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脳腫瘍治療の一環にヘルペスウイルスを利用

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脳腫瘍治療の一環にヘルペスウイルスを利用

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脳腫瘍の一種である多形性膠芽腫(GBM)治療において、腫瘍が攻撃されやすくなるためにヘルペスウイルスを用いる治療法が将来有望であると考えられる。この知見は、2015年度米国臨床腫瘍学会年次総会(5月29日~6月2日イリノイ州シカゴ)で発表され、Journal of Clinical Oncology誌に掲載された。

 

多形性膠芽腫(GBM)は、原発性脳腫瘍の中で最も多くみられる致死的ながん種の一つであり、神経系に最も多く存在するグリア細胞から発生する。グリア細胞は、ニューロン(脳、脊髄、神経間に電気的刺激を伝える細胞)の働きを促す支持的役割を担う。GBMに対する現在の治療は、手術およびその後の放射線療法と化学療法がある。しかし、実施可能な最も積極的な治療法をもってしても、診断後の生存期間が1年未満である患者が多い。そのため、研究者らは、新たな革新的治療法の検討を続けている。

 

AdV-Tk(すなわち、アデノウイルスが仲介する単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)療法と呼ばれる治療法は、遺伝子治療の1つで、GBM治療において将来有望な治療法であると考えられている。AdV-Tk療法は、抗がん剤が腫瘍細胞を認識して攻撃しやすくなるように設計されている。まず、ヘルペスウイルスから抽出したDNAをがん組織に注入する。すると、ヘルペスウイルスDNAが腫瘍細胞を抗ウイルス療法の標的として「標識」する。その後、最新の標準的な抗がん剤を投与すると、抗ウイルス療法の効果で攻撃を受けやすくなっているがんに狙いが集中する。

 

研究者らは、手術を受けたGBM患者48人を対象とした第2相試験において、AdV-Tkと標準的な放射線抗がん剤治療を併用した場合の全生存期間と安全性を検討した。患者の転帰を標準的な放射線抗がん剤治療のみを受けたGBM患者で認められていた転帰と比較した。

 

同試験では、AdV-Tk群の患者の腫瘍細胞にヘルペスDNAが注入された。ヘルペスDNAの投与法として、ヘルペスDNAを感冒ウイルスに挿入した後、がん組織に直接注入した。ヘルペスDNAの投与に感冒ウイルスが使用された理由は、感冒ウイルスががん細胞全体に素早く広がることがわかっていたためである。使用されたヘルペスDNAは無害であったため、患者にヘルペス感染症のリスクはなかった。

 

続いて、ヘルペス感染症の治療に用いられる抗ウイルス性薬剤を患者に投与した。抗ウイルス療法の目的は、ヘルペスDNAで標識された脳腫瘍細胞を認識して攻撃することであった。抗ウイルス性薬剤が標識された腫瘍細胞を攻撃することにより、その後の標準的がん治療が腫瘍細胞に対してより奏効しやすくなると考えられた。

 

AdV-Tk群の患者の転帰は、標準的治療のみ行った群よりも有意に良好であった。AdV-Tk群の全生存期間は標準的治療群よりも3.6カ月長く、AdV-Tk群が17.1カ月、標準的治療群が13.5カ月であった。研究者らが1年時点、2年時点、3年時点の生存率を調べた結果、 AdV-Tk 群の患者のほうがすべての時点において上回っていた。AdV-Tk群の1年時点の生存率は57%(標準的治療)から67%(AdV-Tk)に上昇し、2年時点では22%から35%、3年時点では8%から19%に上昇していた。

 

AdV-Tk+標準的治療を受けた患者において、手術で摘出したがん組織が多い患者ほど、生存期間の改善幅は大きかった。すなわち標準的治療群における全生存期間の中央値は16.9カ月であったのに対し、AdV-Tk+標準的治療群では25カ月まで上昇していた。また、この手術で全摘あるいはそれに近く腫瘍を取り除かれた症例群においては、AdV-Tk+標準的治療群は生存率についても上昇が認められ、1年時点では標準的治療による64%からAdV-Tkによる90%、2年時点では28%から53%、3年時点では6%から32%に上昇していた。AdV-Tkでは、治療を妨げるような副作用はみられなかった。主な副作用は、発熱、疲労、頭痛であった。

 

今回得られた知見によると、AdV-Tk+標準的治療という治療法は、GBM患者の生存を改善すると考えられる。この治療法は、手術でがん組織の全部あるいは大部分を摘出した患者に対して特に有効であると思われる。また、この治療法は忍容性が高い。AdV-Tk+標準的治療の研究は今後も実施される価値があると研究者らは述べている。

 

参考文献:
Aguilar LK, Wheeler LA, Manzanera AG, et al. Phase II multicenter study of gene mediated cytotoxic immunotherapy as adjuvant to surgical resection for newly diagnosed malignant glioma. Journal of Clinical Oncology. 33, 2015 (supplement; abstract 2010).

 


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原文掲載日

翻訳重森玲子

監修西川 亮(脳腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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