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炎症と膵臓癌の関連を科学者らが解明

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炎症と膵臓癌の関連を科学者らが解明

カリフォルニア大学サンフランスコ校

2011年4月12日

News Office: Jason Bardi (415) 502-6397

 

サンフランシスコ州カリフォルニア大学の研究者らは、炎症をおこした膵臓で見つかった分子と、早期の膵臓癌形成の関連性を明らかにし、医学上の謎の一つを解明した。この発見は、科学者らがこの致命的な疾患を検出、観察、治療するための新たな方法を見出す助けとなるかもしれない。

 

膵炎とは痛みを伴う膵臓の炎症であり、喫煙やダイエットなどと同様に膵臓癌の一般的なリスク因子の一つであることは、科学者らの間で長年にわたり知られている。しかしその理由を正確に知るものはいなかった。

 

今回Matthias Hebrok 氏が率いるUCSFチームが、少なくともこの関連の一端を解明した。彼らは今週のCancer Cell誌に掲載された論文で、膵臓では炎症時に2つの分子“シグナル”が大量に産生されていることを明らかにした。Stat3という名のタンパク質は早期膵臓癌の発症を促し、もう一つのタンパク質MMP7は転移に関与すると考えられる。

 

研究所でのマウスの実験において、Hebrok氏と同僚らはこれらのタンパク質を阻害すると癌になりうる病変数が減少し、癌の転移の範囲が小さくなることを明らかにした。さらに彼らは、これらの分子のうちMMP7が癌の病期を示す臨床指標となる可能性があり、侵攻性の高い疾患に対するマーカーとして役立つかもしれないことを明らかにした。本研究は膵臓癌の薬物治療に関し、新たな道を開く助けにもなりうる。

 

「膵臓癌の初期段階で炎症シグナルを下方制御することができれば、早期病変の形成を抑制できるかもしれません」とUCSF糖尿病センター所長で、糖尿病研究におけるHurlbut-Johnson 特別教授であるHebrok氏は語る。

 

米国では膵臓癌はよく見受けられるものであり、あまりにも致命的である。米国国立癌研究所によれば、米国では2010年に43,140人が新たに膵臓癌と診断され、36,800人がこの疾患で死亡した。全体として、今年膵臓癌と診断された20人のうち、この先5年間生存するのは1人に満たないことになる。

 

膵臓癌が抱える問題の一つは、医師が疾患を早期に発見しうる信頼性と感度のある検査法がないことである。発見されたときには、手術で切除したり簡単に治療することができないほどに癌は進行していることが多い。

 

糖尿病を研究している多くの科学者と同様に、Hebrok氏は膵臓癌について非常に詳しい。なぜなら糖尿病は膵臓癌の診断前に発症することが多く、癌の予兆の一つである可能性があるからだ。氏の過去数年間の研究では、癌出現時に膵臓で起こる顕微鏡的変化も観察されている。

 

膵臓は胃と脊柱に挟まれた長さ6インチ(約15センチ)の腺である。内部には小さな空洞をもつ”腺房”があり、その空洞に酵素が分泌され、酵素は管を通って十二指腸へ流れ食物の消化を助ける。この小さな空洞あるいは管においてその内部を覆う細胞が変化して増殖し始めると膵臓癌が開始し、癌性病変を形成することがあると考えられる。その過程はしばしば炎症によって始まることがある。

 

Hebrok氏と同僚らは、Stat3分子がこの過程において重要な役割を担っていることを見出した。Stat3は膵臓で作られ、炎症に反応した正常な治癒プロセスの一環として膵臓の細胞の増殖を促す。しかしこの過程がうまくいかず、正常細胞を癌性細胞に変異させることがある。さらにStat3はMMP7の量を増加させ、癌の転移の一因となる。

 

UCSFチームは、マウスのMMP7を阻害すると、転移を抑制し癌性腫瘍のサイズを縮小することを示した。彼らはユタ大学の研究グループと共同して、膵臓癌患者から採取した血液サンプルを検査し、MMP7が血液中に多い患者ほど癌の病期が進行している傾向にあることを見出した。

 

この知見は、膵臓癌患者の治療を進めるうえでMMP7が有用なマーカーとなる可能性があることを示唆している。炎症がいかに膵臓癌と関連するか、その全体的なプロセスに関するこの新たな知見は、科学者らが癌治療の新たな標的を見出すのに役立つ可能性がある。 そのためにはこのプロセスを妨げる方法が見出され、そのアプローチの有効性が臨床試験において証明されることが必要となる。

 

「多くの物事と同じように、タイミングが重要です。治療標的の機能を効率的に阻害し、ひいては癌の形成と進行を阻害するためには、膵臓癌のどのステージで治療標的が活性化されるのか、より詳しく理解する必要があるでしょう」とHebrok氏は語った。

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訳:  大倉 綾子  監修: 北丸 綾子(分子生物学/理学博士)

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原文

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