高用量テストステロン補充療法が一部の進行性前立腺癌を改善/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

高用量テストステロン補充療法が一部の進行性前立腺癌を改善/ジョンズホプキンス大学

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高用量テストステロン補充療法が一部の進行性前立腺癌を改善/ジョンズホプキンス大学

2015年1月7日

驚くほど逆説的な話ではあるが、一般的に前立腺癌の増殖に関与するとされる男性ホルモンのテストステロンが、一部の進行性前立腺癌を抑制し、さらに前立腺癌治療に用いられる抗テストステロン薬への抵抗性も覆した可能性があることがわかった。

ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らが1月7日発行のScience Translational Medicineでこの新たな知見を報告した。

16人の転移性前立腺癌患者で小規模試験を実施した腫瘍内科医Samuel Denmeade医師は以下のように釘を刺した。本試験で行ったテストステロン療法はタイミングが重要で、時期を決定するのが難しい。そのため、市販のテストステロンサプリメントで前立腺癌を自分で治療しようとしてはいけない、と述べた。

さらにこれまでの論文によれば、テストステロン遮断療法をまだ受けておらず、活発な癌の進行徴候がある患者では特に、テストステロン投与のタイミングを誤ると前立腺癌が悪化することが示されている、と付け加えた。

癌転移を有する患者に対し、医師は通常、テストステロンの産生を抑制する薬を投与するが、最終的に癌細胞は薬剤でホルモン量を低下させるこのような手法 に抵抗するようになると、ジョンズホプキンス大学医学部腫瘍科教授のDenmeade医師は述べた。この時点で医師は、例えばエンザルタミドのような、前立腺癌細胞内の受容体へのテストステロンの結合を阻害する別の薬剤に切り替える。

Denmeade医師によると、テストステロンの産生と受容体を阻害する薬を組み合わせて行うアンドロゲン除去療法と呼ばれる治療では、前立腺癌細胞がテストステロン受容体の遮断を覆すことができるようになり、次第に前立腺癌を一層悪性度の高いものにする可能性がある。そして、勃起不全、体重の増加、筋力の低下、強い倦怠感などの副作用を、この治療を受けている多くの患者が経験する。

フレッド・ハッチンソンがん研究センター所属の研究者でジョンホプキンス大学の研究員時代に本試験に貢献したMichael Schweizer医師は以下のように述べた。

「これ(去勢抵抗性前立腺癌)は、前立腺癌の中で最も死亡率が高いものです。治療への抵抗性が最も高いのもまさにこれです。通常患者がこのステージに達すると、われわれ医師は、患者が前立腺癌で死亡するリスクが非常に高くなったことを憂慮し始めます」。

このような状況で本試験では、癌細胞を大量のテストステロンに曝露すると、癌細胞がホルモンショックで死滅するのではないかという考えにのっとり、この手法を検証した。また癌細胞は受容体の数を減少させることによって反応し、それによって前立腺癌細胞がアンドロゲン除去療法に対して再び脆弱になる可能性がある。

本試験でDenmeade医師らは、ジョンホプキンス大学で転移性前立腺癌に対しテストステロンを低下させる治療を受けている患者16人を登録した。患者は全員、少なくとも最低1種類のアンドロゲン除去療法での治療歴があり、血中に含まれる前立腺癌の腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)値の上昇と、画像検査で癌に抵抗性が有るとの所見が認められていた。

患者は、28日ごとに行うテストステロンの筋肉内注射と、2週間の化学療法剤エトポシド(etoposide)の投与を3サイクル受けた。3サイクル行った時点でPSA値が低下した患者は、テストステロンの筋肉内注射を単独で継続した。

16人中2人が試験を完遂しなかった。1人はエトポシドによる肺炎と敗血症で死亡し、もう1人はテストステロンの副作用である持続勃起症を発症したためであった。

残りの14人中7名は30 ~99%の間でPSA値の低下があり、病状の安定もしくは重症度の低下を示した。残りの7人ではPSA値の減少はなかった。

さらに、7人中4人が低いPSA値を保ったままテストステロン補充療法を12~24カ月継続した。画像検査で転移した癌腫瘍を計測できた10人の患者のうち5人は腫瘍が半分以上縮小し、そのうち1人は完全に消失した。

「驚くべきことに、テストステロン補充療法後に抗テストステロン薬を投与した10人の患者全員でPSA値が低下したのです。その10人中4人は本試験中にPSA値の変化が見られなかった患者なのです」とDenmeade医師は話す。この結果は、エンザルタミドなど抗テストステロン薬によって最終的に生じる抵抗性を、テストステロン補充療法が除去する可能性を示唆している、とも医師は述べる。

2010年の試験開始後、3人の試験参加者が死亡したが、ほかは現在も生存している。

エトポシドでの治療中、吐き気、倦怠感、脱毛、浮腫、血球の減少など化学療法で発生する通常の副作用を患者の多くが経験した。一方、テストステロン補充療法のみでの治療では、副作用の発生はまれであり、グレードも低かった。

Denmeade医師によれば、さらなる試験がジョンホプキンス大学やほかの病院で計画されているという。

「アンドロゲン除去療法に対する抵抗性を取り除くという発想に興味は高まってきています。われわれには、今回の小規模試験についてさまざまな未発表の話やエビデンスがありますが、さらに大勢の患者を対象とした試験を行うことが重要です」。

本試験はオハイオ州アクロンのthe One-in-Six Foundationによる研究助成を受けた。

本試験に貢献した ジョンホプキンス大学の研究者は以下のとおりである。

Michael Schweizer (現在はフレッド・ハッチンソンがん研究センターおよび ワシントン大学所属)、 Emmanuel Antonarakis、 Hao Wang、 Atinuke Ajiboye、 Avery Spitz、 Harry Cao、 Jun Luo、 Michael Haffner、 Vasan Yegnasubramanian、 Michael Carducci、Mario Eisenbergery、John Isaacs。

関連文献:
Sci. Transl. Med. DOI: 0.1126/scitranslmed.3010563

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鶴田京子 訳
榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院) 監修
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原文

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