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核内遺伝子配置は癌性の乳房組織と正常な乳房組織を区別する指標となりうる

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核内遺伝子配置は癌性の乳房組織と正常な乳房組織を区別する指標となりうる

NCIニュース 2009年12月7日

正常な乳房組織と比べると浸潤性乳癌ではいくつかの遺伝子の細胞核内配置が変わることが研究者らにより明らかにされた。この発見により、癌細胞では遺伝子が疾患特異的な3次元の核内配置をとる可能性があり、このようなパターンの遺伝子配置を正常組織と癌性組織を区別する新たな診断戦略として使用できるかもしれないことが示唆される。本研究は米国国立衛生研究所の一機関である米国国立癌研究所(NCI)の研究者らにより行われ、2009年12月7日電子版および2009年12月14日Cell Biology誌に掲載された。

染色体と個々の遺伝子は細胞核内でお互いに対して、またランドマークに対して一定の空間配置を占めていることが明らかにされている。遺伝子の空間配置は多くの正常な細胞分裂の過程で変化し得る。また、遺伝子の空間配置は癌などの疾患状態にある細胞でも変化する。病理学者が日常的に癌を確認する際に指標とする細胞核の形や大きさの明らかな変化は、癌細胞核内で遺伝子の空間配置が大きく変化していることを示唆している。

本研究の統括著者であるNCI癌研究センターのTom Misteli博士は「われわれは乳癌組織内で特異的な配置をとる遺伝子の特定を試み、遺伝子疾患に特異的な核内配置を正常組織と癌性組織を区別する新たな診断戦略として利用できるかどうかについて調査した」と述べた。

博士らは正常組織と癌性組織の核内で特異的な配置を占める遺伝子を同定するため、細胞内の一定のDNAシークエンスを検出・局在化できる蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を用いて、11のヒト正常乳房細胞標本と14の浸潤性乳癌組織標本から遺伝子20個を可視化した。その結果、乳癌組織標本の8個の遺伝子の配置が高い頻度で変化していた。調べた遺伝子のうち少数のみが癌細胞で配置変化しており、これは、配置変化は遺伝子特異的なもので、核内配置の大規模な変化を反映したものではないことを示唆する。また、遺伝子の配置の変化は細胞内に存在する遺伝子コピー数に相関していなかったため、よくある細胞内の出来事(癌にしばしば関連するゲノムの不安定性)に起因するものでもなかった。

次に博士らは組織標本を用いて、遺伝子の配置変化により正常組織および非癌部組織と癌性組織の区別ができるかどうかを調べた。その結果、HES5遺伝子の核内配置によりほぼ100%の確立で潤性乳癌組織を特定できることが示された。HES5は一般に癌に関連する遺伝子で、癌に関係する生物学的経路に影響を及ぼす。また、2〜3個の遺伝子の核内配置を組み合わせることで低い偽陰性率、偽陽性率で癌性組織の特定ができる(つまりこの組み合わせによりほとんどの癌性組織を癌として認識でき、非癌部組織を癌として認識することはほとんどなかった)。この方法は、細い針やもっと太いコアー針を使って組織を少し取らなければならない現在の標準的な乳癌診断検査と比べ好ましいものである。

博士らはもっと多くの組織試料を対象とした研究で今回得られた知見と同様の知見が得られる必要があるとしているものの、正常な細胞と癌細胞で核内配置が異なる遺伝子の特定ができれば、遺伝子の空間配置が新たな乳癌診断の手段となる可能性がある。また、診断に適用する上で必要なこととして、博士らは遺伝子の空間配置に個人差があまりみられないことも示している。さらに博士らによれば、癌性組織は標準化された正常な遺伝子の分布と比べることで正確に特定できる。

遺伝子の空間配置が既存の乳癌診断法よりも明らかに優れている点は試料が少なくてすむことである。均質性に欠ける癌細胞でも100〜200個の細胞を分析すれば遺伝子の空間配置の変化が定期的に検出できる。さらに、この検査では、包埋生検材料やFISH法などすべて標準的な方法に依存しているため一般的な検査室で実施できる。また、定量化でき、主観的な基準や顕微鏡を使って判断する病理学者の能力に拠らないため、診断での人的なミスを減らすことができる。

Misteli博士は「多くの組織試料を対象とした研究でこの方法の妥当性が確認されれば、将来この方法をマンモグラムで異常所見が認められた患者の最初の分子診断法として使用できるかもしれない」と述べた。「また、この方法は乳癌のみでなく、遺伝子の配置変化を特定できる癌であればどんな癌にでも適用できる可能性がある」

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伊藤 くみ 訳
原 文堅 (乳腺科/四国がんセンター) 監修
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原文

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