放射線療法や化学療法による前処置を行わない幹細胞移植が有望/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

放射線療法や化学療法による前処置を行わない幹細胞移植が有望/ダナファーバー癌研究所

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放射線療法や化学療法による前処置を行わない幹細胞移植が有望/ダナファーバー癌研究所

2014年12月7日
ダナファーバー癌研究所

まれな骨髄不全症候群である先天性角化不全症(DC)において、免疫抑制剤単独による前処置を行った移植が成功したという試験結果が報告された。

ダナファーバー/ボストン小児がん・血液疾患センターの研究者らは、希少な病型の骨髄不全疾患患者を対象に、免疫抑制剤のみによる前処置後に造血幹細胞移植(HSCT)を行った臨床試験で有望な結果が得られたことを報告した。今回の試験は、先天性角化不全症患者において、前処置として放射線療法や従来の細胞毒性化学療法を行わない移植の成功を報告した初めての試験である。

この試験成績は、ダナファーバー/ボストン小児がん・血液疾患センターのLeslie Lehmann医師とSuneet Agarwal医学博士が第56回米国血液学会(ASH)年次総会で報告した(抄録番号2941)。この成績により、従来の前処置や強度軽減前処置であっても、その毒性に耐えられず移植後転帰が不良となるリスクが高いDC患者や、おそらくはその他の骨髄不全症候群患者に対しても、この免疫抑制剤単独アプローチが有益となる可能性が示唆された。

試験対象患者4人の全員が移植後10~27カ月後の現在も生存し、健康状態は良好である。移植後も血球数を維持するために輸血依存が続いた患者や、移植中や移植後に予期せぬ毒性や感染症を発現した患者はいなかった。この新しい移植レジメンがなければ、患者1人は、重度のDC関連肺疾患があるため、移植に不適格とされていたであろう。

従来の移植前処置は、放射線または高容量の(アルキル化剤として知られる)細胞毒性剤、あるいはその両方を用いて、骨髄や血球、免疫細胞を破壊する。この治療は、広範囲にわたる全身の細胞傷害をも引き起こす。このプロセスは、患者の体を提供幹細胞の受け入れに向けて準備させるものであり、拒絶のリスクを低減させて、新しい細胞の移植が成功し、新たな血液や免疫細胞を産生するのに適した環境をつくる。

しかし、DCや他の骨髄不全症候群では、すでに疾患自体が患者の骨髄を弱らせ、破壊しており、より毒性を軽減したアプローチが移植前処置として十分ではないかいう疑問を提起している。

「これらの成績から、DCに対しては、免疫抑制剤単独の前処置を行なった場合は生着が達成可能であるということが示されました。今回の経験は、このアプローチを他の疾患へ適用できる可能性をより広く考えてもよいのかという疑問を投げかけており、これは検討に値すると考えます」とAgarwal氏は言った。

また、「骨髄不全症候群は、血液と免疫細胞産生に関する疾患です。したがって、こうした疾患の一部では、患者を放射線やアルキル化の毒性作用に曝露しなくても、健康な提供幹細胞が患者にもともとあった細胞を駆逐するはずです」と付け加えた。

DC患者の80%が30歳までに骨髄不全症候群を発症する。この疾患の原因である遺伝子の欠陥は、細胞のテロメア維持を阻害する。テロメアは、染色体の末端にある保護カバーで、細胞分裂や加齢とともに次第に短くなる。結果として、DC患者の造血幹細胞は老化が早く、細胞分裂が十分に行われない。造血幹細胞移植によって、骨髄不全症候群の治療は可能だが、多くの場合、転帰は不良である。その原因はおそらく従来の前処置に伴う毒性である。

DCにみられた細胞の欠陥は、Agarwal氏と共同研究者らが免疫抑制剤単独の移植前処置を試みる機会をもたらした。彼らの理論は、患者の免疫システムを抑制することにより、最小限の拒絶リスクで、提供幹細胞とその分化した細胞が患者の元々の細胞を駆逐する機会を与えるというものであった。同時に、全身にわたる広範囲の細胞傷害をひきおこす放射線やアルキル化剤を使用しなければ、臓器不全や癌などの長期的な造血幹細胞移植関連の合併症リスクは低減するはずである。

ボストン小児病院トランスレーショナル・リサーチ・プログラムから研究助成を受けた。

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前田愛美 訳
吉原 哲 (血液内科/造血幹細胞移植) 監修
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原文

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