免疫療法薬ニボルマブは、ホジキンリンパ腫患者に対して革命をもたらす/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

免疫療法薬ニボルマブは、ホジキンリンパ腫患者に対して革命をもたらす/ダナファーバー癌研究所

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免疫療法薬ニボルマブは、ホジキンリンパ腫患者に対して革命をもたらす/ダナファーバー癌研究所

2014126

再発または難治性ホジキンリンパ腫(HL)患者に対して、免疫系を再活性化することで腫瘍細胞を攻撃する治療薬を用いた臨床試験を施行した結果、患者の87%で完全寛解または部分寛解が得られた。この結果はダナファーバー癌研究所をはじめとする多施設共同研究の成果として、2014126日にNew England Journal of Medicine 誌上に発表され、同時に第56回米国血液学会(ASH)年次総会(サンフランシスコ)でも公表された

これは、免疫能を高めることで腫瘍細胞を殺傷する治療法の今後を考える上で科学的根拠(エビデンス)の金字塔となるものである。他のがん腫に対するこの免疫療法の臨床試験では、高い治療効果を示した患者群が一部に過ぎなかったのに対して、今回、ホジキンリンパ腫に対して行われたこの臨床試験は、患者の大半が治療の恩恵を受けることになったという意味で目を見張るものがある。

本臨床試験で免疫療法薬ニボルマブが有効性を示したことにより、米国食品医薬品局(FDA)はニボルマブを再発性HLに対する「画期的治療薬」として指定した。また、多国間での大規模多国籍第2相試験が現在進行中である

「これらの結果がとりわけ励みになるは、他の治療選択肢がなくなった患者での結果だったからです」と、本臨床試験の共同統括著者であるMargaret Shipp医師(ダナファーバー癌研究所 造血器腫瘍科部長)は述べた。「私たちはニボルマブに対する反応の持続期間の長さにも驚いています。反応が認められた患者の多くは、ニボルマブ投与後から1年以上よい状態を維持しています」。

本臨床試験に、再発または難治性HL(白血球の一種であるリンパ球のがん)患者23人が参加した。HLは、米国内の毎年新規症例数は10,000件以下と比較的少数だが、小児と若年成人で最も多く見られる血液がん1つである。HLは既存の治療法による治療が成功することが多いが、全患者のうち最高25%は最終的に再発する。

本臨床試験では、参加患者の約80%に造血幹細胞移植歴があった。33%以上に6種以上の全身治療歴があったが、治療効果は持続しなかった。

参加患者は、ニボルマブ(免疫系の一部であるT細胞の表面に存在するタンパク質であるPD-1を阻害する抗体)点滴静注を2週間隔で受けた。T細胞は生体防御における重要な細胞で、宿主由来ではない細胞や病的な細胞認識し、これらの細胞への攻撃を指揮する。しかし、PD-1PD-L1PD-L2と呼ばれる、一部の悪性腫瘍の細胞表面に存在するタンパク質に結合すると実質的にT 細胞の活性は抑制されてしまい、宿主の免疫系が腫瘍細胞へ攻撃することができなくなってしまう。ニボルマブはPD-1を阻害することで、宿主の免疫系による腫瘍細胞への攻撃を続行させるのである。

「ニボルマブは、腫瘍細胞自体を標的とするのではなく、免疫反応を標的とし、腫瘍細胞の近傍にあるT細胞を再活性化させる治療薬です」とShipp氏は述べた。

参加患者23人中20人でニボルマブ投与に対する評価可能な寛解が得られた。その中の4人で完全寛解(検出可能な腫瘍が残存しない)が達成され、かつ、16人で部分寛解(腫瘍が治療前の50%未満にまで縮小)が達成された。ニボルマブ投与完了後6カ月で、参加患者の86が治療効果を保ちつつ生存した。ほとんどの患者はニボルマブ投与後1年間よい状態を維持している

副作用は、固形腫瘍のある患者を対象とするニボルマブに関する臨床試験で生じたものと同様に報告されている。参加患者の約20%で重篤な治療関連有害事象が認められたが、いずれも生命に危険を及ぼすものではなかった

