ホルモン受容体陽性の早期乳癌患者では、乳房温存療法が乳房切除術より高い延命効果を示す/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

ホルモン受容体陽性の早期乳癌患者では、乳房温存療法が乳房切除術より高い延命効果を示す/MDアンダーソンがんセンター

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ホルモン受容体陽性の早期乳癌患者では、乳房温存療法が乳房切除術より高い延命効果を示す/MDアンダーソンがんセンター

ホルモン受容体陽性の早期乳癌患者では、乳房温存療法が乳房切除術より高い延命効果を示す

近年の癌生物学の知見を利用したMDアンダーソンによる試験で従来の治療パラダイムが否定される

MDアンダーソンがんセンター

2014年9月4日

乳癌の生物学および異質性に関する現在の知見を考慮したところ、早期ホルモン受容体陽性乳癌女性では、乳房温存療法(BCT:breast conserving therapy )による延命効果は乳房切除術よりも高いことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターが実施した研究により示された。

試験の結果から、この2つの治療法の生存率が同等であるという従来の概念が否定され、現在臨床で標準的に実施されている乳癌治療について再検討する必要があることが示された。

この試験結果は、MDアンダーソンの元フェローであり、現在はアラバマ大学バーミンガム校に在籍するCatherine Parker医師により2014年乳癌シンポジウムにて発表された。

1980年代には、米国中心および国際ランダム化試験の結果から、乳房温存療法および乳房切除術の延命効果は、早期段階の乳癌女性患者では同等とされていた。しかし、こうした成績は、乳癌の生物学的特徴に関する情報がほとんどない時代に得られた試験結果であると、MDアンダーソン外科腫瘍学准教授であるIsabelle Bedrosian医師は述べる。

「40年前は、乳癌の生物学的特徴、つまり乳癌のタイプ、放射線感受性、放射線抵抗性、局所再発および転移性などの差異についてはほとんど知られていませんでした」とこの試験の上級著者であるBedrosian医師は説明する。「それ以降、生物学的特徴全体が解明されたものの、乳房温存療法や乳房切除術を受ける患者の延命効果において、こうした知見はまったく考慮されていないのです」。

「今回、腫瘍の生物学的特性の観点から、乳房温存療法と乳房切除術を比較検討することが重要であると考えました」とBedrosian医師は述べる。

研究者は、腫瘍生物学的特性が患者の手術選択ならびに生存に影響を与えるだろうと仮定した。

今回の後方視的患者研究では、米国での新規診断癌患者の約70%を網羅する米国外科学会(American College of Surgeons)、米国癌協会および米対癌協会の全米患者転帰レジストリである米国癌データベース(National Cancer Database:NCDB)が利用された。ステージIの女性患者、計16,646人のうち、2004~2005年に乳房切除術を受けた患者、乳房温存療法を受けた後に放射線治療を6週間受けた患者(BCT)、または乳房温存療法を受けたが放射線治療を実施しなかった患者(BCS)が特定された。Bedrosian医師は、本研究では、試験群の均一性を保つため、また乳房温存療法が不適格となる患者がほとんどいないと考えられることから、ステージIの患者のみに焦点を絞ることが重要であったと述べている。

エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)に関するデータが得られていたが、HER2の状態に関しては得られていなかったため、試験では腫瘍をERまたはPRのいずれかが陽性(HR陽性)、またはER/PRともに陰性(HR陰性)に分類した。また年齢、ホルモン剤/化学療法剤投与の有無、ならびに患者が治療をうけている試験実施施設、および併存疾患の有無など広範囲にわたる変数の傾向スコアを用いて、患者を厳密に比較対照した。

16,646人の女性患者うち、1,845人(11%)がBCSを、11,214人(67%)がBCTを、また3,857人(22%)が乳房切除術をそれぞれ受けた。BCT群では、乳房切除術群またはBCS群と比較し生存率の優越性が示され、5年全生存率はそれぞれ96%、90%、87%であった。リスク因子調整後もやはり、BCT群ではBCS群や乳房切除術群と比較し延命効果がみられた。各群1,706人の対照集団の比較では、HR陽性患者の集団では乳房切除術群と比較しBCT群で全生存期間の改善効果が認められたが、HR陰性患者の集団では認められなかった。

Bedrosian医師は、この知見は議論を呼ぶものであるが、後方視的研究であるため、今回の結果は診療を変えるものではない、と注意を促す。とは言え、今回の試験は乳房切除術と比較し、BCTで優れた延命効果が示された他の試験を裏づけるものである。さらにBedrosian医師は、放射線療法が全生存期間の改善をもたらした可能性があると指摘している。

「従来から、外科手術および放射線療法は局所病勢コントロールを改善する手段として考えられてきました」とBedrosian医師。「しかし、最近の試験から、放射線療法は局所病勢コントロール以上の、生存に関連した効果があると示唆されています。このため、放射線療法は単に局所病勢コントロールを促進する以上の作用を有しているかもしれない。また、ホルモン受容体陽性乳癌は放射線療法に対する感受性がより高いことが知られており、そのため、この患者群において延命効果が高いのであろうと考えられます」。

追跡試験として、Bedrosian氏が率いる研究班は、1980年代に実施されたランダム化試験の結果を利用して、これらの試験のコホートと今回のNCDB患者とを比較し、同じ程度の延命効果が得られるか確認したいと考えている。

「今回の試験は後方視的研究であるものの、私たちの知見は乳癌医療関係者に熟考の機会を与えていると考えます。将来的には、乳房温存療法と乳房切除術を同等とみなすパラダイムを再検討する必要があるかもしれません」とBedrosian医師は述べた。「腫瘍生物学の知見を考慮すると、このパラダイムはもはや正しいとは言えない可能性があります」。

この試験はMDアンダーソンによる資金援助のもとに実施された。Bedrosian医師およびParker医師のほか、MDアンダーソンによる本試験に参画した著者は以下のとおり: Heather Y. Lin, Ph.D., Yu Shen, Ph.D., Liang Li, Ph.D.; all Biostatistics, Henry Kuerer, M.D., Ph.D. and Gildy Babiera, M.D., both Surgical Oncology; and Simona Flora Shaitelman, M.D., radiation oncology. Meeghan Lautner, formerly a fellow at MD Anderson, also contributed to the research.

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菅原宣志 訳
原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)監修

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原文


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