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異常な糖タンパク質に対する抗体が、癌検出のバイオマーカーとなる可能性が認められる

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異常な糖タンパク質に対する抗体が、癌検出のバイオマーカーとなる可能性が認められる

NCIニュース 2010年2月2日

癌患者が自身の腫瘍が作りだした異常な糖タンパク質(糖分子が結合したタンパク質)を標的とする抗体を生成することを研究者らが発見した。本研究の結果は、血中の抗腫瘍抗体が、有用な高感度の癌検出バイオマーカーとなる可能性を示唆している。本研究は、米国国立衛生研究所の一部門である米国国立癌研究所(NCI)の一部支援を受けて実施され、Cancer Research誌の2010年2月15日号に掲載される。

「本研究で用いられたような新技術によって、科学者らは糖タンパク質の炭水化物(糖質)部分に基づくバイオマーカーを発見しました。このバイオマーカーは、特定の癌の早期発見および診断における新たな目標となるでしょう」と、NCIの癌予防部門癌バイオマーカー研究グループの主任、Sudhir Srivastava博士/公衆衛生学修士は述べた。

抗体はタンパク質の一種であり、身体の免疫システムが抗原と呼ばれる有害物質を検知したときに生成される。抗原には微生物、細菌、真菌、寄生虫、ウイルスなどが含まれる。抗体は免疫システムが正常組織を有害物質と誤認したときにも生成される。この抗体は自己抗体と呼ばれ、自分自身の分子と組織を標的にする。癌に対する免疫応答の一部として、癌患者が自身の悪性腫瘍細胞および主要組織に対して自己抗体を作ることがあると、研究により示されている。一部の癌細胞が免疫防御を回避する理由は解明されていない。科学者らは、そのような抗体によって、最終的に医師が簡易な血液検査で癌を検出できるようになることを期待している。

本研究の焦点とされた糖タンパク質はムチンと呼ばれる。ムチンはO-結合型糖タンパク質と呼ばれる糖タンパク質ファミリーで、細胞の表面に存在し、細胞間の相互作用において重要な役割を果たす。腫瘍は正常細胞に比べて多様な種類と量のムチンを生成するとともに、糖類を変化させるムチンを生成することがわかった。

デンマークのコペンハーゲン大学グライコミクス・センターのHans H. Wandall医学博士とOla Blixt博士を筆頭に、科学者らは、癌細胞によって作られたO-結合型糖タンパク質の異常分子構造によって、患者が自己抗体を生成するのではないかという仮説を立てた。この仮説を検証するため、科学者らは数多くの課題を克服し、異常なO-結合型糖タンパク質に対する自己抗体を同定できるツールを開発する必要があった。研究チームは、同ツールを用いて、乳癌、卵巣癌および前立腺癌患者の血液標本を検査した。

科学者らは、癌患者の自己抗体が標的とする特徴的な異常ムチン型O-結合型糖ペプチドのエピトープ(抗体が認識して結合する分子の部位)を発見したが、このような抗体は健康対照群には見られなかった。

本技術の臨床的価値を十分に評価するには多数の標本を分析する必要があるが、今回の予備試験結果も非常に有望である。

本研究は、NIHの枠を超えた「癌および癌リスク検出のための糖鎖生物学者の研究提携(Alliance of Glycobiologists for Detection of Cancer and Cancer Risk)」を通じて、NCIから一部資金提供を得た国際共同作業であった。同提携は、癌関連の複合糖質の動態解明および癌の早期発見とリスク評価に有用なバイオマーカー開発に取り組む、NCIが支援する腫瘍グライコミクス研究所の共同体である。

ネブラスカ大学のオマハ校エプレイ癌研究所のMichael Hollingsworth博士とコペンハーゲン大学グライコミクス・センターのHenrik Clausen医学博士は、腫瘍グライコミクス研究所のひとつを率いている。本研究には他に、コペンハーゲン大学グライコミクス・センター、ロンドンGuy’s Hospital内キングス・カレッジ医学校、ニューヨーク市スローンケタリング記念癌センターの科学者らも参加した。

# # #

「癌および癌リスク検出のための糖鎖生物学者の研究提携」についての詳細はhttp://glycomics.cancer.gov/を参照のこと。

参考文献:Clausen H, et al. Cancer Biomarkers Defined by Autoantibody Signatures to Aberrant O-Glycopeptide Epitopes Cancer. Cancer Research, Feb 15, 2010. DOI 10.1158/0008-5472. CAN-09-2893.

Image of an Array being loaded with glycopeptides to test a blood sample for antibodies that bind to the glycopeptides. These bound antibodies may be useful for the early detection of cancer.

写真キャプション:アレイに糖ペプチドを注入し、血液標本中の抗体結合検査を行っている。これらの抗体は癌の早期発見に有用な可能性がある。

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横山加奈子 訳
志村 美奈(薬学監修)
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原文

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