早期乳癌治療後の白血病リスクは過去の報告より高いとする新たなデータ/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

早期乳癌治療後の白血病リスクは過去の報告より高いとする新たなデータ/ジョンズホプキンス大学

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早期乳癌治療後の白血病リスクは過去の報告より高いとする新たなデータ/ジョンズホプキンス大学

概要
早期乳癌に対する放射線治療または化学療法の実施後に白血病となるリスクは低いものの、これまでに報告されていた数字の2倍高いという。 特に乳癌再発リスクが低い患者の場合、「念のため」という理由で化学療法を実施するかどうかは慎重に考慮すべき。

早期乳癌に対する放射線治療または化学療法の実施後に白血病となるリスクは非常に低いものの、これまでに報告されていた数値の2倍であることが、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究で明らかになった。

研究チームは、1998~2007年に米国の8カ所のがんセンターで治療した乳癌患者20,063人のデータを用いた。このデータは全米総合がんセンターネットワークのデータベースに保存されているもので、再発率および二次癌発生率も記録されている。このうち、外科手術のみ、放射線治療、化学療法、これらのうち2つの併用の後になんらかの白血病となった患者は50人であった。

白血病の10年間累積リスクを測定するため、研究チームは各患者が乳癌と診断された時点から、他の癌と診断されるまで、あるいは白血病と診断されるか死亡するまで、追跡可能な限りの医療記録を利用した。また、患者が白血病と診断される可能性を調べるため、死亡または治癒に影響する要因として人種、医療機関にかかる統計解析を行った。これらのデータから、今回、研究チームは10年間の白血病累積リスクを0.5%と推定した。

従来のランダム化臨床試験は数百人規模で行われているものが多く、そのデータでは化学療法の長期的影響として白血病となる乳癌患者は0.25%と報告されています、とジョンズホプキンス大学医学部腫瘍学名誉教授のJudith Karp医師は述べている。同氏はキンメルがんセンターの白血病部長を2013年に退いている。

「白血病など骨髄癌の頻度は低いです。その点は疑いがありません」とKarp氏は話す。「しかし、10年間の累積リスクはこれまで考えられてきたものの2倍であり、しかもそのリスクは治療後5年間緩やかにならないとみられることがわかりました」。

この後ろ向き研究の結果はThe Journal of Clinical Oncology誌電子版に12月22日掲載された。

「ほとんどの腫瘍医は、白血病リスクは治療後短期間のリスクであって、短期間でなくなると考えるようになっています」、とKarp氏。「ですので、白血病リスクは落ち着くのではなく高まるのだ、というちょっとした注意喚起のような結果でした」。

ジョンズホプキンス大学医学部の腫瘍学教授、Antonio Wolff氏は、本研究は、早期乳癌患者、特に再発の可能性が低い患者の場合に患者および主治医が「念のため」という理由で化学療法を実施するかどうか、慎重に検討する材料となる、と話している。

「われわれの研究は、乳癌の再発リスクがきわめて低い患者に対する予防的化学療法や補助化学療法のマイナス面について、医師および患者が検討するための有用な情報となります」とWolff氏は述べている。「一部の患者にとっては、現実的な利益がほとんどない治療により、小さくとも重篤な副作用のリスクにさらすことは、何の足しにもならないでしょう」。

近年は、乳癌患者の外科手術後における化学療法は一部の限られた患者にしかほとんど利益をもたらさないことが、腫瘍医に理解されている。全米総合がんネットワークの臨床ガイドラインにおいても、すでにステージ1の乳癌患者はすべて非推奨となっている。ステージ1とは、浸潤性乳癌の大きさが2cm以内で近隣のリンパ節に転移していない状態をいう。

各患者における早期乳癌治療の計画は、腫瘍サイズ、リンパ節への転移の有無、エストロゲン受容体(ER)やヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER2)など乳癌関連の特定のホルモンや成長因子受容体が陽性かどうかなどの要因で異なります、とWolff氏は言う。

ジョンズホプキンス大学の研究者らが主導する本研究チームは、早期乳癌と化学療法のリスクについて広い視野から評価するため、症例を仮定しての検討も併せて行った。平均的な健康状態の60歳女性が、急速に増殖するER陽性の乳癌のステージ1と診断されたと仮定した場合、10年以内に乳癌で死亡するリスクは12.3%と計算される。4サイクルの化学療法を実施すると10年後生存率が1.8%改善する一方、同期間での白血病リスクも0.5%上昇する。

「幸い、ステージ1の患者の大多数は乳癌という診断を乗り越えて生き残ることができます」とWolff氏は付け加える。「固形腫瘍のなかでも、乳癌はもっとも治癒の可能性が高い癌のひとつです」。

他の固形腫瘍で外科手術後の化学療法により白血病リスクが増加するかについては、特に治療レジメンが乳癌と異なることから、いまだ明らかではない、とWolff氏は述べている。

本研究に参加した他の研究者は次のとおり。

ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターのAmanda L. Blackford氏、 Kala Visvanathan氏、Terry S. Langbaum氏、カリフォルニア大学サンフランシスコ総合がんセンターのHope S. Rugo氏、マサチューセッツ総合病院がんセンターのBevery Moy氏、ダナファーバーがん研究所のMelissa E. Hughes氏、Jane C. Weeks氏、フォックスチェイスがんセンターのLori J. Goldstein氏、ワシントン大学医学部のKeith Stokerl-Goldstein氏、ユタ大学医学部のLeigh Neumayer氏、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのRichard L. Theriault氏。

本研究は米国国立衛生研究所(NIH)内の米国国立癌研究所(NCI)から資金提供を受けている(CA89393およびCA006973)。併せて、Susan G. Komen for the Cureからも資金提供を受けている(SAC110053)。

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橋本 仁 訳
原 文堅 (乳腺科/四国がんセンター) 監修
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原文

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