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免疫療法成否のしくみを解明する重要な発見/スローンケタリング記念がんセンター

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免疫療法成否のしくみを解明する重要な発見/スローンケタリング記念がんセンター

2014年11月19日

免疫療法薬剤であるイピリムマブ[ipilimumab]に対して反応を示す患者がいる一方で、反応しない患者がいる理由の解明につながる重要な発見が、スローンケタリング記念がんセンターの癌免疫学分野のリーダーによる共同チームによりなされた。スローンケタリングは、このCTLA-4遮断抗体をメラノーマ患者に投与する臨床研究の第一線にある。

New England Journal of Medicine誌の電子版に本日掲載された論文には、イピリムマブに応答する患者の癌細胞は、多数の遺伝子突然変異を伴うことが示されている。変異により免疫機構が腫瘍を認識しやすくなり、容易に攻撃できる場合があるという。
研究は、放射線腫瘍学部門の副部長で癌遺伝子学の研究者Timothy Chan医学博士、臨床腫瘍学専修医 Alexandra Snyder Charen医学博士、メラノーマ・免疫治療学部門長でLloyd J. Old Chair for Clinical Investigationに所属するJedd Wolchok医学博士が主導した。

「われわれは、どんながん治療もがんのゲノムに変化を起こさせることを学びつつあります」とChan医師は述べる。「患者の薬剤応答性を予測して治療指針を決定するという信頼性のある診断検査の開発が初めて実現するかもしれません」。

イピリムマブ(Yervoy)の臨床試験では、これまでの見解を覆す結果が多種の癌で報告されている。 イピリムマブは、CTLA-4と呼ばれるタンパク質を遮断することにより作用し、腫瘍に対して体本来が持つ免疫防御力を高める。通常、CTLA-4は、免疫機構に携わるT細胞が持つ抗腫瘍活性を抑制する。イピリムマブの存在下ではT細胞が活性化するため、癌細胞を認識して破壊するというT細胞本来の能力が増大する。

一部の患者では、イピリムマブによる腫瘍の縮小、および生存期間の有意な延長が認められている。 この十年、免疫療法は科学的な大変革をもたらすことが示唆されてきた。「われわれは、いかにして腫瘍を標的にするかという研究に多くの時間を費やし、尽力してきました。そしてごく最近、腫瘍治療のために患者の免疫防御力を動員させる方法を解明しました。免疫療法とは定義上、免疫防御力を動員させる治療法です」とWolchok医師は述べる。

しかし、この治療法によりすべての患者が改善を示すわけではない。実際、メラノーマ患者の約80%はイピリムマブの効果をほとんど得られないか全く得られていない。また、医師もこれまで、どの患者がイピリムマブに応答する可能性が高いかを予測する手段を持っていなかった。

今回行われた新たな研究により、チームは解決策の発見へ1歩近づいた。「突然変異数の増加、すなわち腫瘍での頻回のDNA変化と、イピリムマブ治療がもたらす転移性疾患の長期安定や消失という効果の間に相関関係が認められました」とSnyder Charen医師は明らかにした。

チームは、イピリムマブあるいは同様の機序で作用する試験薬剤tremelimumabによる治療経験のあるメラノーマ患者64人から腫瘍サンプルを採取した。腫瘍の解析には、蛋白質をコードするゲノム全部分のDNA変化を解析する方法である全エクソーム解析を用いた。患者から採取し解析された腫瘍のうちおよそ半分は治療が奏効、残り半分は治療の効果がほとんど得られなかったか全く得られなかった腫瘍であった。

「われわれは、薬剤に応答した腫瘍のほうが突然変異の発生率が高い、すなわちDNA変化の総数が多かったことを認めました」とSnyder Charen医師は述べる。「しかし、薬剤応答性と突然変異の相関関係は絶対的なものではありません。腫瘍での突然変異の発生率が高かった患者全員が薬剤に応答していたわけではありませんでした。こうした結果から、『免疫機構は何を認識しているのか?』という疑問が生まれました」とWolchok医師は述べる。「免疫機構による認識や攻撃を助ける、腫瘍における突然変異の全体像とは一体どのようなものなのでしょうか?」

研究者らは、高性能の計算ツールを用い、自らが得たデータを免疫学のレンズを通して解析する能力を持っていた。研究者らによると、薬剤応答性腫瘍は、癌細胞に新たな抗原(体内への侵入者としてT細胞が検出・認識する物質)を発現させるという特定の突然変異に関与するという。
こうした重要な発見が共同チームによりもたらされたが、チームには患者も含まれている。
「自らの腫瘍組織の採取と解析に同意した患者の善意なしではこうした進歩は遂げられなかったでしょう」とSnyder Charen医師は結論する。「Wolchok医師と研究員は、サンプルの蓄積に多くの年数を費やしています。そうした行為は研究にとって価値の測れない財産です」

最終的に、今回の研究で得られた所見は、メラノーマ患者にみられる薬剤がもたらす突然変異を検出する診断テストに変換できる可能性がある。診断テストの結果を用いれば、医師や患者はより情報に基づく治療の選択が可能になるかもしれない。MSKチームは、特定の腫瘍にみられる突然変異が他の免疫療法薬剤の有効性に影響を及ぼすかについても調査を行う予定である。Chan医師は、「もし患者がイピリムマブに応答しないことをわれわれが知っていれば、その患者の腫瘍に有効である可能性が高い他の薬剤を見いだすことができるかもしれません」と述べている。

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重森玲子 訳
田中謙太郎(呼吸器・腫瘍内科、免疫/テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)監修
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原文

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