免疫療法への取り組みは、1980年代に開始されたダナファーバー癌研究所で伝統的に行われてきた研究であり、ニボルマブの登場によって節目を迎えたGordon Freeman博士(ダナファーバー癌研究所)と妻であるArlene Sharpe医学博士(ハーバード大学医学部)は、T細胞の表面に発現するPD-1、ならびに、腫瘍細胞の表面に発現する「リガンド」タンパク質 PD-L1PD-L2同定につながる初期の研究のいくつかを行なった。「これらの研究は、一部の腫瘍細胞の表面に存在するPD-L1PD-L2の発現量の増加により、腫瘍細胞が免疫系からの攻撃を逃れる可能性があることに関する私たちの理解のためにはとても重要なものだったのです」とShipp氏は述べた。

Freeman氏とSharpe氏の研究結果は、HLの遺伝的特徴に関するShipp氏ら自身の研究と一致した。「HLの腫瘍細胞にはPD-1/PD-L1経路内で 2つのリガンドであるPD-L1PD-L2の発現量を増加に関与する染色体の特定領域における増幅が頻繁に起こっていることを私たちは突き止めました」とShipp氏は述べた。「PD-1/PD-L1経路の阻害が特にHLに有効であることがこの特徴的な遺伝学的変化から示唆されました」。Shipp氏らは共著者であるScott Rodig医学博士、Azra Ligon博士、および、Bjoern Chapuy医学博士と共同して、患者由来の腫瘍細胞を解析したところ、全例においてこの染色体の異常があることを確認した。

Shipp氏らは本臨床試験におけるニボルマブによる寛解率の高さに関して2の可能性を述べている。1つ目はHL細胞の数が非常に少ないことと関連する。「HL悪性腫瘍の中では珍しく、非常に多くの炎症細胞とあまり効果的に作用しないT細胞を含む免疫細胞を背景として、少数の腫瘍細胞で構成されています」とShipp氏は述べる。「これらのT細胞の活性化により、相対的に少数の腫瘍細胞に対する非常に強い反応が引き起こされることが推測されます」。2つ目の関連する可能性は、HL細胞にPD-L1PD-L2の発現量の増加に関与する遺伝学的特徴です。この遺伝学的形質は腫瘍細胞が PD-1阻害治療に対して攻撃を受ける根拠となっています。 

これは比較的小規模1相試験における結果ですが、この研究に携わった研究者たちにとって本当に感動的なものでした。私のように、このような研究に携わる者にとって、このような素晴らしい成果に巡り合えるのはキャリアの中で一度きりでしょう」と本臨床試験の共同統括著者である Philippe Armand医学博士(腫瘍内科医、ダナファーバー癌研究所血液腫瘍治療センター)は述べた。

本臨床試験は、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社、ならびに米国国立衛生研究所助成金R01CA161026U54CA163125、および P01AI056299の援助を受けた。また、Miller家財団からShipp研究室への援助も受けた。

本臨床試験の共同筆頭著者は、Stephen Ansell医学博士(メイヨークリニック)とAlexander Lesokhin医師(スローンケタリング記念がんセンター)である。共著者は以下の通りである。Ivan Borrello, MD, of Johns Hopkins University School of Medicine and the Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center; Ahmad Halwani, MD, of University of Utah Huntsman Cancer Institute; Emma Scott, MD, of Oregon Health and Science University; Martin Gutierrez, MD, of Hackensack University Medical Center; Stephen Schuster, MD, of Abramson Cancer Center, University of Pennsylvania; Michael Millenson, of Fox Chase Cancer Center; Deepika Cattry, MS, of Memorial Sloan-Kettering Cancer Center; Gordon Freeman, PhD, and Bjoern Chapuy, MD, PhD, of Dana-Farber; Scott Rodig, MD, PhD, and Azra Ligon, PhD, of Brigham and Women’s Hospital; Lili Zhu, MS, Joseph Grosso, PhD, Su Young Kim, MD, PhD, of Bristol-Myers Squibb; and John Timmerman, MD, of Jonsson Comprehensive Cancer Center, University of California, Los Angeles.

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渡邊 岳  訳
佐々木裕哉(血液内科、血液病理/久留米大学病院)監修
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原文

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