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画像診断のX線ががんの原因に〜医療者と患者への行動の呼びかけ~/Medscape

  • 2015年4月9日

    画像診断のX線ががんの原因に ~医療者と患者への行動の呼びかけ~
    著者:Richard C. Semelka医師
    専門家向けCME/CE 掲載: 02/13/2006、更新: 02/16/2007
    《サイト注*下記の記事はMedscape(医療専門サイト)に2006年掲載、2007年更新された記事です》

    この記事は、私が以前にMedscapeに「CTスキャンによる放射線リスク〜患者中心の画像診断の呼びかけhttp://www.medscape.com/viewarticle/496297)」と題して執筆した記事の補足である。

    その記事は、2005年にMedscapeで最も読まれた記事の第5位となり、Medscapeの放射線分野では最も読まれた記事のトップとなった。この話題に対する関心が高いことは確かである。では、なぜ補足記事が必要なのか。

    理由が2つある。まず、最初の記事を書いた後に発表された書簡に対応するためである。20059月、米国科学アカデミーは、電離放射線の生物学的影響に関する7本目の報告(BEIR VII)を発表した。放射線リスクに関する明確かつ議論の余地のない信頼すべき資料であると考えなければならない。この問題を再検討するもうひとつの理由は、安全性に対する配慮をさらに強調することにある。われわれは、患者、放射線科医、紹介元医師、医療従事者、保険会社、法律関係者などさまざまな立場で行動しているため、これを熟慮する必要があると考える。

    この記事の目的は、2005年に放射線に関する記事を発表した後、このテーマに関して世界中から受け取った多くの賛否両論のメールに答えることにある。

    画像診断と放射線リスクの話に入る前にまず、コンピューター断層撮影(CT)は、強力で不可欠な診断ツールであることを強調しておきたい。CTは、ヒトの体内の仕組みを可視化できるため、ほかのどの画像診断法よりも医療の新しい時代を予告するものであった。

    この医療の新時代とは、次のようなものである。患者が受ける診断はほとんど、ことによると全面的に、画像診断に基づいて確立されている。 

    その診断と、それに基づく適切な医学的処置によって、生命を救うことができる。

    画像診断が、現代の事実上の理学的検査となったのである。

    研修医に教えるとき、私はこう話している。CTスキャンの研修を2週間もやれば、Sir William OslerをはじめCTがなかった時代の偉大な臨床医の誰よりも、放射線科の研修医1年生のほうが優れた診断医である。画像診断というのはそれほど強力な道具であり、CTはこの新たな診断の時代を最も代表する検査方法である。

    さらに、1970年代後半に患者の臨床検査に初めて使用されて以来、CT撮像法は進化し続けている。64列以上のマルチスライスCTが利用可能となったことにより、すばらしい解剖学的な表示、細部の画像を得ることが容易になった。その画像は正確な3Dモデルにまで加工することができる。この検査方法(CT)から得られる情報を改善しようとしている善意のある研究者、紹介元の臨床医および放射線科医の熱心な努力は、最終的には患者のためなることを意図したものであるため、上記のような理由から、CT撮像の恩恵とその努力を認識し、放射線リスクに関するいかなる議論も穏やかにする必要がある。

    そうはいっても、否定できない事実、そしてBEIR VIIによって真に議論の余地のないものとなった事実に、医療用放射線が発癌の原因となることがある [1] BEIR VIIではまた、安全な最低値というものはないと考えられることが強調されている [1] 。その書かれてある通りの表現では相当な不安を生じる可能性があるため、私が直感的に修正すると、標準的な体幹部CT検査での線量、約10mSVmSV:ミリシーベルト、放射線量の測定単位)未満であれば、検査1回ごとにリスクがあったとしても無視できる可能性が高いであろう、ということになる。

    しかし、CTスキャン1回(胸部、腹部または骨盤部のうち一部位のCTスキャン1回)であっても、リスクの要素が伴うものである。BEIR VIIの報告によれば、放射線線量10mSVによって発癌するリスクは1000分の1である。私は以前の報告書で、米国食品医薬品局のウェブサイトに掲載されていたもの、つまり10mSVの線量によって発癌するのは2000分の1の確率であると説明した。BEIR VII の報告ではそのリスクが2倍になっている。小児のリスクはさらに高く、発癌リスクが550分の1であると報告されている[2,3] 。よく用いられる各種画像診断の標準的な放射線量として報告されているのは次の表のとおりである。


