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腎損傷を回復するための新たな治療法の可能性が見いだされる/MDアンダーソンがんセンター

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腎損傷を回復するための新たな治療法の可能性が見いだされる/MDアンダーソンがんセンター

腎損傷による細胞可塑性プログラムが、腎疾患および線維化から回復するための治療標的となる可能性

MDアンダーソン ニュース・リリース 2015年8月3日

不安や恐れを抱いた成人が、体を丸めて胎児のような姿勢になることがあるが、同様に、がんの原因となる遺伝子損傷をはじめとする傷ついた成熟細胞は、胚の発生過程でみられる変化を開始する。

ほとんどの臓器は、糖尿病、がんまたは感染症のような疾患に直面した場合、臓器形成の過程に逆戻りする。このような順応は、臓器を保護する可能性がある一方で代償を伴い、さらに長期にわたる臓器損傷を引き起こす可能性がある。

テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、そのような疾患の一つである腎線維症についての新情報を明らかにし、世界中の何百万もの人々に影響を与えている。

彼らの研究により、腎疾患を回復する可能性のある治療標的として、EMT(上皮間葉転換)と呼ばれる胚細胞の発生過程の重要性が示された。胚はEMTなしでは発生できないのである。

本研究チームによる研究結果は、Nature Medicine誌2015年8月3日号で報告されている。

「われわれの研究により、損傷を受けた腎細胞はさらなる損傷から自らを保護するため、EMTを起こすという手段に出ますが、その過程において慢性創傷治癒の一種である線維症により、長期にわたって損傷を起こすことが示されました」と腫瘍生物学部門部長、Raghu Kalluri医学博士は述べた。「各成熟腎細胞は、胚細胞のように振る舞い、臓器の機能性を保つ重要な役割を果たす能力を失います」。

線維症はがん組織内でもみられ、腫瘍進行に関与している。がんと同様に、腎線維症は体の防衛システムによる回避反応であり、臓器系を妨害する瘢痕を形成し、臓器不全になるまでその機能性組織を破壊する。この疾患は増加しており、がんの危険因子であることがわかっているが、現在まで、線維症を引き起こす分子メカニズムについてはほとんどわかっていない。

「腎線維症では、EMTが尿細管上皮細胞(TEC)に影響を与えます」とKalluri氏は述べた。「2003年に、われわれはEMTが腎疾患および腎線維症を回復するための治療標的となる可能性があることを示しました。今回の研究では、この考えに関する有力な遺伝的発見や抗線維症療法の新案が示されています。慢性的な腎損傷の過程での尿細管上皮細胞におけるEMTの阻害が、抗線維症療法となる可能性があることが明らかとなりました。この疾患の治療法についての飛躍的な進歩であり、多くの命を救える可能性があります」。

上皮細胞は、腎臓のような臓器の組織内膜を構成する。尿細管上皮細胞は腎臓の導管系の一部であり、傷ついた組織の修復および再生において重要な役割を果たす。Kalluri 氏らは、傷ついた尿細管上皮細胞はTwist1およびSnai1のような遺伝子を使用しEMTを誘導するが、そのために修復能力が制限されることを発見した。彼らは、胚の発生に不可欠な遺伝子であるTwist1およびSnai1を削除することにより、尿細管上皮細胞の健全性が回復可能であることを、マウスで観察した。

「尿細管上皮細胞におけるこれらの遺伝子の削除の結果、EMTプログラムが阻害されました」と腫瘍生物学部門助教で本研究の共同筆頭著者であるValerie LeBleu博士は述べた。「この阻害によって尿細管上皮細胞の完全性が維持され、細胞の増殖およびその他の過程、そしてこれらの細胞の成体機能が回復しました」。

「われわれの実験により、慢性的な腎損傷の進行におけるEMTプログラムの機能的関連および重要性についての証拠が示された。EMTプログラムは胚の正常な成長に不可欠である一方、慢性的な腎損傷の進行には有害であり、それゆえに腎線維症における機能性実質を保護するための有望な治療戦略の対象となりうることが裏づけられました。」とKalluri氏は述べた。

実質は、正常な組織機能を実行するために不可欠な細胞である。

線維症は、結合組織の過剰蓄積と炎症であり、臓器損傷や死にさえもつながる可能性がある。線維症は、腎臓、肺、肝臓、心臓、骨髄および皮膚のような多くの臓器に起こる可能性があり、世界中の10億人近い人々に影響を与えているが、治療法はほとんどない。

腎不全による全死亡のおよそ40%は線維症によるものであり、線維症はループスに関連する死亡の大多数を占める。その他の線維症による疾患は、治癒困難な肺線維症、肝硬変、結合組織の硬化である強皮症などがある。

その他のMDアンダーソン研究チームのメンバーは以下のとおりである。Sara Lovisa, Ph.D., Hikaru Sugimoto, Ph.D., Komal Vadnagara, and Julienne Carstens, Ph.D., all of Cancer Biology; Chia-Chin Wu, Ph.D., Genomic Medicine; Tsvetelina Pentcheva-Hoang, Ph.D., Hersharan Nischal and James Allison, Ph.D., all of Immunology.

また、ゲッティンゲン大学医療センター、ゲオルク・アウグスト大学(ともにドイツ、ゲッティンゲン)も本研究に参加した。

本研究は、MDアンダーソン、テキサスがん予防研究所、米国国立衛生研究所(NIH)(CA155370, CA151925, CA163191, DK81576, DK55001 および P30CA016672)、Khalifa Bin Zayed Al Nahyan 基金、およびドイツ研究振興協会 (INST1525/16-1 FUGG)から資金提供を受けた。

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翻訳者氏名:生田 亜以子

野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)監修
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原文

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