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米国の若年白人に下部胃癌が増加傾向

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米国の若年白人に下部胃癌が増加傾向

NCIニュース 2010年5月4日

下部胃癌は、米国の成人全体で減少しているが、25〜39歳の白人では増加していることが分かった。この研究は、米国国立衛生研究所臨床センター(NIH)の一部門である国立がん研究センター(NCI)の研究者らが主導したもので、Journal of the American Medical Association誌2010年5月5日号に掲載された。

上部と下部の胃癌では、それぞれ原因が異なると考えられている。上部胃癌は酸逆流と関連している可能性があるのに対し、下部胃癌はヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)の感染が主な原因である。胃癌のほとんどは、65歳以上で診断されている。米国における胃癌は、アフリカ系アメリカ人、アジア系アメリカ人、ラテンアメリカ系アメリカ人に多い。

研究著者である癌疫学・遺伝子学研究部門(NCI)の医学博士William F. Anderson氏は「胃癌の全発生率の傾向は、主に高齢者の高い発生率を反映している。しかし、将来的な癌の傾向として、集団間において隔たりが生じる可能性があり、特定の年齢群別の発生率に注目すると、群間でばらつきやすい将来的な癌の傾向について、重要な手がかりを得ることができる」と述べている。

研究チームは、NCIの監視疫学遠隔成績(SEER)プログラムからのデータを分析した。同プログラムは米国住民の26%を占める集団ベースのレジストリから癌の発症率と生存率データを収集している。NCI研究チームは、1977年から2006年までに、非噴門部胃癌と診断された39,003例を特定した。次に、同30年間の発生率の変化を、年齢、人種、その他の要因で定義したグループ間で比較した。

非噴門部胃癌の全発生率(100,000人あたりの症例数)は、全人種において30年間の調査期間にわたり減少していることが分かった。具体的には、白人で5.9から4.0へ、黒人で13.7から9.5へ、その他の人種グループで 17.8から11.7へ低下した。また一方、白人では年齢群間により発生率の傾向に大きな隔たりがあった。60〜84歳群では20から13へ、40〜59歳群では3から2へ減少したが、25〜39歳群では0.27から0.45へ増加した。これに対して、黒人およびその他の人種では、ほぼ全年齢群において非噴門部癌の発生率は低下した。

非噴門部胃癌のリスクは、非ラテンアメリカ系白人よりもラテンアメリカ系白人のほうが大幅に高いが、SEERデータでは1992年まで発生率は人種別に区別されていなかった。同研究者らは、1992〜2006年の非ラテンアメリカ系白人について分析を行い、1977〜2006年の全研究期間にみられた白人全体における同様の年齢群別の傾向を観察した。

胃粘膜のピロリ菌感染は、非噴門部胃癌の主な原因であることから、若年白人と高齢白人の発生率の傾向の違いを過去50年間の感染パターンの変化で説明できるかもしれない。高齢者コホートにみられた非噴門部胃癌の減少は、ピロリ菌感染の減少の観察と一致しており、これは主な感染時期である幼児期の衛生状態が改善したことや過密化が減少したことの影響による。若年コホートにおける上昇は、感染時の年齢の変化か、もしくは感染率の長期的減少の反転を示している可能性がある。

おそらくピロリ菌の消失により明らかになったと思われる新しい発癌過程の出現の可能性も考えられる、と同研究者らは述べている。

ピロリ菌の感染以外にも、食塩および塩を使用した保存食の摂取などの栄養物への曝露が、非噴門部胃癌のリスク因子に関与している。上下部胃癌のもう一つのリスク因子には、喫煙がある。

今回のNCI研究の第一著者である医学博士Charles S.Rabkin氏は「幸いに、胃癌の全体的な負担は米国の全人種において減少している。しかしながら、25〜39歳の白人における発生率の上昇は、新しいリスク因子の特定が重要であることを意味するものだと考えられる」と述べている。

さらなる研究で、若年白人における胃癌の傾向を確認し、リスク因子を調査することが必要である、と同研究チームは結論している。

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遠藤 香利 訳
北村 裕太(農学/医学)監修
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原文

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