     よく用いられる画像診断の平均放射線線量
     診断検査の実効線量 (mSv)
     《X 線検査》
    胸部(PA フィルム)0.02
    頭部0.07
    頸椎0.3
    胸椎 1.4
    腰椎1.8 
    腹部0.53
    骨盤・股関節0.83
    四肢・関節0.06
    上部消化管3.6
    下部消化管6.4
    マンモグラフィ検診0.13
    《CT》
    頭部2.0
    腹部10.0
    胸部2040
    肺血管造影2040
    PET – CT25

    CT検査1回につき多時相の造影やCT検査を複数回実施することによって、リスクが増大する。もともと多時相で撮影するような、腎CT検査および肝CT検査での多時相撮像は慎重に限定した使用を考慮するべきである。

    リスクに関するもうひとつの重要な面が次の疑問である。画像診断用の放射線によってどのような癌種(悪性腫瘍)が発生するのか、そしてそれはいつ発生するのか。この前置きとして、その疑問に対する答えは、今日まで一般にその情報がCT検査を受ける患者に事前に伝えられていない理由を一部説明するものである。

    まず、がんは一般集団に比較的よくみられるものであり、そのためどの癌がX線照射の直接的な結果として、発生したのかを見極めるのは難しい(たとえば、中皮腫のようなきわめて稀ながんではアスベスト曝露との関係を確認するのは比較的容易であるが、それとは異なる)。二つ目に、X線被ばくからがん発症までの潜伏期は最長20年ときわめて長く、その関係を推測することも証明することも困難であると思われる。BEIR VII(をはじめとする情報源)の報告では、X線被ばくと最も関係のある悪性腫瘍は白血病、甲状腺がんおよび乳がんである。[1]その報告によれば、X線被ばくから悪性腫瘍発生までの潜伏期間は白血病(を含む血液系腫瘍)で25年、固形腫瘍(肉腫、乳癌)で1020年であるとしている。

    20年は長い。20年後には検査を依頼した医師や看護師はいなくなっており、放射線科医もいない。残っているのは、子どもの頃にX線照射を受けて中年になって悪性腫瘍が発生した患者のみである。

    これまでにあったことを私なりに説明すると以下のようである。、経済的要請と特に現代のX線被ばくに関連する具体的で明らかなデータの欠如である。このデータの欠如をもとに、全般の放射線学界の要望としては、情報が確実ではないのであれば、不安をあおらない、ということである。X線によるがんのリスクに関するデータは明らかではないという放射線学界の見解をどのように説明するのか。

    第一に、X線と発がんの関連を特に取り上げた報告の大半が古い研究[4,5]であって、X線被ばくに制限がなく被ばく量の測定もされておらず、膨大な放射線量が照射されていた時代にそのようながんが発症していた(もちろん、今でもCTスキャンを複数回受ける患者には関係のないことでもないが)。第二に、われわれの認識は一般に直接体験したことからくる。私はこれを「直接体験の科学」と呼んでいる。第三に、放射線リスクとがんに関連する最も説得力のあるデータは、原爆の生存者から得たものである。表面的には、何千という人々を一瞬にして殺傷してしまう原爆の被曝を、無害の画像診断と同等に考えることを却下するのは容易である。しかし、下記に説明するように、相関関係があることはわかっている。

    話題が経済の市場崩壊の理由であろうが、この場合のような、X線照射の危険であろうが、あらゆる類いの見識が循環の道筋をたどる傾向にある。1940年代の主な医学系学術誌にはX線による悪性腫瘍の増加を説明する記事が書かれていた。これは当時、蛍光透視法の性質上、放射線科医も患者とともに放射線を浴びていたためである。報告は主に、白血病の発症率が増加した放射線科医に関するものであった。その約25年後、研究者のID Brossが「The Primacy Principle(第一の原則)」と題した報告書で、業界がある手法を開発し、その手法の安全性が確実でないとき、その治療法が安全であることを証明する負担はその業界が負うべきであり、一般市民が追うものではない、と嘆いている[6]

    彼は自身が第一の原則と呼ぶこの金言で、 CT時代以前にX線のことに言及していることは興味深い。さらに次の世代になると、X線被ばくによるがんリスクの増大を取り扱った報告、リスクモデル、動物実験およびヒトに関する報告が多数あり[7–16]、このような報告が今では急増している。

