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35歳以下の大腸がんは3分の1が遺伝性/MDアンダーソンがんセンター

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35歳以下の大腸がんは3分の1が遺伝性/MDアンダーソンがんセンター

家族のがんリスク評価に有益な、遺伝カウンセリングの実施を推奨

MDアンダーソン ニュース・リリース 2015年7月20日

遺伝子変異を原因とする遺伝性大腸がんは、大腸がんの中でも比較的まれであるが、35歳以下で診断された患者においては、その発症率が特に高いことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究によりわかった。研究者らは、家族の発症リスクを調べるための遺伝カウンセリングを患者に対して実施することを提言している。

リンチ症候群や家族性大腸ポリポーシスなどの遺伝性症候群によって起こる大腸がんは全体のおよそ5%である。一般的に50歳未満での発症とされる若年性大腸がんでは、この遺伝性大腸がんの発症率はさらに高くなる傾向にあるが、思春期および若年者の発症率ははっきりしていない。

Journal of Clinical Oncology誌に掲載された今回の研究では、35歳以下で大腸がんと診断された患者に焦点を当て、この世代における遺伝性大腸がんの割合を明らかにした。

臨床がん予防部門のEduardo Vilar-Sanchez助教授が率いる研究チームは、35歳以下で大腸がんと診断され2009~2013年にMDアンダーソンにて遺伝カウンセリングを受けた193人のデータを評価した。この世代で大腸がんと診断された患者コホートとしては最大規模であると報告されている。

「今回対象とした世代の遺伝性大腸がんの割合は一般と比べて比較的高いことは、仮説の段階で予想していましたが、35%という結果には大変驚きました。」とVilar-Sanchez氏は言う。

アメリカがん協会(ACS)によると、米国では大腸がんは男女とも3番目に発症率の高いがんである。今年の新たな発症数は90,000件以上と予測されているが、うちおよそ90%は50歳以上での診断である。

35歳以下で大腸がんと診断された患者は全体の1.5%未満と、ごく一部の患者に限られている。この年齢の患者では、がんの悪性度や、治療による生殖能力への影響、家族への遺伝的リスクの可能性など、他の患者層とは異なる問題を抱えることになると、Vilar-Sanchez氏は述べる。

「今回の知見に基づき、35歳未満の患者は遺伝カウンセラーによる評価を受けるべきです。遺伝情報を解読した結果を患者本人以外の両親や兄弟姉妹、他の家族と共有することで得られる利益は計り知れません。」とも言う。

家族にとっても重要な遺伝情報

一般人口における大腸がんの生涯リスクは5%である。しかし、リンチ症候群を有する場合は50~80%であり、家族性大腸ポリポーシスでは、予防措置を取らなければ、100%の確率で大腸がんを発症する。

遺伝子検査を受けることで、発症リスクを高める変異を有する家族を特定し、環境リスク因子を減らすための行動修正を行うなど、適切な予防措置を取ることができる。また、早期スクリーニングや強化サーベイランス、予防的外科手術や化学予防法の研究へ参加することも考えられるとVilar-Sanchez氏は述べる。

今回の研究ではすべての患者で統一した遺伝子検査を行われなかった。過去の遺伝子検査は、家族のプロフィールや腫瘍の分析結果に基づき、疑わしい変異が特定されるまで、少数の連続した遺伝子を検査するというものであった。そのため、このコホートのすべての患者が遺伝子を特定する検査を受けておらず、一部の患者で潜在的な遺伝的素因が見逃された可能性もあった。

代わって、Vilar-Sanchez氏は「今回の研究データにより、この層では遺伝子パネル検査の実施を提唱します」と言う。遺伝子パネル検査は、大腸がんリスクに影響することが知られる多数の遺伝子を一度に解析する検査であり、若年患者ではこれまでの偏った遺伝子検査ではなく、包括的な遺伝子検査を受けることが可能になる。

Journal of Clinical Oncology誌に掲載された別の最新研究では、大腸がんの遺伝子パネル検査は費用対効果が高いことが報告されており、Vilar-Sanchez氏によれば、遺伝子パネル検査は現在、MDアンダーソンでは通常の診療として臨床現場に導入されているという。

予防努力の継続

将来的に、Vilar-Sanchez氏は35歳以下で大腸がんを発症したが、遺伝的原因を特定されなかった残りの3分の2の患者についても研究を進めたいと考えている。この患者群では、28.6%が大腸がんの家族歴、51.6%が大腸がん以外のがんを発症した家族歴を有していた。家族内でのがんの発症率が高い場合は遺伝的寄与が考えられるため、関与する遺伝子変異を特定する研究が今後進められる。

一方、若年性大腸がんは遺伝子だけでなく食事、肥満、喫煙、アルコールなどの行動や環境的なリスク因子によっても引き起こされるとも考えられている。ごく小さな遺伝子の影響でも、これらのリスク因子によりその影響が増幅し、遺伝的要素がなくても若年での発症に至る可能性もある。

大腸がんの発症に影響を及ぼす環境的因子と遺伝的因子を特定して分類することは、リスクの高い人を特定し、がんの発症を予防するうえで、臨床医にとって重要である。

「がん治療に最適な方法は最初の段階でがんを発症させないことです」と、Vilar-Sanchez氏は言う。

Sanchez氏のほか、 本研究の著者は以下である:Maureen Mork、Sarah Bannon氏(臨床がん遺伝学プログラム)、Y. Nancy You、Miguel Rodriguez-Bigas氏(外科腫瘍学)Jun Ying氏(生物統計学)、Patrick Lynch氏(消化器病学、肝臓病学および栄養学)。

 

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今泉 眞希子  訳
下村 昭彦(腫瘍内科/国立がん研究センター) 監修
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原文

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