早期ステージの乳がんに対する乳房温存療法は広く普及してきたが、その治療を受ける機会に課題は残る/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

早期ステージの乳がんに対する乳房温存療法は広く普及してきたが、その治療を受ける機会に課題は残る/MDアンダーソンがんセンター

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早期ステージの乳がんに対する乳房温存療法は広く普及してきたが、その治療を受ける機会に課題は残る/MDアンダーソンがんセンター

早期ステージの乳がんに対する乳房温存療法は広く普及してきたが、その治療を受ける機会に課題は残る

低侵襲治療である乳房温存療法が普及する一方で、その治療の機会を妨げている要因に対して医療政策の介入が必要なことを明らかにした大規模で綿密な分析を行った最新の研究

MD アンダーソン・ニュースリリース 2015年6月17日

アメリカで行われた乳房温存療法(BCT)に関する初の包括的全国調査によると、過去13年間で乳房温存療法の実施率は早期ステーシの乳がんの治療として着実に増加していることがわかった。しかし、どういった患者が乳房温存療法を受けているか、そこに影響している重要な患者背景の要因も明らかになった。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、乳房温存療法の選択に関して年齢、治療施設、地域の違いによる差が減少してきたこと、また乳房温存療法を利用する際に主な障害となっている社会経済的要因(保険、収入、自宅から治療施設までの距離など)を明らかにした。

AMA Surgery誌電子版で公開された本研究では、National Cancer Data Base(NCDB)を用いて、1998年から2011年までの間に治療を受けた腫瘍径T1またはT2の乳がん女性がどの手術を選択したかを検証した。NCDBはがん患者の転帰に関する全国規模のデータベースで、米国において新たにがんと診断された患者のうちおよそ70%が登録されている。解析を行ったおよそ72万8千人の女性のうち、乳房温存療法を実施したのは1998年の54.3%から2006年には59.7%と増加、その後は大体一定を保ち、2011年には60.1%となった。

しかし乳腺腫瘤摘出術とも呼ばれる乳房温存療法の実施率は、患者の保険の加入状況や収入、治療施設の違い(例えば施設のタイプ、地域、施設までの距離)などの患者背景によってさまざまであった。本研究で得られた知見は以下のとおりである。

  • 乳房温存療法の実施率は、若い患者(57.8%)よりも52~61歳の患者(62.8%)の方が高かった。また高水準の教育を受けた女性の方が(61.8%)実施率が高かった。
  • 乳房温存療法の実施率は、民間の保険に加入している患者(62.3%)よりも保険未加入の患者(49.3%)の方が低かった。また、平均収入が低い女性(51.1%)において実施率は低かった。
  • 大学などの学術機関による治療であること(59.8%)、米国北東部であること(64.5%)、住居が治療施設から17マイル(27.8 km)以内であること(およそ60%)などは、乳房温存療法の実施率の高さに関連する要因であった。それに対して、地域の医療施設による治療であること(55.4%)、米国南部であること(52%)、治療施設が自宅からかなり離れていること(54%)などは、実施率の低さに関連する要因であった。
  • 重要なのは、1998年と2011年を比較した場合、乳房温存療法の実施率は全年齢層(1998年48.2%、2011年59.7%)、地域医療機関による治療(1998年48.4%、2011年58.8%)、米国南部の医療施設(1998年45.1%、2011年55.3%)において増加しているということである。

「全体としてみると、早期乳がん患者に非常に効果があるこの治療を受ける機会の差は減少してきました。しかし医学界で大きな進歩を遂げているにもかかわらず、この治療を十分に利用できない女性達がいるのです」と、MDアンダーソンがんセンターNellie B. Connelly Breast Centerの医長および腫瘍外科助教授、また米国外科学会フェロー(FACS)であり研究責任者のIsabelle Bedrosian医師は述べた。「社会経済的な障壁は、健康政策の変化なくしてなくならないでしょう」。

さらにBedrosian氏は、研究結果について詳細に説明を加えた。治療施設から離れた遠方に住む女性達の乳房温存療法の実施率が低いのは、乳腺腫瘤摘出術後の標準フォローアップである毎日の放射線治療のために通院できるかどうかや、受ける意欲があるかどうかが原因となっている可能性がある。これはまた、米国南部、つまり自宅から治療施設まで多くの場合が非常に遠距離である地域においての乳房温存療法の低実施率を説明していると言える。収入が低い家庭の女性は放射線治療のための数週間の時間を取ることができないなど、収入や保険の加入状況もまた、手術の選択をする際の重要な要因となる。

乳がんの女性の多くは腫瘍を取り除くために何らかの手術を受けるが、大抵は乳房温存療法か乳房切除術を選択する。乳房温存療法は、腫瘍とその周囲の組織を含む乳房の一部だけを取り除く。1990年、米国国立衛生研究所(NIH)が乳房温存療法を支持する合意声明を発表すると、乳房全摘術は著しく減少し、乳房温存療法は早期ステージの乳がんに適切で有効な治療であるとして幅広い支持を得た。しかし、過去10年の間に、BRCA1やBRCA2変異の遺伝子検査や、乳房再建術、乳房MRI、予防的対側乳房切除術の発達など、技術の進歩や社会の変化に患者の関心が高まってきた。

Bedrosian医師によると、この研究では大多数の女性が乳房温存療法を選択していることが確認され、「比較的侵襲性の低いこの治療は、早期ステージの乳がんに対して良い治療法であると患者と医師が認識していることがわかる、安心できる結果」である。しかしBedrosian医師はこう付け加えた。「得られたデータはまた、患者背景によって乳房温存療法を受ける機会に差がある問題に適切に取り組むための、考慮すべきさまざまな社会経済学的要因を明らかにしました」。

Isabelle Bedrosian氏の他の共著者は以下のとおりである。Meeghan Lautner, M.D., M.Sc., Catherine Parker, M.D., Henry Kuerer, M.D., Ph.D., Heather Lin, Ph.D., Yu Shen, Ph.D., Simona Shaitelman, M.D., Ed.M., and Gildy Babiera, M.D.

本研究は米国国立衛生研究所の資金援助を受けた(P30 CAO16672)。

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平沢沙枝 訳
下村昭彦 (腫瘍内科、乳癌、早期開発/国立がん研究センター)
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原文

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