    ではなぜ、放射線科医が過剰な放射線照射による危険を認めることに消極的で、、状況の改善や説明責任、情報の普及に関して先頭に立ってこなかったのか。さらに、紹介元の医療機関、特に救急科の臨床医がその放射線検査による患者へのリスクに関して認識がなく無知で話をしたがらないのがこれほど顕著なのはなぜなのか。

    私はこの高まりつつある危機を、まず次のような要点を認識することによって対処することをお勧めする。

    私の個人的な意見では、現在、CTスキャンを何度も受けている患者の多くが、1930年代や1940年代に受けたX線照射のために悪性腫瘍を発症した患者と少なくとも同等の放射線量をおそらく受けている。また、放射線線量が未知であった時代と同じく、今日、数年にわたって複数回のCT スキャンによって患者が受ける線量も全く未知である。

    これを直感的科学と呼ぶこともできる。それは、われわれは直接的な因果を先天的に処理しているということである。高校や大学で化学を習い、実験室で実験をしたとき、2つの化学物質を混合すれば、生成物は色が変わっていたり発熱や発煙したり、爆発さえしたかもしれない。いずれにせよ、反応は多かれ少なかれすぐに起こった。われわれの脳は直接の経験による学びに順応しており、おそらくもともとは生存に係わっている。

    この学びは基本的に原始的であり、「百聞は一見にしかず」、「ここがロドスだ、ここで飛べ(論より証拠)」など、実際に目に見えるものに基づいている。

    われわれ放射線科医が患者にCTスキャンを施行するとき、患者は検査台に横になり、スキャンを受け、起き上がり、(造影剤への反応や造影剤の皮下漏出がない限り)全く問題なく、検査室を出て検査委託業者から結果が送られてくるのを待つ。過去の経験からX線の過剰線量の表れとして見慣れた徴候である皮膚の過熱、火傷、発赤および脱毛などはない。よって基本的に、われわれの原始的な脳は直接の経験による学びを認識するようになっているため、われわれが危害を加えているという概念を受け入れない。

    実際、近年になって私をはじめMRI専門家が、患者をCTではなくMRIに適応とするときに着目してきたのは、患者がCT造影剤に造影剤反応を起こしたことがある場合であり、MRIの造影剤の方が反応を起こしにくいためである。または、CTに用いるヨード造影剤によって腎不全を増悪させる可能性がある一方、MRI造影剤のガドリニウムが腎不全を悪化させることはほとんどないため、腎不全の患者に注目してきたわけであるが、これも直接の経験である。視覚によって直接得た経験からいくらか漠然とした科学的概念を引き出すのは困難であり、献身的な研究者らがその概念を証明したとしても、少なくともそれを把握したり深く理解するのは難しい。

    X線放射線の危険に関する問題を理解する上で都合のよく使える概念的な枠組みが、地球の動きである。地球は時速 1000 マイル(約1609キロ)でその軸に沿って回転し、時速 87,000 マイル(14万キロ)で太陽の周りを回っている。しかし、直接の経験から学ぶ私の頭ではそれを想像できないため信じることができない。地球が時速 87,000 マイルで移動するなんて、可能なのだろうか。私の周りを勢いよく通り過ぎるものなど見あたらず、物はびくともせず、そんな速度で飛び回っているものは何もない。とはいえ、科学者や天文物理学者がこの点を証明している。私自身、思慮深い放射線科医のつもりだが、自分の感覚では何も動いていないからといって、地球が時速 87,000 マイルで動いていることに異議を唱えたりするだろうか。

    それはない、というのが答えである。

    同様に、放射線研究というひとつの研究分野があり、そのトピックとそのトピックを専門に扱う学術誌には、思慮深い研究者らが書いた記事が掲載されており、X線照射に起因する危険が概説されている。[15,16] 自分の直接体験以外の研究に基づく研究結果に異論を唱えようというのか。

