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ある型の非ホジキンリンパ腫の潜在的な新しい治療標的が遺伝子変異から明らかになる

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ある型の非ホジキンリンパ腫の潜在的な新しい治療標的が遺伝子変異から明らかになる

NCIニュース 2010年1月6日

悪性度の高い型の非ホジキンリンパ腫を発生させる一因となっている可能性のある遺伝子変異が研究者らにより発見された。癌細胞が生存のために用いる可能性のある機序への洞察がこれらの知見から得られるため、この疾患の新たな治療標的が同定できるようになるかもしれない。

米国国立癌研究所(NCI)、国立アレルギー・感染症研究所および国立衛生研究所の一機関である米国立ヒトゲノム研究所の研究者らにより実施されたこの研究は、Nature誌の2010年1月7日号で発表された。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)はB細胞に由来する。B細胞は抗体を産生する免疫細胞であり、重要な生体防御機構の1つである。DLBCLは最も多くみられる型の非ホジキンリンパ腫で、新たに診断される症例の約30%を占める。DLBCLには生物学的に異なるさまざまな型が存在し、化学療法後の患者の生存率は著しく異なる。活性化B細胞様(ABC)型は現在利用できる治療法への反応が最も低い。

正常なB細胞が外来異物に出会うと、B細胞受容体(BCR)として知られる、B細胞の表面上のタンパク質が、生存して増殖するように細胞に伝えるシグナル伝達経路を活性化する。シグナル伝達経路は一連の段階的な生化学的事象であり、増殖や生存といった細胞の重要な機能の調節を助ける。各経路には正常なシグナル伝達が変化しうるポイントがあり、その変化によって異常な細胞機能が引き起こされる。シグナル伝達経路における変化は、多くの種類の癌細胞で発見されている。以前の研究では、BCRのシグナル伝達がリンパ腫の増殖の一因となっている可能性のあることが示唆された。しかし、直接的な遺伝的証拠および機能的証拠に欠けていた。

この新しい研究では、BCRのシグナル伝達経路においてリンパ腫細胞の生存に影響を及ぼす重要なポイントを同定するため、研究者らは先端的な実験手技を最初に用いた。その結果、この経路のいくつかの個別の構成要素を阻害することによってリンパ腫細胞が死滅することが明らかになった。したがって、ABC型のDLBCL細胞が生存するには、BCRのシグナル伝達が進行中であることが必要となる。著者はこれを慢性活動性のシグナル伝達と呼んでいる。

次にチームは、ヒトのDLBCLの腫瘍で、これらのシグナル伝達経路の構成要素をコード化している遺伝子における変異を探した。その結果、ABC型腫瘍の約5分の1でCD79Bとして知られるBCRのシグナル伝達の構成要素に変異があることがわかった。通常は制動プロセスが抑制シグナルに応答して経路を遮断するが、変異によってこの制動プロセスが阻止され、BCRのシグナル伝達が増加していた。

「われわれのデータから、BCRのシグナル伝達がABC型のDLBCLにおいて不可欠な役割を果たしているという重要な証拠が得られます」と上級著者であるNCIの癌研究センターの医師、Louis M. Staudt氏は言う。「このように、この研究はこの種類のリンパ腫の豊富な治療の機会を開き、最終的にBCRのシグナル伝達経路の構成要素を標的とした薬剤の臨床試験につながる可能性があるのです。」実際に、Staudt氏のチームは、慢性骨髄性白血病の治療薬として承認されているダサチニブが、シグナル伝達経路の構成要素の1つであるBTKと呼ばれるタンパク質の活性を抑制することにより、BCRのシグナル伝達を遮断し、BCRの慢性活動性のシグナル伝達を示すABC型のDLBCL細胞を死滅できることを発見した。

「しかし、BCRの慢性活動性のシグナル伝達が開始される多様な生化学的機構を理解するには、さらなる研究が必要です」とStaudt氏は述べている。「BCRの慢性活動性のシグナル伝達に依存するDLBCLの症例である患者を同定できる検査を開発することも必要です。そうすれば、BCRのシグナル伝達経路を遮断する薬剤の臨床試験を合理的に開発することができるのです」

Staudt氏の研究についての詳細情報は以下のサイトを参照のこと。

参考文献:Davis RE, Ngo VN, Lenz G, Tolar P, Young R, Romesser PB, Kohlhammer H, Lamy L, Zhao H, Yang Y, Xu W, Shaffer AL, Wright G, Xiao W, Powell J, Jiang J, Thomas CJ, Rosenwald A, Ott G, Muller-Hermelink HK, Gascoyne RD, Connors JM, Rimsza LM, Campo E, Jaffe ES, Delabie J, Smeland EB, Fisher RI, Braziel RM, Tubbs RR, Cook JR, Weisenburger DD, Chan WC, Pierce SK and Staudt, LM. Chronic Active B Cell Receptor Signaling in Diffuse Large B Cell Lymphoma. Jan. 7, 2010. DOI: 10.1038/nature08638. Nature.

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川瀬 真紀 訳
北村 裕太(農学/医学生) 監修
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原文

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