たな情報は、同じテーマの一連の研究の中でどの位置に当てはまるのか

医療の専門家は通常、1つの研究に基づいて標準的に行っている診療方法を変更しません。学術論文は研究プロセスの段階毎に書かれますが、新たな治療法を採用したり、現行の診療方法を変更したりするのに十分なエビデンスが得られるまでには、異なる研究機関においてさまざまな研究が積まれることから、長い年月を要するのがふつうです。

 

■その研究はどの相で行われたものなのか

その研究が即、患者にとって有用となるかを判断するためには、どのような研究が実施されたのかを知ることが重要です。培養組織あるいは動物を用いた研究であれば、得られた知見を患者の日常生活に応用するのは早すぎます。培養組織や動物は、治療の作用の仕組みをよりよく理解するためにモデルとして用いられますが、ヒトにおいてどのように作用するかを知るために代用できるモデルとはいえません。

 

ヒトを対象とする調査・研究試験は臨床試験(治験)と呼ばれ、いくつかの段階(以下「相」)に分けられます。

 

・第I相試験の目的は、動物での使用において安全であると証明された新しい薬や治療法が、ヒトに用いられた場合でも安全であるかを検証することです。

 

・第II相試験は、新しい治療法が特定のがんに対し、腫瘍の縮小など明確な有効性を発揮するかを評価することに加え、その治療法の安全性について、より詳細な情報を得ることを目的としてデザインされます。

 

・第III相試験の目的は、特定の疾患(ここでは「特定のがん」)を有する少人数の患者において有望な結果が示された新しい治療法を、同じ疾患に対する現行の標準治療と比較することです。第III相試験でもっとも重要視されるのは、生存期間とQOL(生活の質)に関するデータを提供することです。

 

第III相試験で得られた情報をもとに現行の臨床診療が変更される可能性はありますが、第I相、第II相試験の情報からでは一般的に時期尚早といえます。(“phases of clinical trials”をご参照ください)

 

■そのニュース記事で報告されているのはどのような健康関連情報なのか

調査・研究で得られる結果のうち最も関心を集めるのは全生存率です。しかし、全生存率が判明するまでの期間が長いことから、奏効率や無病生存率(期間)などの項目を全生存率の代わりの評価項目として用いることがあります。奏効率とは当該治療法が腫瘍を縮小させるかどうかを意味し、無病生存率(期間)は、治療の後、疾患の徴候がない状態で患者が生存した割合(期間)を意味します。これらの代替項目が用いられた際、必ず覚えておかなければならないのは、たとえそれらの評価結果が良好であったとしても、必ずしも全生存率の改善につながるわけではないということです。

 

また、新しい治療法の試験結果が統計学的に有意であったと報告されることがありますが、日常診療の面においても有意義であるとは限りません。たとえば、大規模試験において新しい治療法により5年生存率が50%から51%に改善された場合、その治療法の効果は統計学的に有意であるとみなされるでしょう。しかし、50%と51%との統計学的な差は医学的には重要な差ではない場合もあるのです。特に、その治療法が重大な副作用を引き起こす場合です。

 

■ニュース記事で報告されているのは相対リスクか絶対リスクか

リスクとは、任意の人にがんが発生したり、治療後に再びがんが発生、つまり再発したりする危険度を示します。調査・研究の大多数では、統計に関して相対リスクが強調されます。しかし、絶対リスクの方が実際のリスクを明確に示すのです。相対リスクとは、ある特定の危険因子をもつ人の集団におけるリスクと、その危険因子をもたない集団におけるリスクの比を表したものです。他方、絶対リスクは確率です。任意の人が特定の期間に疾患(ここでは「がん」)を発症する確率を、通常、パーセントで表したものです。(がんの“risk and risk factors”(英語)をご参照ください)

 

■その他

次に、ニュース記事の内容が誇張である可能性を示唆する注意すべき表現を下記に挙げます。上記の確認事項とともに検討してみましょう。

 

「飛躍的」「画期的」といった言葉
科学的探索のプロセスは通常、小さな段階を経ながら少しずつ進展するもので、長足で躍進するわけではありません。医学における飛躍的成功は「まれ」です。

 

試験結果から「特効薬」「妙薬」の出現が有望視される、というような記述
残念ながら、疾患に対して即効性のある予防法、治療法は極めてまれです。細菌感染症に対する治療薬ペニシリン、またポリオワクチンの発明は例外なのです。種類が多岐に分かれる「がん」などの複雑な疾患が単独の治療法により治癒することは、ほぼあり得ないでしょう。

 

■一面的な記事
ニュース記事では、中立的な立場から、テーマとなっている治療法の有益性とリスクの双方が記述されるべきです。がんに対する新しい治療法がすべての患者に有益であることはまれであり、常に副作用などのマイナス面が伴うと考えてよいでしょう。

 

がんに関するニュースがご自身の病態に当てはまるかを見極める最良の方法は、主治医や他の担当医療スタッフに相談することです。新しい研究がご自身の状況とどのように関連しているかを説明することが出来るからです。

 

 

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本文内容を翻案した音声ファイル(英語):
Cancer.Net Podcast: How to Know When Medical News is Accurate

本文内容を翻案した動画ファイル(英語):

Cancer.Net Video: How to Know if Medical News is Accurate, with Jennifer Obel, MD

 

原文掲載日

翻訳八木佐和子

監修吉松由貴(呼吸器内科/淀川キリスト教病院)

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