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免疫療法の追加により小児癌の生存率が高まる

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免疫療法の追加により小児癌の生存率が高まる

標準治療に免疫療法を追加した場合、神経芽細胞腫患児の生存率に上昇がみられた
NCIニュース 2010年9月29日

神経系の癌である神経芽細胞腫の患児に対して新しい免疫療法の投与を実施したところ、2年後の生存率の向上と疾患の進行停止が認められた。New England Journal of Medicine誌2010年9月30日号に掲載された研究によると、標準治療群では患児の46%であったが、標準治療+免疫療法群の患児では66%と高かった。この第3相ランダム化臨床試験は米国衛生研究所(NIH)の下部組織である米国国立癌研究所(NCI)の支援を受けた米国の研究組織であるChildren’s Oncology Group (COG)臨床試験協力団体が主導となって行われた。

神経芽細胞腫は(脳や脊髄以外にみられる)末梢神経系の癌であり、15歳未満の小児癌による死亡率の12%を占める。小児では脳腫瘍を除いて、最も多い固形腫瘍である。神経芽細胞腫患者の約50%がハイリスク群に属する腫瘍であり、極めて強力的な治療にもかかわらず長期生存率は乏しい。

これまで確立されてきた神経芽細胞腫に対する標準治療では、できるだけ多くの癌細胞を破壊できるように大量化学療法が用いられている。しかし、このタイプの化学療法(破骨髄的治療)では正常な造血細胞もいくらか破壊されてしまうため、その後に免疫機能と造血機能を回復させるために治療前に採取した造血細胞を戻すことになる。この治療が奏効する患者に対してはその後にイソトレチノイン(isotretinoin)が投与され、さらに残存癌細胞に対する治療が行われる。イソトレチノインはビタミンA誘導体であり、重症のにきびの治療にも用いられる。また、神経芽細胞腫の細胞増殖を抑制することがわかっている。このような治療を受けたハイリスク群神経芽細胞腫患者の半数以上が死亡する。研究者らはより効果的な治療法を模索しているところである。

癌の新しい治療法に免疫療法がある、そして神経芽細胞腫の場合、腫瘍細胞表面にあるGD2という物質を標的とするch14.18と呼ばれる抗体が用いられる。GD2は神経芽細胞腫などの癌細胞で発現するが、正常の神経細胞に認められる場合もある。第1、2相試験では、免疫機能を高める他の薬剤と併用された場合のch14.18の安全性と有効性が認められた。このような薬剤には血液細胞増殖因子や特定の免疫細胞の数と活性を高めるホルモンなどが含まれる。

この研究では、破骨髄的治療に奏効した226人のハイリスク群神経芽細胞腫患児を、標準治療のイソトレチノイン群、もしくはイソトレチノイン+ ch14.18+免疫刺激剤治療群へと無作為に割りつけた。この試験での患者に対する追跡期間の中央値は約2年間であった。当初の予定は3年後の成果を比較するというものであったが、非常に強い有効効果が認められたために試験は早期に中断され、標準治療群患者にも任意でch14.18免疫療法に切り替えるようになった。

「第3相試験の結果によりch14.18免疫療法はハイリスク群神経芽細胞腫患児に対する新たな標準治療となります」とカリフォルニア大学サンディエゴ校の臨床試験責任者であるAlice Yu博士は述べた。

疼痛、低血圧、毛細血管漏出(循環系毛細血管から周辺組織への血液の漏出)、過敏反応といった毒性の発生率は、標準治療のみを受けた患者と比較して顕著に高かった。しかし、免疫治療群の副作用は一時的なものであり、基本的に治療中止により回復した。

第3相臨床試験の開始当時、ch14.18を製造している製薬会社がなかったために、NCIが薬剤を製造し臨床試験用薬剤をCOGに提供した。NCIはch14.18の製造を継続し、COGの臨床試験の進行期間を通じて神経芽細胞腫のハイリスク患児に行き渡るようにした。

「このような薬剤の製造といった活動は、業界での開発が見込めないめずらしい癌の患者に対して、新たな治療を開発するNCIの取り組み姿勢を表しています」とNCIの癌治療・診断部門部長であるJames H. Doroshow氏は述べた。

NCIはch14.18の製造を最終的に引き継ぐことになる製薬会社にUnited Therapeutics Corp., Silver Spring, Md.を選んだ。今後同社がハイリスク神経芽細胞腫治療薬としてのch14.18の承認取得手続きを米国食品医薬品局に対して行うことになる。United Therapeutics社による今後のch14.18の開発は、企業研究の一環としてNCIの開発承認を受けて実施される。

「ch14.18の第3相試験は素晴らしい成功でしたが、まだまだやるべき仕事はたくさんあります。より効果的でより毒性の少ないch14.18の使用法を確定する必要がありますし、今の治療では治せない子どもたちを救うまったく新しい治療の開発も行わなければなりません」とNCIの小児科臨床調査支部、副主任のMalcolm Smith氏は述べた。

参考文献:Yu AL, Gilman AL, et al. Anti-GD2 Antibody with GM-CSF, IL2 and Isotretinoin for Neuroblastoma: A Children’s Oncology Group (COG) Phase III Study. Sept. 30, 2010. NEJM. Vol. 363, No. 14。

原文写真の説明:ロゼット形成がみられる典型的な神経芽細胞腫細胞の顕微鏡写真]

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窪田美穂 訳
井上進常(小児腫瘍科/首都医校教員)監修
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原文

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