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短鎖RNAが肝臓癌患者の生存および治療に対する反応の予測に役立つ可能性

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短鎖RNAが肝臓癌患者の生存および治療に対する反応の予測に役立つ可能性

NCIニュース 2009年10月7日

マイクロRNAとして知られる小分子RNAによって、医師らは、予後不良な中でも、インターフェロンと呼ばれる生物学的製剤に対してよく反応する肝臓癌患者の識別をしやすくなる可能性がある。米国国立衛生研究所内の国立癌研究所(NCI)の科学者たちと、上海の復旦大学、香港大学、オハイオ州コロンバスにあるオハイオ州立大学の共同研究者によるこの発見は、The New England Journal of Medicineの2009年10月8日号に掲載された。

「インターフェロンは、実験治療薬として癌患者の治療に長年使用されてきましたが、効果はわずかなものでした」と本研究の筆頭著者でNCI癌研究センターのLiver Carcinogenesis Section(肝臓発癌研究部門)所属のJunfang Ji医学博士は述べた。

「われわれの発見は、特殊なゲノムプロファイルの患者に対して大きな潜在性を秘めた薬剤を再発見していることから、非常に面白い発見です。腫瘍のゲノムプロファイルに基づき、既存の薬剤で患者を治療することができれば、治療の効果を改善して費用も削減することができます」と本研究の上級著者で肝臓発癌研究部門の長を務めるXin Wei Wang医学博士が付言した。

肝細胞癌(HCC)は一般的な肝臓癌である。現在、最も効果的な治療は手術であるが、患者の10〜20%しかこの選択肢には適格でなく、また、たとえ適格であっても再発率が高い。インターフェロンによる術後(補助)療法は、再発防止を目的として一部の患者に術後実施されるが、この方法もまた奏功しないことが多い。

HCCの発達過程は解明されていない。判明しているのは女性よりも男性が発症しやすく、男性はより進行性の高い型に発達しやすいということだ。HCCの発達には、腫瘍生物学や腫瘍内微小環境(腫瘍を取り囲む非癌組織)の違いが関係しているのかもしれない。

ヒトの多様な癌においてはマイクロRNAのレベルの変化が認められていることから、Wang医学博士の研究チームは、HCCに関連するマイクロRNAの発現の多様性について研究した。これらのRNA小分子は、翻訳として知られる過程を調整することによって、遺伝子活動の制御において重要な役割を果たす。翻訳においては、メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる異なる種類のRNA分子が、遺伝子に格納された遺伝子コードを複製してからリボソームと呼ばれる細胞構造に運び、そこで細胞のタンパク質を合成するためのテンプレートの働きをする。マイクロRNAには多くの種類があり、1種類のマイクロRNAが多様なタンパク質の発現に影響を及ぼす可能性がある。

研究チームは、癌組織と正常組織に関連するマイクロRNAのレベルを男女について測定した。研究者たちは241人の手術患者のマイクロRNAの発現プロファイルを分析した。はじめに正常な肝臓組織のマイクロRNAプロファイルと、次いでマイクロRNAを男女について比較した結果、研究者たちは女性の正常な肝臓細胞により多く発現する複数のマイクロRNAを特定した。そのうちのひとつはmiR-26で、きわめて多量に発現し、男女間の差が著しかったために、さらなる分析の対象として選定された。

全体として、性別にかかわらず、miR-26の発現レベルが低い患者は、miR-26の発現レベルが高い患者より生存期間が短かった。両患者群の生存期間には、約4年の差があった。研究者たちはこの発見を3つの独立したHCC患者群について検証したが、やはり腫瘍のmiR-26のレベルが低いと生存期間は短かった。

別の分析で研究チームは、miR-26の状態がインターフェロン治療に対する感受性に影響するかについて調査した。術後に他の標準治療に追加して用いたインターフェロン治療を評価する臨床試験に参加した135人の患者から収集した腫瘍サンプルにおけるmiR-26のレベルを検査した。癌治療の一部としてインターフェロン治療を受けた72人の患者について、研究者たちは、腫瘍のmiR-26レベルが低い(予後不良を示した)患者には、補助的なインターフェロン治療が効果的であることを発見した。これらの患者は、腫瘍のmiR-26レベルが低くインターフェロン治療を受けなかった患者に比べ、少なくとも7.7年間長く生存した。対照的に、腫瘍のmiR-26レベルが正常な患者に対しては、インターフェロンの効果はなかった。研究者たちはまた、別の79人の患者群を対象にこの発見を検証した。

これらの発見は、HCC患者の予後の決定と、再発防止を目的としたインターフェロン治療が効果をもたらしうる患者の選定において、腫瘍のmiR-26の状態が有益な情報となる可能性を示している。

「HCCは進行性の高い肝臓癌の型で、手術に適格な数少ない患者における再発率が高い」とWang医学博士は述べた。「われわれの研究は、マイクロRNAの発現レベルを用いることによって、手術に追加するインターフェロンが効果をもたらしうる肝臓癌患者の識別が実際に可能であることを示している」

研究に参加した患者の全員は、1999-2003年の間に復旦大学のLiver Cancer Institute(肝臓癌研究所)と香港大学医療センターで手術を受けた。患者の多くは、B型肝炎陽性の中国人HCC患者であった。研究者たちは、非アジア人HCC患者におけるmiR-26の状態と結果の関連を評価するには、さらに研究が必要であることを注記した。また、C型肝炎やアルコールの乱用に関連する肝硬変などの潜在的な肝疾患を抱えるHCC患者を調査する必要もあるだろう。研究チームは、腫瘍のmiR-26レベルの低いHCC患者に対するインターフェロン治療の有効性をさらに調査するために前向き臨床試験を計画している。

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Wang医学博士の研究の詳細は、http://ccr.cancer.gov/Staff/Staff.asp?profileid=5764を参照。

参考文献: Ji J, Shi J, Budhu A, Yu Z, Forgues M, Roessler S, Ambs S, Chen Y, Meltzer PS, Croce CM, Qin L, Man K, Lo C, Lee J, Ng IOL, Tang Z, Sun H, and Wang XW. MicroRNA expression, survival, and response to interferon in men and women with liver cancer. The New England Journal of Medicine. No. 361, Vol. 15.

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横山 加奈子 訳
林 正樹(血液/腫瘍内科医)監修
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原文

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