    それはない、と答えるのが賢明である。

    とはいえもちろん、放射線科学研究文献に目を通せば、一部の研究には BEIR VII 報告よりもさらに憂うべきものがある[15-17] 。また、そのような文献には細心の注意を払う必要があり、その研究者らの研究結果を却下してはならないというのが私の信念である。ただし、大々的な方針転換というものは、その研究分野で経験豊富な研究者の大多数が合意して初めて、実行されるべきものであろう。それはつまり、BEIR VII に書かれていることであり、その所見は、放射線と安全性に関する合意に基づくこれまでの大規模な報告のいずれとも一致するものである[18, 19]。私に真の専門知識がなければ、この専門分野での一流の研究者による報告に反論しようとするだろうか。

    それはない、というのが答えである。

    BEIR VII をはじめとする報告の多くが、医療用X線の影響を原子爆弾の被曝により受けた放射線と比較することの正当化にその内容の大部分を費やしている[1,18,19]

    ここではごく簡単に短くまとめておく。多くの放射線リスク推定の基礎となっている原爆被爆者は、実際の爆発からはかなり離れた距離、比較的純粋なガンマ線を受ける距離にいた人々である。大きな金属片が体を貫通したり、アルファ粒子のような高線量の放射線粒子に打たれた人々ではない。ガンマ放射線に単回被ばくした人たちであるが、人数が多いため、有意で信頼性の高い統計を得ることができる。

    BEIR VII 報告は、このような人々のうち特に100 mSv未満の低線量群、つまりCTスキャンによる医療用X線被ばく範囲の患者に関する最新のサバイバーデータに注目している[1]BEIR VII の研究者らによれば、そのグループでは発がんリスクが高いことが明らかであり、それ以外の報告と同様に(安全性の)閾値に下限はないことを強調している[1,18,19]。ガンマ線とX線のがん誘発力はほぼ同等であるというのが一般に放射線物理学者および放射線生物学者の考えであるし、私は(地球が1時間あたり87,000 マイルで走っていることを思い出せば)それに反論できるような科学的な訓練を受けていないし経験もない。

    もう一つ指摘しておかなければならないのは、金銭的な利益、奨励金または利害相反が認められているとき、個人が提供する情報には常に懐疑的になる必要があるということである。私はそのような研究者らに対する疑惑を聞いたことがある。医療用X線に対して警告する報告を出すことによって、いかに財政的利害が生まれるのか全く想像できない。そのような主張をすれば、多大な財政的阻害要因になるだろう。

    本件に関して意思決定の金銭面にはあまり深く触れたくない。経済的なことが、医療用X線の思慮分別ある利用を受け入れるのに大きな足かせとならないことを願っている。CTスキャンが放射線科医だけでなく、病院、医療機器メーカーおよび製薬会社など医療システムに莫大な額の金を生むことは明白にしておく必要がある。

    CTスキャンの数を減らせば、このような組織団体を財政的に危険にさらすことになるという懸念は、適切なMRIの施行が同時に増えれば、CTスキャン件数のどのような低下も相殺されることを認識することによって和らぐはずである。

    最終的に、患者の安全と臨床的に正しいことをすることが、全てにおいて優先される必要がある。

    BEIR VIIという決定的な報告書が発表された。BEIR VII には、医療用X線がCTスキャン1回の線量でさえも、がんを引き起こしうるとある。放射線科医としての見方から、今回は、CTスキャン範囲内の放射線量によって発がんすることを証明する十分な情報があると考えている。画像診断用の放射線とがんとの関連性を裏付ける十分なデータがないとして、われわれ放射線科医を正当化し、医療機関に発注することはもはやできない。証明の負担を負うのは患者ではなく私たちであると考える。放射線専門研究者らの学会では、放射線の安全性についての論争はなく、その不確実性を議論するばかりである。

    患者を保護するためにしなければならないことが4つあり、この基準は、Medscapeで私がこのトピックに関する以前の記事の繰り返しである。

    1. CTを慎重に使用すること。

    2. CTスキャンによる放射線被ばくを低減すること。

    3. さまざまな臨床的症状において、診断的にCTより優れているか同等である他の画像診断法があれば代わりに使用すること。患者の安全のためには、代替の画像診断法が診断的にCT検査より若干劣る程度であれば、その方法を考慮するべきであるとも議論できる。

