2011/05/31号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2011/05/31号◆癌研究ハイライト

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2011/05/31号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年5月31日号(Volume 8 / Number 11)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・カボザンチニブにより前立腺癌などの腫瘍と骨転移が縮小
・肺癌患者の終末期医療:米国とカナダ・オンタリオ州の違い
・腫瘍細胞がストレス環境に適合する仕組み

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カボザンチニブにより前立腺癌などの腫瘍と骨転移が縮小

第2相臨床試験において、カボザンチニブ(XL184)は卵巣癌、肝臓癌、前立腺癌など数種類の固形腫瘍を縮小、または増殖を阻止した。また同薬剤は乳癌、前立腺癌、悪性黒色腫患者の骨転移病変を縮小させた。この知見は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会に先立って行われた5月18日の記者会見で、アリゾナ州スコッツデールのPinnacle Oncology HematologyのDr.Michael Gordon氏から発表された。

カボザンチニブは、細胞のシグナル伝達分子の肝細胞増殖因子受容体(MET)や血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)の働きを阻害すると同時に、他のシグナル伝達分子も阻害する可能性がある。METを介するシグナル伝達は全身での癌細胞の増殖や広がり(転移)を促進し、VEGFR2は腫瘍血管新生に関与する。

Gordon氏らにより試験に組み入れられた483人の患者のうち398人で、治療中の抗腫瘍効果が評価された。この臨床試験はランダム化治療中止試験(randomized discontinuation)という方法で行われた。すべての患者はカボザンチニブの投与を12週間受けた。最初の12週間で、病気が進行した患者は試験から除外され、腫瘍が縮小した患者は継続してこの薬剤の投与を受け、病気が安定していた患者はカボザンチニブまたはプラセボの投与に無作為に割り付けられ、この薬剤が本当に病勢安定に役立っているのかが判定された。

最善の結果は、肝臓癌、前立腺癌、卵巣癌の患者で認められ、肝臓癌患者29人中22人、前立腺癌患者100人中71人、卵巣癌患者51人中32人で、腫瘍の部分的な縮小または安定がみられた。

骨転移がある患者68人中59人で、試験中に転移巣が縮小もしくは消失した。これらの患者の多くで疼痛が軽減し、疼痛管理のための麻薬の必要が減った。

これらの結果は、シグナル伝達分子が「ひとつの経路だけではなく、全体のネットワークを追及する」ことの有益性を示していると、ASCOの癌情報委員会(Cancer Communications Committee)委員長で今回の記者会見の司会を務めたDr.Mark Kris氏は述べた。

本薬剤の前立腺癌患者の転移巣縮小における「優れた有効性」や卵巣癌患者における強い効果が示されたことにより、この試験が拡大され、各癌に非無作為化群150人が組み込まれた。これらの群の結果は、来月シカゴで行われるASCO年次総会で発表される予定である。

関連記事: カボザンチニブがいくつかの稀な甲状腺腫瘍を縮小させる可能性テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDr.Razelle Kurzrock氏が率いる研究者らによると、カボザンチニブの第1相臨床試験において、甲状腺髄様癌(MTC)患者の転移性または手術不能の腫瘍がこの分子標的薬により縮小する可能性があることが明らかになった。カボザンチニブによる治療を受けた37人の進行MTC患者における結果が、5月23日付Journal of Clinical Oncology誌電子版で発表された。この薬剤に対する抗腫瘍効果を計測できた35人の患者のうち、10人で腫瘍が縮小した(部分奏効)。37人中15人の患者では腫瘍が6カ月間以上安定していた。本試験の85人の患者のうち90%で1つ以上の有害事象が発現したが、有害事象の約半数は軽度であった。10人の患者に認められた部分奏効は「これまで治療選択肢が実質的になかったので注目に値する」と、マサチューセッツ総合病院のDr.Yariv Houvras氏とDr.Lori Wirth氏は付随論説で述べた。MTC患者におけるカボザンチニブの第3相臨床試験が現在進行中である

肺癌患者の終末期医療:米国とカナダ・オンタリオ州の違い

米国およびカナダ・オンタリオ州で、非小細胞肺癌患者の亡くなる前5カ月間のケアに関する調査を行った研究者らは、この2カ国には大きな違いがあることを明らかにした。例えば、米国の患者は亡くなる数カ月前でも抗癌剤治療を受ける傾向が強く、またオンタリオ州の患者は病院で死亡することが多かった。NCI癌制御・人口学部門のDr. Joan Warren氏らはオンタリオ州の研究者らと共同で、高齢者の終末期医療を比較した。これらの知見は、5月18日付Journal of the National Cancer Institute誌電子版に掲載された。

研究者らは、SEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)メディケアのデータベースと、カナダで一番人口が多いオンタリオ州に繋がるデータベースのデータを用いて調査した。この調査には、米国在住患者13,533人とオンタリオ州在住患者8,100人が含まれていた。対象者全員が、1999~2003年の間に死亡した65歳以上の非小細胞肺癌患者であった。

