[ 記事 ]

米国年次報告書で全体的な癌発症率の持続的低下を発表

  • 2009年12月7日

    NCIニュース 2009年12月7日

    主要な保健および癌機関の報告によると、すべての癌を総合した場合の新規診断率および死亡率は米国の男女全体とほとんどの人種および民族集団で最新の期間中に顕著に低下した。

    この低下は男性の3大癌(肺癌、前立腺癌、大腸癌)、女性の3大癌のうちの2つ(乳癌、大腸癌)の新規発症率および死亡率の低下によるところが大きい。米国の全癌種の新規診断率は1999年から2006年にかけて平均でほぼ毎年1%低下し、死亡率は2001年から2006年にかけて年間1.6%低下した。

    これらの結果は米国国立衛生研究所の一機関である米国国立癌研究所(NCI)、疾病対策予防センター(CDC)、アメリカ癌協会(ACS)、北米がん中央登録協会(NAACCR)の研究者らが著した報告書によるものである。本報告書はjournal Cancer誌早期電子版に2009年12月7日付で発表された。

    全体的な癌発症率は依然として女性よりも男性で高いが、男性は発症率(新規症例)と死亡率(死亡)が著しく低下した。大腸癌は男女ともに3番目に多い癌で、米国で癌による死亡原因の第2位となっているが、全体的な発症率は低下しつつある。しかし、50歳以下の男女の発症率増加が懸念されると報告書で述べられている。

    男女における癌発症部位上位15
    癌の種類男性: 新規症例男性: 死亡女性: 新規症例女性: 死亡
    膀胱

    _

    _

    +0.2%

    +0.4%

    +0.5%

    -1.0%

    _

    -1.1%

    乳房

    -2.0%

    -1.9%

    子宮頚部

    -3.5%

    _

    結腸/直腸

    -3.0%

    -3.9%

    -2.2%

    -3.4%

    食道

    +0.7%

    +0.4%

    腎臓

    +1.8%

    -1.5%

    +2.4%

    -0.6%

    白血病

    +0.1%

    -0.8%

    +0.3%

    -1.6%

    肝臓

    +3.6%

    +2.4%

    +1.8%

    -1.8%

    -2.0%

    +0.4%

    _

    悪性黒色腫

    +3.1%

    +2.0%

    +3.0%

    骨髄腫

    +0.7%

    -1.1%

    -2.4%

    非ホジキンリンパ腫

    _

    -3.0%

    +1.1%

    -3.7%

    口腔

    -1.2%

    -2.2%

    -0.9%

    卵巣

    -2.1%

    -1.4%

    膵臓

    _

    _

    +1.7%

    +0.1%

    前立腺

    -2.4%

    -4.1%

    -2.0%

    -3.7%

    -2.7%

    甲状腺

    +6.3%

    子宮

    -0.5%

    _

    トレンドデータは比率と変動期間のうち最新のトレンドに基づく。「-」は研究期間中に比率が統計的に有意に増加も低下もしていないことを示す。空欄はその癌が該当する性別/分類で上位15位以内に入っていないことを示す。

     

    特集では、著者らは、癌制御に対する努力が促進されれば、さらに多くの米国人がより好ましい健康行動(禁煙など)をとり、より頻繁に検診(大腸内視鏡検査など)を利用し、大腸癌の最適な治療(より効果的な化学療法など)を受けるようになり、全体的な大腸癌死亡率は2020年までに50%低下する可能性があることを大腸癌発症率のモデリング予測を用いて示している。

    他の重要点として、男性では発症率は前立腺癌、肺癌、口腔癌、胃癌、脳腫瘍、大腸癌で低下しているが、腎臓癌、肝臓癌、食道癌、白血病、骨髄腫、悪性黒色腫では増加し続けていることを挙げている。女性では、乳癌、大腸癌、子宮癌、卵巣癌、子宮頸癌、口腔癌で発症率は低下したが、肺癌、甲状腺癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、非ホジキンリンパ腫、悪性黒色腫、白血病では増加した。

    「全体的な癌発症率の持続的な低下は、大集団を対象としたリスク軽減、早期発見、新たな治療法の開発のために、過去10年間に成功裏に行った私たちの積極的な取り組みを証明するものです」とNCI局長のJohn E. Niederhuber医学博士は述べた。「しかし、私たちは発症率と死亡率のこの一定の低下に満足してはいけません。つまり、すべての米国人が個別化された診断と治療を受けられるように取り組みを強化しなくてはいけませんし、私たちは研究努力と将来への展望によってそのような方向へ進んでいると信じています」

    人種および民族集団別に見ると、癌による死亡率は黒人の男女で最も高く、アジア系および太平洋諸島系の男女で最も低かった。人種および民族による死亡率の傾向はほとんどの癌部位で類似していたが、米国で癌による死亡原因第4位である膵臓癌の死亡率は白人の男女で増加したものの、黒人の男女では低下した。

    全男性の癌による3大死亡原因は、アジア系および太平洋諸島系の人々以外では、肺癌、前立腺癌、大腸癌で、アジア系および太平洋諸島系の男性では肺癌、肝臓癌、大腸癌であった。女性ではヒスパニック系女性以外の全人種および民族集団で、肺癌、乳癌、大腸癌が癌による死亡原因の上位3位を占めた。ヒスパニック系女性では乳癌が1位であった。人種および民族集団、性別、癌部位による死亡率の差異や変動は、リスク行動、社会経済的地位、検診や治療を受ける機会および利用における差異を反映している可能性がある。