    4. X線を用いる画像診断検査による放射線被ばく具体的な情報を患者に提供すること。この情報を、当初は患者用情報開示様式に組み込むことが可能であり、最終的にはインフォームドコンセント様式にすることができるであろう。

    CT検査の慎重な利用に関しては、画像診断の過剰な検査数を減らすことにつなげるのは残念ながら難しいであろう。しかし、その努力を惜しんではならない。

    このジレンマの主な対立要素が、画像診断検査が現代‘身体検査’になったことと、きわめて訴訟の多い社会にあって、いかに可能性が低かろうと何一つ見逃すわけにはいかないと臨床医が感じていることである[20]。前者に対する私の回答としては、画像診断が‘身体検査’となってしまったとしても、特に若年患者では、多くの適応症にCTではなくMRIを使用することができる [17, 21-24] CTによって判断できる診断の大半は、MRIでも同等以上に正確に判断することが可能なのである。腹部、骨盤部、胸部(放射線によるリスクが最も懸念される体の部位)のMRIによって特徴が明らかになる疾患は広範囲にわたり、これを十分に理解するには、最近出版された教科書『腹部・骨盤部MRI2版(Abdominal Pelvic MRI, Second Edition)』を参照されたい[25]。同書を編集したのは私である。

    後者の訴訟に関して私が個人的に最も懸念しているのは、リスクを知らされていなかった患者を原告とするCTによる放射線の過剰使用および有害使用に関する将来の集団訴訟である。

    放射線量を減らす

    これは、主な医療機器メーカー全社や多くの熱心な研究者と放射線科医による進行中の作業の功績であることは間違いない。特に小児専門の放射線科医は、わずか数年前に小児患者がCTスキャンから受けていた放射線照射量を大幅に低減できるように、装置やプロトコルをまとめて変更した。これは本質的に、「無理なく到達可能な限り低く」という放射線の原則(ALARAの原則)を体現したものである。CTスキャンによる放射線被ばくをさらに低減するために、大量の仕事が現在も続いている。

    代替の画像診断機器を使う

    私の回答はごく簡単ではあるが、そのためにやることは多い。それは、『腹部・骨盤部MRI2版(Abdominal Pelvic MRI, Second Edition)』を読むこと [25]。同書は、腹部および骨盤部の疾患ほぼ全部を網羅する膨大な例をあげながら、検査方法(決められたプロトコルを用意することが不可欠であることなど)と検査の解釈を説明している。さらに、最初の章で胸部MRIを取り上げており、MRIによって診断のための精確で再現性の高い情報が得られると考えられる。CTスキャンで検知された腎病変などの異常を追跡するような場合は特に、超音波検査がもっと実施されるべきである。

    リスクについて患者に伝える

    患者の情報に関して、BEIR VII 報告書の重要な点を患者にも伝えておく必要がある。また、低線量放射線被ばく(実質的にCT1回以下の放射線検査)のデータは、直接のX線被ばく検査から得たものではなく、原爆被爆者の放射線被ばくデータを基準に推定したものであるため、いくらか不確実であることを一言添えておくのも妥当であろう。とはいえ、そのようなデータに大差はないと考えられる。胸部、腹部および骨盤部の一領域にCTを1回受けることによって発がんする確率が1000分の1であることは伝えるべきであると私は考える。

    最後に、さまざまな集団に対する具体的な推奨事項を記しておく。

    患者

    医療用X線検査、特に高線量のX線を用いる検査(CTPET PET-CTなど)による放射線被ばくによって発がんする可能性があることを知るのは患者の権利だと考えている。また、別の検査方法によって同等の診断情報が得られるのであれば、別の方法を要望することは患者の権利である。医療提供者であれば、別の方法としてどの画像診断法であれば患者の疾患に関する情報を同等に得られるのかがわかるはずである。

    医師が必ず行なう「ヒポクラテスの誓い(医業に入る者の倫理綱領の誓約)」に基づいて、患者は自分の疾患を十分に正しく診断できる最も安全な検査を受ける権利がある。MRI検査の実施能力に疑問を感じるようであれば、放射線による障害に関してはBEIR VII 報告[1]を、MRI検査の方法と解釈に関しては、『腹部・骨盤部MRI2版(Abdominal Pelvic MRI, Second Edition)』[25]を医療機関に紹介することをお勧めする。MRIをほぼ必ず使用すべきである検査部位のひとつが、肝臓の検査である。

