2011/05/31号◆クローズアップ「初期に疑われた子宮頸癌ワクチン、やはり効果はあると証明される」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/05/31号◆クローズアップ「初期に疑われた子宮頸癌ワクチン、やはり効果はあると証明される」

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2011/05/31号◆クローズアップ「初期に疑われた子宮頸癌ワクチン、やはり効果はあると証明される」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年5月31日号(Volume 8 / Number 11)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ クローズアップ ◇◆◇

初期に疑われた子宮頸癌ワクチン、やはり効果はあると証明される

子宮頸癌は、世界の女性の癌による死亡原因の第2位を占めている。米国や他の先進国では、検診手段、とりわけパップテストがルーチンとして広く利用でき、発生数は劇的に減少しているが、発展途上国では子宮頸癌は依然として大きな公衆衛生上の問題である。幸いにも、ほぼすべての子宮頸癌症例の原因となるウイルス群は、ワクチン開発に特に適した特徴を持っている。

ヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頸癌の発生原因であることが発見されたことをきっかけに、長期間の共同研究者であったNCI細胞腫瘍研究室(LCO)の所長Dr. Douglas Lowy氏と腫瘍性疾患部門主任Dr. John Schiller氏は、1980年代初期に、これらのウイルスがどのように細胞に感染するかを解明する研究を始めた。HPV感染、ひいては癌を予防するワクチンをデザインするという目標が掲げられたのは、1990年代初期になってからであった。

「われわれがこの研究を始めたときには、HPVワクチンはHIVワクチンにもまして楽観できないと考えられていました。事実、HPVワクチンにはそもそも効果があるのかという疑念がありました」とSchiller氏は述べた。

研究者らの執念が報われたのは、2006年米国で、子宮頸癌予防にガーダシルが最初のHPVに対する予防ワクチンとして承認されたときであった。続いて2番目のワクチンであるサーバリックスが2009年に承認された。性行為開始前にいずれかのワクチン接種を3回完了した女性や少女では、特定のHPVタイプによる感染をほぼ100%予防できる。効果の持続期間は不明だが、少なくとも5年間は持続することが示されている。両ワクチンは、子宮頸癌全体の約70%の原因となる2つの高リスク型、すなわち発癌性のあるHPV16型、18型感染に対する予防効果を有する。ガーダシルはHPV6型、11型の感染も予防するが、これらは性器いぼの90%の原因である。

「局所的性器感染用ワクチンの開発成績は良くありませんでした」。単純ヘルペスワクチン開発の試みが長い間成功していないことを例にあげて、Lowy氏はこのように述べ、「驚くのはHPVワクチンが本当によく効くことだと思います。いくつかの異なる要因によって、この非常に高いレベルの予防が可能になっているとわれわれは現在考えています」とも語った。

セレンディピティ(幸運)と良い研究の組み合わせ

Schiller氏とLowy氏らは、HPVウイルスの表面タンパク質を調べることから研究を始めたが、そのタンパク質は、感染開始の標的となる上皮細胞への結合に関与するようであった。

「ウイルスを中和する抗体をつくる最良の方法は、本物のウイルスに似たものをカラダに与えることです」とSchiller氏は説明する。「HPVには癌遺伝子があるため死滅または弱毒生HPVを投与することはできなかったので、ウイルスの外殻と似たものをつくろうと決めました」。主要なHPV表面タンパク質L1が、単独またはマイナーな表面タンパク質L2とともに、元のウイルス構造に酷似した非感染性の粒子を自然に形成し、培養細胞で感染を防ぐ抗体を高濃度でカラダに産生させることができるということは重要な発見であった。

HPV感染プロセスの研究を開始するために、研究者らはL1またはL1+L2ウイルス様粒子(VLP)を細胞とともに培養した。両タイプのVLPは細胞表面に結合することができ、L1がこの結合に関与することが示唆された。このことを理解して、研究者らはL1 VLPを用いてワクチン開発を始めることにした。注目すべきことに、L1 VLPの繰り返しが非常に多い構造と空間的配置は、抗体産生を制御する免疫受容体の活性化に理想的であり、HPVワクチン接種後にみられる抗体レベルが強固であることを説明できる。

