新たに解明されたチアゾリジンジオン系糖尿病薬の作用/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

新たに解明されたチアゾリジンジオン系糖尿病薬の作用/ダナファーバー癌研究所

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新たに解明されたチアゾリジンジオン系糖尿病薬の作用/ダナファーバー癌研究所

2014年11月17日
ダナファーバー癌研究所

ダナファーバー癌研究所およびブリガム&ウィメンズ病院の研究チームが、癌に重要な役割を果たすことが知られるシグナル経路が2型糖尿病の発症における役割を明らかにする驚きべき知見を発表した。これらの結果は2014年11月17日に、Nature誌の電子版に掲載され、チアゾリジンジオン系(TZDs)として知られる長年使用されている糖尿病薬の一種が糖代謝を改善する際にどのように機能しているかを明らかにし、MEK/ERK経路として知られるシグナル経路の阻害剤が2型糖尿病の治療薬となる可能性をも秘めていることを示した。

「チアゾリジンジオン系は2型糖尿病の治療に極めて有効であることが認識されているが、重要なリスクも有している。問題は、本薬剤をわずかに変換するまたは異なる方向からシグナル経路にアプローチすることにより、これらの副作用を最小限に抑えることができるかどうかである」とブリガム&ウィメンズ病院のDivision of Endocrinology, Diabetes and Hypertensionの研究者であり、主著者のAlexander S. Banks博士は述べた。

本仮説を基に、ダナファーバー、Department of Cancer Biology の研究者であるBanks博士とBruce Spiegelman博士はCDK5として知られる重要な分子プレーヤーに注目した。キナーゼとして知られる酵素の一種であるCDK5はTZDsが標的とする分子(PPARγ)の重要な部位を修飾する。CDK5の役割をさらに理解するために、Banks博士達は脂肪組織においてCDK5を欠損する系統のマウスを作製した。この脂肪組織ではPPARγが最も高度に活性化し、TZDsが作用すると考えられる。

本実験においてCDK5に対する当初の疑念は確認できず、その代わりに他の重要なキナーゼが関与することが示唆されたため、これらの結果は彼らを大きく異なる方向へと向かわせることになった。ハーバード大学医学部の研究者と協力し、Banks博士とSpiegelman博士達はその正体を突き止めるべく、バイアスを排除した広範な研究を実施した。その結果、最終的にERKとして知られるキナーゼであることが明らかになった。

ERKの機能に関する詳細な生化学試験の後、研究チームはERKの糖代謝における役割の調査を実施し、ERKの機能を阻害するMEK阻害剤が糖尿病モデルマウスにおいてインスリン抵抗性を有意に改善することを明らかにした。

「ERK機能を阻害する新種の薬剤は癌治療を主な目的として開発されてきた。これらの薬剤はMEK阻害剤として知られ、進行性メラノーマ患者の生存期間を延長させる。本論文の最も素晴らしい点の一つは、癌治療のために設計されたMEK阻害剤を低用量で使用することにより、より安全に糖尿病でみられるERKの異常な活性化を阻害できるという概念である」とBanks博士は述べた。

「新規の治療法を開発する試みはすべてリスクを伴うだろう。しかし、今回の発見は臨床研究を行う価値が必ずやある」とSpiegelman博士は述べた。

MEK阻害剤が2型糖尿病の有効かつ安全な治療になり得るかを判断するためにはさらに多くの研究が必要であるが、Nature誌掲載の研究により、TZDの作用の分子基盤に対する重要な知見が提示された。さらに、MEK/ERKの阻害は薬剤のもつ望ましくない効果を最小限に抑えた実現可能な治療方法をもたらす可能性があることが示唆された。

本研究は米国国立衛生研究所(助成金DK31405およびDK93638)、Harvard University Milton FundおよびHarvard Digestive Disease Center, Core Dから資金援助を受けた。

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下野龍太郎 訳
吉松由貴(呼吸器内科/淀川キリスト教病院)監修
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原文

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