    紹介元の医師に放射線被ばくによる障害に関する教育をして、患者に特定の健康リスクをもたらす可能性のある検査の依頼をやめさせる必要がある[13,17,24]。そのような検査には、腎腫瘤のプロトコルによる多相撮影、肝臓の多相撮影 [24]、肺塞栓症の確率が低い若年女性に対する肺塞栓症検査[17]などのCT検査が含まれる。一般に、小児患者[20]および40 歳までの成人患者には、CTをきわめて慎重に使用する必要がある。成人では、生殖腺と胎児、乳房組織のそれぞれに危険があるため、女性に対する骨盤と胸部のCT検査は最小限にとどめる必要がある[17]。一般に発がんまでに長い潜伏期間があるため、高齢患者に対するCTスキャンは患者に与える損害の可能性は同じではない。患者の利益という点から、高齢患者を対象とする場合、CTスキャンは若年患者ほど懸念するものではない。CT検査にあまり協力的ではない患者の方が、一般に画像の品質が安定しているという事実がある。これは、MRI検査ほど静止状態である必要がないためであり、65歳以上の患者に対するCTには消極的にならないことをお勧めする。

    『腹部・骨盤部MRI2版(Abdominal Pelvic MRI, Second Edition)』[25]にあるように、MRI検査は一定の手順に従って実施する必要があり、造影剤としてガドリニウムを注入する動的観察は患者の大多数に使用する必要がある。それによって教科書にあるような画像が得られ、協力的な患者では一様に均一で高品質の画像が得られるはずである。MRIに関しては十分な研修が必須である。診断の精度と患者の安全のいずれにも、どちらかに偏ることなく、作業の全過程で注力しなければならない。

    X線ベースの診断方法に関する放射線の危険性を患者に伝え、放射線の具体的なリスクとこれに替わる画像診断方法があることを説明する患者用インフォームド・コンセントの作成を考える必要がある。また、X線を使った検査の回数と種類を追跡できる方法を考える必要がある。すると限度も決まるかも知れない。

    あらゆる医療従事者が、胸部、腹部または骨盤部のCT検査の1000件に1件が発がんにつながる可能性があるという考えに精通していることをお勧めする。

    CTスキャンが十分に検討されたうえで依頼され、特にMRI検査に専門知識のあるセンターではMRIの依頼が増えることは間違いない。明るい話としては、きわめて質の高い全身MRI検査を実施しているセンターが多いことである。MRI検査が否定されてCT検査を勧められたとき、保険会社の費用負担を求めるとよい。保険会社も BEIR VII(実施要領で十分である)を認識している必要がある[1]。費用負担者である保険会社はまた、腹部および骨盤部の疾患の発見にはMRIの方がCTよりも優れていることを示す重要な論文があることも認識している必要がある[21-24]。患者を紹介する放射線検査施設では、最新のプロトコルに従って最先端の機器を使用している必要があり、MRIの専門知識を有する放射線科医がデータを解釈する必要がある。『腹部・骨盤部MRIAbdominal Pelvic MRI)』 [25]に概説されているように、検査は多少変更を加えて実施される必要があり、画像は同書に図示されているものとほぼ同じように見える必要がある。

    放射線を使ったさまざまな検査法の安全性に関する継続的な研究が必要である。マンモグラフィ、デジタルマンモグラフィ、PETPET/CTに関する研究が必要である。さまざまなタイプのCT検査装置に関して放射線の推定被ばく量も明らかにする必要がある。標準放射線線量はシングルスライスCTに基づいて評価されており、ヘリカルCTやマルチスライスCTの各種について線量を推定する必要がある。線量の概算には、複数回にわたるCTスキャンや、マルチパス検出法によるCTスキャン、特定の時間間隔が遺伝子損傷を誘発するなど特に有害であるかどうか、また、その他の時間間隔が複数回にわたるCTスキャンの有害な影響を軽減するかどうかの見極めなど、追加要因に関するリスクを検討する必要がある。

    放射線照射量を大幅に減らし、特定の検査に合わせて線量を減らすことによって仕事を一新するとよい。放射線検査機器には、一定の放射線被ばく量に達したことを知らせる警報装置が装備されている必要がある。あらゆる大型電気器具に消費電力を表示して販売することができるなら、CTをはじめとするあらゆる高線量放射線検査機器(PETPET/CT)に標準的な検査1回ごとの放射線被ばく量(たとえば、腹部CT1回2mRadなど)を表示して販売するべきである。放射線検査機器の製造会社には安全性部門も設けられている必要がある。安全性部門の仕事は、ALARAを最大限にするために、他の検査方法を使用することを含めて放射線被ばく量を管理する方法について使用者と消費者に情報を伝えることである。