これら2地域の人口統計学上の差異を調整した後、終末期医療パターンに有意な差があることが明らかとなった。抗癌剤の使用と死亡場所の違いに加え、大多数の米国の患者は、人生最後の数カ月はホスピスを利用していた。オンタリオ州には正規のホスピスプログラムがなく、代わりに、自宅、外来クリニック、病院で緩和ケアが行われていた。

救命救急室の利用や入院に関しては、両国の患者とも死期が近づくと増加した。しかし、最後の30日間の救命救急室の利用率は、米国患者ではオンタリオ州患者に比べて12%少なかった。また、この30日間を病院で過ごした患者も米国の方が少なかった。

一方、オンタリオ州の患者の6割以上は最後の一月を病院で過ごし、入院患者として緩和ケアを受け、その8割以上は病院で死亡していた。「これら多くの患者は、支持療法のために入院していたことが判明した」と筆者は記した。米国では、ほぼ同じ割合の患者が人生最後の一月をホスピスで過ごし、病院以外で亡くなることができた。

「米国では地域的支持療法の利用が比較的高いにもかかわらず、入院患者の死亡率はとても高いが、オンタリオ州では更に高かった」とダートマス医科大学のDr. David Goodman氏は付随論説に記した。しかし、Goodman氏は、個々の患者の望みを気にも留めずにやみくもにホスピスへの入所が拡大することに対して警告し、現在両国の患者は、「終末期医療の決定に、まだ十分に参加していない」との結論を下した。

腫瘍細胞がストレス環境に適合する仕組み

新たな知見によると、一部の腫瘍細胞は、ストレス環境において生存して増殖するために、通常脳にしか存在しないタンパク質を利用しているかもしれない。カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1C(CPT1C)として知られる酵素であるこのタンパク質は、生体の主要エネルギー源であるグルコースの代わりに脂肪酸を使って腫瘍細胞のエネルギーを作ることを可能にしている。

トロント大学のDr. Tak Mak氏率いる国際研究チームは、この知見をGenes & Development誌5月15日号に発表した。この研究は、CPT1Cタンパクが癌治療の新たな標的になりうることを示唆している。

乳癌、肺癌、大腸癌といった固形腫瘍にある細胞は、正常細胞が死んでしまう環境下でも生存し増殖することができる。腫瘍細胞は、代謝転換として知られる現象である代謝の変化を通してこの生存便宜を獲得している。この現象は以前より知られていたが、脂肪酸が腫瘍細胞のエネルギー源である証拠は最近になって明らかとなった。

「これは中東油田のパイプラインが切断されたようなことである。エネルギーを得るために、ありとあらゆる代替源を利用しなければならない」と、腫瘍細胞の代謝の研究をしているがこの研究には関与していないNCI癌研究センターのDr. James Phang氏は説明した。

Mak氏らが、CPT1C遺伝子の発現と抗癌剤ラパマイシンに対するマウス乳房腫瘍細胞の耐性との相関性を明らかにしたことが、CPT1Cタンパクが代謝転換に関与しているかもしれないということの最初のヒントになった。ラパマイシンはグルコースの細胞への侵入を遮断し、その結果、細胞を飢餓状態にする。

研究者らは、次にCPT1C遺伝子の発現がヒトの癌細胞で増加するかどうかを調べた。非小細胞肺癌患者16人中13人で、CPT1Cタンパクを作るCPT1C遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)量が、癌組織では同一患者の正常肺組織と比べて顕著に多かったことが判明した。

追加試験により、栄養や酸素が枯渇した腫瘍細胞では、CPT1C遺伝子のmRNA量が増加することが示された。ヒトの乳癌や大腸癌の細胞からCPT1Cタンパクを除去すると、低酸素および低グルコース環境下における細胞の増殖能力が低下した。CPT1Cタンパクを喪失した癌細胞は、マウスに移植した際に、腫瘍の増殖が鈍化した。

これらを踏まえて、この結果は、「CPT1C阻害剤の単独投与あるいは他の抗癌剤との併用による投与が、前途有望な新たな癌治療法になる可能性を示唆している」と、筆者らは記している。

Mak氏はインタビューで、「既知の癌遺伝子は非常に数が多いため、癌治療の標的とするのは容易ではなく、むしろ癌遺伝子に比べて代謝経路を再調整する道筋のほうが少ないため、癌細胞の代謝適応の結果、またはその組み合わせを標的にした治療法の開発に努める時期なのかもしれない」と述べた。

Phang氏は、とりわけCPT1C標的は、「いくつかの癌に対する治療のアプローチとして有望である」ことに同意したが、「どういう状況下でどのくらい効果的であるか、現時点では不明である」と述べた。

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野長瀬 祥兼、 野川 恵子 訳
小宮 武文(腫瘍内科/Medical Oncology Branch, NCI ) 監修
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