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マウス前立腺腫瘍が免疫細胞に機能変化を生じさせる可能性がある

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マウス前立腺腫瘍が免疫細胞に機能変化を生じさせる可能性がある

NCIニュース 2009年10月7日

マウスの前立腺腫瘍が、CD8陽性T細胞として知られる免疫細胞に機能変化を生じさせ、抗腫瘍作用を持つ細胞から免疫反応を抑制する細胞へと変化させることを研究者らが発見した。米国国立衛生研究所 (NIH)の付属機関の一つである米国国立癌研究所(NCI)の研究者らによるこの知見は、癌の免疫療法をデザインする上で重要な意味を持つ。この新しい研究はJournal of Immunology誌2009年10月15日号電子版に掲載される。

「CD8陽性T細胞が免疫抑制細胞へ変化するのは、免疫系が腫瘍の増殖を制御する機能を腫瘍が制限するメカニズムの一つかもしれません」と、論文の著者でNCI癌研究センターの腫瘍免疫・寛容グループ(Tumor Immunity and Tolerance Group)のリーダーである、Arthur A. Hurwitz博士は言った。「このプロセスをマウスで研究することで、免疫療法を受けた癌患者の一部が、初期には治療に反応しても、時間の経過とともに反応しなくなるという理由を説明する助けとなるかもしれません」

マウスでもヒトでも、免疫系が病原体や異物に出会うと、免疫応答を開始する。この応答の一つが、細胞障害性T細胞、あるいはキラーT細胞とも呼ばれるCD8陽性T細胞の動員と活性化であり、異物を破壊するのに役立つ。腫瘍細胞に対する免疫応答においても、CD8陽性T細胞が役割を果たしている。CD4陽性制御性T細胞として知られる別のT細胞は、このCD8陽性T細胞の活性を抑制する。制御性T細胞による免疫抑制は、自分自身の細胞を攻撃することを防ぐ役割を果たしている。高レベルのCD4陽性制御性T細胞は、一部の癌における予後不良と関連している。さらに、マウスにおける研究では、制御性T細胞による免疫抑制活性を遮断することで、腫瘍に対する身体の免疫を強め、腫瘍の増殖を遅らせたり、癌ワクチンによって誘導される抗腫瘍免疫応答を改善したりすることが示されている。

マウス実験における最近のエビデンスは、CD8陽性T細胞がCD4陽性制御性T細胞と同様の免疫抑制活性を発揮する可能性があると示している。さらに、癌患者においてこの免疫抑制性CD8陽性T細胞が発見された。前立腺癌担癌マウスに注入された前立腺癌特異的CD8陽性T細胞は腫瘍まで移動はするが、腫瘍細胞に対して免疫応答しなくなる、つまり寛容になるというHurwitzのチームによる以前の知見が、これらの抑制細胞の存在で説明できる。しかし、抑制性CD8陽性T細胞が腫瘍に到達する前に抑制活性を持っていたのか、あるいは腫瘍細胞によって抑制細胞に変化するのかは不明のままであった。

今回の新しい研究でHurwitzのチームは、CD8陽性T細胞が、腫瘍細胞そのものに加えて周囲の非癌細胞や免疫系細胞からなるマウスの腫瘍微小環境に入ってから免疫抑制機能を獲得することを発見した。研究者らは、腫瘍から単離された腫瘍特異的CD8陽性T細胞が、非特異的T細胞の増殖能力を抑制することを発見した。それに対して、マウスのリンパ節から単離された腫瘍特異的CD8陽性T細胞は、非特異的T細胞の増殖を抑えることは出来なかった。

この抗増殖活性の一部は、CD8陽性T細胞が抑制細胞に変化した後に分泌する物質によってもたらされると思われる。その分泌物質の一つ、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-beta)は細胞の増殖分化を調節するタンパク質で、癌や他の疾患で役割を果たしている。TGF-betaはCD4陽性制御性T細胞の免疫抑制活性にも関与していると考えられている。

次にチームは腫瘍特異的CD8陽性T細胞が抑制細胞へ変化するのを防げるか否かを調べた。これを調べるにあたり、研究者らは前立腺癌担癌マウスに腫瘍特異的CD4およびCD8陽性T細胞を投与した。一部のCD4陽性T細胞はヘルパー細胞として働き、CD8陽性T細胞を含む他の免疫細胞の活性を強めた。この条件では、前立腺腫瘍から単離されたCD8陽性T細胞は、もはや他のT細胞の増殖を抑制しないことがわかった。さらに、これらの細胞ではCD4陽性T細胞に曝露されなかった細胞よりも、TGF-betaの産生が少なかった。

腫瘍に到達した活性化CD4陽性T細胞は、CD8陽性T細胞の抗腫瘍機能を助ける因子を分泌するか、あるいはCD8陽性T細胞が抑制活性を獲得するプロセスを、腫瘍中にある他の免疫細胞が遮断するのを助けている可能性があると研究者らは提唱している。

本チームによる次の研究は、腫瘍特異的CD8陽性T細胞がマウスの癌微小環境に入った際に免疫抑制機能を得るメカニズムを明らかにすることに焦点をあてることになるだろう。Hurwitz氏は語った。「これらの細胞がどのようにして抑制細胞になり、どのように抑制活性を媒介するのかを理解することは、そのプロセスを遮断する方法を見つけるために重要です。それが理解できれば、マウスの実験系でより効果的な抗腫瘍T細胞応答を生みだすわれわれの能力を高めることができ、ひいてはヒトへの応用が可能となるかもしれません」

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岡田 章代 訳
榎本 裕(泌尿器科医)監修
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原文

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