    患者の安全性を扱う事務局には、患者の安全性と情報を扱う包括的な事務局としての機能も備えている必要がある。放射線は、患者の健康に関してHIPAA(医療保険の携行性と責任に関する米国の法律)よりもはるかに重要な懸念となる可能性が高く、これらを一つにまとめる必要がある。資格取得または資格更新の手続きの一部として、病院のスタッフはBEIR VII 報告書の情報に基づいた放射線の安全性に関する短いコースを取る必要がある。小児患者に対するCTスキャン、特に複数回のCTスキャンは強く阻止されるべきであり[20]、若年女性に対する胸部CTスキャンも同様である[17]

    胸部、腹部または骨盤部のCTスキャン1回実施すると、10001の確率で発がんすることを示す最も重要な研究報告が発行された[1]CTの方が比較的安価であるという認識やある研究プロトコルではCTが必要とされているという理由で、患者に対するMRIなどの検査方法を否定するべきではない。MRIは、診断的にCTよりも同等かそれ以上正確であることが多く[20-24]、胸部の疾患を追跡するというような状況では、MRIは以前にCTで見つかった胸部腫瘍を追跡するのに十分正確な検査法である[25]CTの方が50ドルや100ドルほど安価であるという理由でMRIを使用しないことは、道徳的に許されない。放射線検査施設が、最新のMRI検査の実施と、熟練の放射線科医による画像の解釈が可能であると主張するのは妥当である。

    患者に照射されるべき放射線線量に関する規制を設けるべきである。新たに販売される装置には、消費者(病院、放射線科医、おそらく患者でさえも)が販売会社と検査機器に関して放射線被ばく量を比較できるように、標準検査ごとに照射線量の説明をつける必要がある。大型家電製品に製品ラベルを貼付し、朝食シリアルの箱ラベルにチアミン含有量を記載できるのなら、そのようなもののなかでも最も致死的であることは間違いないX線について、製品ラベルをCTスキャナーにつけることができるはずである。既存の装置についても照射速度を明らかにする必要がある。これは、そのような計算には標準化したファントム(模型)を使用することになる可能性が高い。患者の生涯にわたる放射線被ばく線量を追跡する方法も考える必要がある。それは放射線業務従事者について行われているものに類似するものとなるであろう。

    医療全体で唯一最大の医学的問題は、X線による害であろう。症例対象研究として、CT検査を複数回受けた患者を対象にした長期的な調査を大規模な多施設共同研究という形で実施するために、すでに放射線リスクの研究を進めている研究者らに対し、詳細な申請手続き抜きで特定の助成金を与える必要がある[2, 14-16]

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    <*監修者コメント>
    情報過多の時代にあって、この文書も批判的に読んで頂ければと思います。4つの医療者がすべきことには賛同します。(下)
    1. CTを慎重に使用すること。
    2. CTスキャンによる放射線被ばくを低減すること。
    3. さまざまな臨床的徴候について、診断の手段としてCTより優れているか同等である他の画像診断法を代わりに使用すること。患者の安全のためには、代替の画像診断法が診断的にCT検査より若干劣る程度であれば、その方法を考慮するべきであるとも議論できる。
    4. X線を用いる画像診断検査による放射線被ばくの具体的な情報を患者に提供すること。この情報を、当初は患者用情報開示様式に組み込むことが可能であり、最終的にはインフォームド・コンセント様式にすることができるであろう。

    しかし、MRICTに代わるものではなく、それぞれに適応があります。急性腹症や癌の診断にCTは不可欠であり、胸部の診断・追跡においては圧倒的にCTが優位です。この記事だけを読んで鵜呑みにするのではなく、きちんと一般的なことを勉強してみてください。医療者もリスクとベネフィットは常に考えています。放射線治療分野での議論については、2007124日の記事:1放射線治療は二次癌の発生に影響するか 2癌生存者に発生する新たな癌 なども参照してください。

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    佐治京子 訳
    河村光栄(放射線腫瘍学・画像応用治療学/京都大学大学院医学研究科) 監修
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    原文

     

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