破傷風注射が脳腫瘍免疫療法を受ける患者の生存期間を改善/デューク大学医療センター | 海外がん医療情報リファレンス

破傷風注射が脳腫瘍免疫療法を受ける患者の生存期間を改善/デューク大学医療センター

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破傷風注射が脳腫瘍免疫療法を受ける患者の生存期間を改善/デューク大学医療センター

2015年3月11日

致死性の脳腫瘍に対して免疫機構を動員するため破傷風の追加免疫を用いるという革新的な方法がワクチン療法の効果を増強し、患者の生存期間を劇的に改善することがデュークがん研究所主導の研究により示された。

同研究結果は、2015年3月11日にNature誌の電子版に掲載された。研究者らは、小規模な盲検ランダム化試験で得た生存期間データを示すだけではなく、破傷風菌を用いる前治療法がいかにして作用するのかについても詳述し、最も致死的な脳腫瘍への治療に有効な樹状細胞免疫療法を増強させる方法についても述べている。

「膠芽腫患者の生存期間は、通常1年程度です。しかし、破傷風予防注射後に樹状細胞免疫療法を行った患者では、半数が診断後5年以上生存しました。したがって、今回得られた知見は、将来有望であり重要です」と本研究の統括著者であり、デューク大学医療センター脳神経外科部門長であるJohn Sampson医学博士は述べる。

研究者らは、膠芽腫には周辺脳組織には存在しないサイトメガロウイルス株が出現するという初期研究で得た知見に関する研究を立ち上げ、サイトメガロウイルスを免疫療法における自然標的とした。

この標的治療は、樹状細胞を用い、特定の病原体に応答するよう免疫機構を訓練するものである。デューク大学の研究チームは、白血球を抽出して樹状細胞を増殖し、サイトメガロウイルス抗原を取り込ませるという方法を開発した。

このようにして攻撃態勢をとった樹状細胞をがん患者の戻してやると、樹状細胞はリンパ節に移行し、免疫戦士にサイトメガロウイルスを持つ腫瘍を探して攻撃するよう合図する。この免疫療法の作用は良好であった。しかし、研究者らはさらなる進歩を求めた。

研究者らは、免疫機構が樹状細胞の注入前に厳戒態勢をとるよう準備をする方法を探した。研究者らは、リンパ節に存在するリンパ球群を刺激するため、広く使用され、臨床的に承認されたワクチンと同等の安全性を持つ破傷風・ジフテリアトキソイドの注射を行うことにした。

研究者らは、ヒトを対象にした小規模試験に脳腫瘍患者12人を登録し、無作為に割り付けた半数に破傷風の追加免疫を注射、残り半数にプラセボを注入した。翌日、両群の患者に対して樹状細胞免疫療法を行った。研究者らには、患者がどちらの治療を受けたのか知らされなかった。

破傷風の注射を受けるよう無作為に割り付けられた患者の前治療実施時からの生存期間は、樹状細胞治療のみを受けた患者よりも有意に延長し、破傷風注射群は半数が51~101カ月生存していたのに対し、対照群の生存期間中央値は11.6カ月であった。破傷風注射群の患者1人は、治療開始から8年の時点でも腫瘍の増殖はみられず、生存している。

「今回得られた知見は、膠芽腫患者のためだけではなく、他のがんも免疫学的標的にするために樹状細胞ワクチンの改良につながる可能性があります」と今回の研究の共同筆頭著者であり、共同責任著者であり、現在はフロリダ大学脳腫瘍免疫療法プログラムの指導者であるDuane A. Mitchell医学博士は述べる。

「当然われわれは、より規模の大きな検証試験を行っています。しかし、今回得られたデータと、今回行った治療法の将来的な適用に非常に期待しています」

研究者らは、マウスを用いた試験を行い、今回行った免疫療法がどのように作用したかを明らかにした。

研究者らは、CCL3と呼ばれる免疫シグナルタンパク質の新たな役割を明らかにした。CCL3は、これまで他の免疫活性を調節することは知られていたが樹状細胞のリンパ節への移行促進に関連しているとは考えられていなかった。CCL3は、注入部位だけでなく、全身性に作用するという。

「破傷風菌を投与したマウス、今回の研究に参加した患者のいずれにおいてもCCL3が上昇したという事実が、今回行った治療法の機序におけるCCL3の役割を調査するきっかけとなりました。それにより、CCL3および破傷風の追加免疫による想起応答は、樹状細胞のリンパ節への移行を増強させるために共に作用する必要があったことが明らかになりました」と共同筆頭著者であり、デューク大学医学博士候補のKristen A Batich氏は述べる。

「樹状細胞ワクチンは、膠芽腫などの進行性がん患者の治療に有効な場合があるものの、その過程における動力源は十分に解明されていませんでした」とSampson氏は述べる。

「われわれの研究により、破傷風という1つの抗原に対する想起応答が、CMVという別の抗原を取り込んだ樹状細胞の移行能力に影響するという免疫学的な相互作用が明らかになりました」

研究者らは、樹状細胞移行の成功率が、患者の生存期間を予測する指標となり得るかを検討する新たな研究を行う予定である。

「われわれの研究は、破傷風の追加免疫を用いて樹状細胞免疫療法を行う部位を前治療することによって、樹状細胞のリンパ節への移行が有意に改善したことを示しています。樹状細胞のリンパ節への移行は、抗腫瘍反応と生存期間の延長を改善すると考えられます」とBatich氏は述べる。

Sampson氏、Batich氏、Mitchell氏以外の共著者は以下のとおりである。Michael D. Gunn、Min-Nung Huang、Luis Sanchez-Perez、 Smita K. Nair、Kendra L. Congdon、Elizabeth A. Reap、Gary E. Archer、Annick Desjardins、 Allan H. Friedman、Henry S. Friedman、James E. Herndon II、April Coan、Roger E. McLendon、David A. Reardon、James J. Vredenburgh、Darell D. Bigner。

本研究は、国立神経疾患・脳卒中研究所助成金、米国国立衛生研究所 (NIH) の一部(P50CA108786、 P50-NS20023)、米国国立衛生研究所(R01-CA177476-01、 R01-NS067037、R01-CA134844、 P01-CA154291-01A1、 P50-NS020023-30)、アメリカ脳腫瘍学会、米国脳腫瘍協会から資金援助を受けた。これ以外の援助については雑誌に掲載した。

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重森玲子 訳
西川 亮(脳・脊髄腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)監修
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原文

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