HPVワクチンの筋肉内注射によって産生された抗体は血流にのって循環する。しかし、HPV感染は子宮頸部の表面で起こるため、こうした循環抗体がどのようにウイルスと接触して感染を防ぐのかは不明であった。この一見謎に見えることは、ウイルスのライフサイクルのさらなる研究により解明されている。

Schiller氏とLowy氏らは、感染開始には、ウイルスが子宮頸部の上皮細胞下層の基底膜に結合しなければならないことを、マウスモデルを用いて発見した。基底膜は、その上にある細胞が物理的あるいは化学的に損傷した場合にのみ表出する。この損傷(または微小な傷)が、カラダを刺激して損傷部位で抗体を放出させ、抗体とウイルスが結合できるようになる。

動物研究によってHPVが子宮頸部上皮細胞に感染する機序も明らかになった。ウイルスのL1タンパク質が基底膜に結合すると、ウイルス表面のタンパク質が再編成してL2タンパク質が現れる。その後、基底膜上の酵素が1個のL2を切り取り、L1タンパク質のそれまで隠れていた部分が現れる。このL1の領域が上皮細胞表面の受容体に結合し、ウイルスは細胞内に入ることができる。

「ほとんどのウイルスでは、そのライフサイクルの第一段階は細胞表面受容体への結合ですが、パピローマウイルスは細胞表面に結合する前に基底膜上で数時間過ごすようです。このため、抗体がウイルス粒子に結合し、感染を防ぐ機会がより多くなるのです」とLowy氏は説明する。

HPVがワクチン開発に適しているもう一つの特徴は、二本鎖DNAゲノムを有することで、そのためDNA上の変異の蓄積が困難なことにあるとSchiller氏は説明する。これにより、HPVウイルスは、HIVなど進化の速い一本鎖RNA遺伝子を持つウイルスのように、効果的に免疫系から逃れることができない。

さらに研究が必要

現在のHPVワクチンは、HPV感染および子宮頸癌予防における重要な進歩であるが、まだ改善の余地がある。

ガーダシルとサーバリックスは、HPVのいくつかの型に特有なL1 VLPを用いて開発されたため、それらの型だけを標的としている。ガーダシルの標的となるHPV型の数を増やすため、メルク社は次世代ワクチンには、HPV16型、18型に次いで子宮頸癌の原因となることの多い5つの型のL1 VLPを加えようとしている。他社は、L2タンパク質を用いてワクチンを開発する新しい手法を採用している。一部のL2タンパク質は、そのL2の起源であるHPV型だけでなく、既知のほとんどのHPV型の感染を防ぐ抗体の産生を誘発するようである。

克服すべき現実の障害もある。ワクチンは複数回接種する必要があり、高価であるため、普及の大きな妨げとなっており、発展途上国にとっては特にそうである。「今ワクチン接種を受けている少女や女性のほとんどはこの先(子宮頸癌の)検診を受けるでしょうから、実際のリスクはきわめて低いのです。われわれのしていることはほとんど前癌病変の予防です」とSchiller氏は述べた。「将来検診を十分に受けられない女性集団にこのワクチンを接種することができたら、それが本当の成果だといえるでしょう。それがこのワクチンの本当の効果となるでしょう」。

— Jeniffer Crawford

【画像下キャプション訳】子宮頸部上皮の正常な細胞層が損傷されて、その下にある基底膜が現れている部位でのみ、ヒトパピローマウイルス(青い丸型)は感染を開始できる。HPVワクチン接種を受けた女性では、この損傷が刺激となって、ウイルスに結合して感染を防ぐ抗体(黒いY型)が放出される。(画像提供:NCIのDr. Douglas Lowy氏とDr. John Schiller氏)[画像原文参照

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鈴木 久美子  訳
後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学研究科) 監修
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