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癌ゲノムアトラスで致死的な脳腫瘍の亜型が特定されたことにより新たな治療戦略につながる可能性

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癌ゲノムアトラスで致死的な脳腫瘍の亜型が特定されたことにより新たな治療戦略につながる可能性

NCIニュース 2010年1月19日

成人における悪性脳腫瘍で最も発生頻度が高い多型性膠芽腫(GBM)は、単一の疾患ではなく4つの分子亜型があり、積極的な化学療法と放射線治療への反応も亜型によって異なることが、癌ゲノムアトラス(TCGA)研究ネットワークによる研究で明らかにされた。

1つの亜型では、この積極的な化学療法と放射線治療による治療を受けた患者群の診断から死亡までの進行速度が、より穏和な治療を受けた患者よりも約50%緩徐であった。他の亜型2つではこれほど大きな影響はみられず、4つ目の亜型では全くみられなかった。

この結果が現時点で臨床現場に影響を及ぼすことはないが、今回の研究結果により、GBM患者ではゲノム変化に基づいて治療の個別化が進む可能性があるという。GBMは、ほぼ一様に予後が致死的な癌であるが、Cancer Cell誌2010年1月19日号に発表された本研究は、この癌の改善に向けた標的療法の研究にとって堅固な枠組みとなる。TCGAの本研究チームは、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立癌研究所(NCI)および米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)の共同研究費により立ち上げられた。

NIHディレクターのFrancis Collins医学博士は、「TCGAは癌コミュニティ全体を動員して癌を発見し、治療するための方策を、これまえよりも速いペースで探り出そうとしている。今回の研究結果は、今後数年間でTCGAが集積する包括的なデータから引き出せると、われわれが期待しているものの兆しにすぎない」と述べる。

GBMは、きわめて進展が早い癌である。近年では、米国で10万人に3人がGBMの診断を受けており、悪性脳腫瘍のなかで最も発生率が高い。GBM患者のほとんどが診断から約14カ月以内に死亡する。

「これらの新たな知見は、GMBの分子生物学的特性に基づいて患者を層別化するうえで大きな手掛かりとなる。癌の遺伝的基盤について知識を深めながら、癌の分子生物学的理解をすべての癌で同じぐらいのレベルに到達させ、最終的には、患者の一人一人に合わせて独自の高度な標的療法の処方を作成したい」と、NCIディレクターのJohn E. Niederhuber医師は言う。

TCGAの研究者らは、遺伝子発現プロファイルを突き止めた過去の研究を発展させて、GBMの亜型を特定した。

「われわれは、1つの亜型でほぼ例外なく無条件に起こる一連の事象を発見した」と、ノースカロライナ大学チャペルヒル校の主著者D. Neil Hayes医師は言う。「この一連の事象は、腫瘍が発生して広がる過程で重要なものであり、これらが腫瘍の初期形成にかかわっている可能性を示すエビデンスが蓄積されつつある。」

これらの事象の性質から、各亜型が発生する病理学的原因はそれぞれ別種の細胞に起因することが示唆されたと、TCGAの研究者らは報告している。このため、どの種類の細胞が変化し、最終的に初期の腫瘍形成を促すのかについて理解が進むと考えられる。GBMを形成する細胞の種類を明らかにするのは、効果的な治療法を確立するうえで重要であるため、今回得られた知見は臨床面での潜在的意義が大きい。積極的な化学療法と放射線治療に対する反応は亜型によって異なるため、薬剤クラスによっては、ある亜型には効果があっても他の亜型には効果がないものがあると予測される。

NHGRIディレクターのEric D. Green医学博士は、「GBMを遺伝子の変化に基づいて分類できれば、より効果が高い治療法によってこの致死的な癌と戦うための基盤となる。今回の研究成果により、癌ゲノムは、TCGAが標的とするさまざまな種類の癌で起こる分子生物学的変化を解明するうえで威力を発揮することが証明された。このような知識はいつか、個別化治療と癌患者のケアの向上につながると信じている」と述べた。

今回得られた新知見は、Nature誌2008年10月号にTCGAが報告したGBMゲノム変化の詳細な調査に基づくものである。TCGAは、ゲノムシークエンシングなどのゲノム解析技術を応用して癌の分子生物学的機序に関する理解を促進するため、2006年に開始された包括的かつ連携的な取り組みである。

TCGAのデータは、研究者用にhttp://cancergenome.nih.gov/dataportal/のデータベースからの公開を迅速に進めている。データベースでは、NIHの審査と承認により資格を得た研究者が、患者の治療記録のデータなどとともに、ほとんどの解析データセットに直接アクセスできる。

TCGA研究ネットワークは、全米の多数の施設の研究者150人以上で構成されている。研究参加者の一覧は、http://cancergenome.nih.gov/wwd/program]http://cancergenome.nih.gov/wwd/program/に掲載している。

癌ゲノムアトラスの詳細は、Quick Facts、Q&A、グラフ、用語集、ゲノム学に関する簡潔なガイド、閲覧可能な画像を掲載したメディアライブラリーを含めてhttp://cancergenome.nih.govで見ることができる。

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参考文献:Verhaak RGW, Hoadley KA, et al. Integrated Genomic Analysis Identifies Clinically Relevant Subtypes of Glioblastoma Characterized by Abnormalities in PDGFRA, IDH1, EGFR, and NF1. Cancer Cell, Jan 19, 2010. DOI 10.1016/j.ccr.2010.12.020.

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市中 芳江 訳
寺島 慶太(小児血液腫瘍・神経腫瘍学/テキサス小児がんセンター)監修
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原文

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