    「全癌発症率および死亡率の持続的な低下は非常に励みになりますが、食道癌、肝臓癌、膵臓癌など現在検診にあまり適していない多くの癌を含む特定の種類の癌では進歩は限定されています」とNAACCR executive directorのBetsy Kohler氏は述べた。

    大腸癌発症率の特集では、大腸癌発症の長期的な傾向は男女でかなり一致しており、1985年から1995年にかけて大幅に低下し、1995年から1998年に微増し、1998年から2006年にかけて顕著に低下したと述べられている。1984年以降、死亡率も男女ともに低下しており、男性では2002年以降、女性では2001年以降急速な低下がみられる。データのある最近10年間(1997年〜2006年)では、大腸癌の新規診断率がアメリカン・インディアン、アラスカ原住民(AI/AN)の女性以外の研究対象の全人種および民族集団で男女ともに低下した。発症率はほとんどの人口集団において65歳以上の男女で最も急速に低下する一方、50歳以下の人々で最も急速に増加した。

    「本報告書は大腸癌を減らすという点において私たちが進歩し始めていることを示していますが、肺癌を除けば大腸癌で死亡する人が今なお最も多いのです。喫煙習慣がより減少することで肺癌やその他の癌の発症率を減らし、大腸癌検診の改善は大腸癌を予防することができます。CDCのColorectal Cancer Control Programを通してわれわれは、大腸癌検診の格差を是正し、命を救う大きな可能性を得ました。」とCDCの局長Thomas Frieden医学博士は語った。CDCのプログラムは地域ベースの検診への取り組みを支援し、検診に保険が適用されない、または保険に未加入で、他の保険が利用できない50歳から64歳までの低所得の男女への大腸癌検診サービスを提供している。

    研究者はマイクロシミュレーションモデルを用いて、リスク要因、検診や治療法の変化の歴史的影響を分析し、大腸癌の今後の死亡率の傾向を予測した。NCIのCancer Intervention and Surveillance Modeling Network(CISNET)コンソーシアムが開発したMISCAN-Colonという名前の同モデルは、1975年から2020年にかけての米国住民のシミュレーションを行う。モデルには大腸癌リスクを増加させる可能性のある要因(喫煙、肥満、赤肉(red meat)の摂取など)や大腸癌リスクを軽減する可能性のある要因(アスピリンの使用、葉酸やカルシウムなどのサプリメントの摂取、運動など)が含まれる。検診の利用を予測するため、研究者は便潜血検査(便サンプル中の血液を検査する)や内視鏡検査(医師が結腸の下部または大腸全体を検査する軟性S状結腸鏡検査と大腸内視鏡検査)の利用に関する全国的統計を使用した。治療効果を計算するため、異なった歴史的期間中に進行大腸癌に用いられた4つの化学療法レジメンの使用に関するデータ、およびそれに関連した無病生存率を評価した。

    このモデルを用いることで、研究者はリスク要因、検診の実施、治療の進歩における歴史的変化が発症率と死亡率の過去の変化におよぼした影響や2020年までの将来的傾向の予測が可能になった。

    1975年から2000年にかけて、大腸癌発症率は22%低下し、その半分はリスク要因の変化、残りの半分は検診による可能性が最も高かった。同様に、大腸癌死亡率はその期間に26%低下し、そのうち9%がリスク要因の変化、14%が検診、3%が治療の改善によるものであった。

    研究者は大腸癌による死亡率の傾向がさまざまなレベルの癌抑制介入でどのように変化するかを調べるために予測を行った。リスク要因、検診または治療(2000年以降安定)に変化がなければ、米国人の2000年から2020年にかけての大腸癌による死亡率は17%低下すると予測した。しかし、現在進行中の変化が継続すれば、36%の低下を見込める。癌抑制への取り組みを加速させれば、大腸癌による死亡率全体を2020年までに50%低下させることが可能である。

    「大腸癌における著しい進歩が、州および国家レベルでの現行の知識を癌抑制に応用するための協調的で的を絞った取り組みによって実現しうることが明らかになりました」と米国癌協会最高責任者のJohn R. Seffrin医学博士は述べた。「大腸癌検診の増加は、一般市民や医療界の教育、大腸癌検診の全面的な健康保険適用の提唱などさまざまな取り組みを通じて実現されています。米国癌協会は本報告書で可能と述べられている大腸癌死亡率50%低下の可能性にできる限り近づくように今後も尽力していきます」

    参考:Edwards BK, Ward E, Kohler BA, Eheman C, Zauber AG, Anderson R, Jemal A, Schymura MJ, Lansdorp-Vogelaar I, Seeff LC, van Ballegooijen M, Goede SL, Ries LAG. Annual Report to the Nation on the Status of Cancer, 1975-2006, Featuring Colorectal Cancer Trends and Impact of Interventions (Risk Factors, Screening, and Treatment) to Reduce Future Rates. Cancer; Published online Dec. 7, 2009; DOI: 10.1002/cncr.24760

    ******
    吉田加奈子 訳
    鵜川 邦夫(消化器内科医/鵜川医院)監修

    ******


    原文

    【免責事項】

    当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。
    翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。