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心臓薬で前立腺癌減少

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心臓薬で前立腺癌減少

ジョンズ・ホプキンス大学

2011年4月3日

ジョンズ・ホプキンス大学の科学者らは実験と疫学データを合わせ、心臓病薬のジゴキシンを使用している男性の前立腺癌になるリスクが24%減少したことを発見した。

研究者らは発見のより詳細な研究により、癌治療でジゴキシン、または同効新薬を使用する可能性があることを述べた。

キツネテブクロからできるジゴキシンは何世紀にもわたり民間療法で使用され、鬱血性心不全と不整脈の治療に何十年も使用されている。

2011年のAACR第102回年次会合で初めて登場した4月3日発行の米国癌研究学会最新雑誌Cancer Discoveryで、研究者らは、前立腺癌細胞の成長抑制効果を研究するジョンズ・ホプキンス大学チームによってスクリーニングした3,000の薬から、ジゴキシンを第一候補とする結果を発表した。

そのチームによるさらなる研究により47,000人以上の男性群でジゴキシンを服用していた心臓病患者は有意に前立腺癌のリスクが少なかったことが明らかになった。

しかし、科学者らは、この報告で心臓病薬ジゴキシンが前立腺癌を防ぐことを証明するわけではなく、予防のために使用されることを勧めるものでもないと注意している。

ジョンズ・ホプキンスブルームバーグ公衆衛生学部の疫学、腫瘍学、泌尿器学博士であるElizabeth Platzは「この薬は健康な人へ与えるべきものではない」と述べた。

重大な副作用は女性化乳房と不整脈であり、また吐き気、嘔吐、頭痛を引き起こすことがよく見られる。

研究の初期段階でジョンズ・ホプキンス大学の助教Srinivasan Yegnasubramanian 医学博士、キンメルがんセンター所長William G. Nelson 医学博士、Jun Liu 博士は3000以上のデータベースからFDA承認済み、もしくは医学的使用経験がある38の化合物を特定した。

38候補薬は実験において前立腺癌細胞の成長を少なくとも50%の割合で減速した。

38の薬の中にはすでに認知されている化学療法の薬は含まれていない。

Nelson博士とYegnasubramanian博士はその38薬剤のリストを、前立腺癌の研究協力者であるPlatz博士の元へ持って行った。「彼らは文字通り突然やってきて、『この候補薬のリストをみて疫学的コホート研究ができないか検討してもらえないか』とたずねてきた」とPlatz博士は述べた。

「私たちの実験と疫学的アプローチを組みあわせることにより、候補薬による結果が偶発的に引き起こされたものという可能性を減らすことができると認識した」とPlatz博士は述べた。

また「薬のスクリーニング過程に疫学研究を加えることによって、人体における薬の潜在的活性に関する評価をもたらした」と述べた。

抗前立線癌薬の最初にあがったジスルフィラムは、慢性アルコール中毒に使われる薬であるが、通常めったに一般に使われることはないので、疫学研究では効率的に評価できなかった。

二番目の候補としてあがったのが、ジゴキシンであり、研究するのにも十分なくらい処方される頻度も多かった。

ジゴキシンと人における前立腺癌との関連性を確認するために、1986年から2006年までのハーバードのFollow-up Study(HPFS)に参加し、1986年以前に癌診断を受けていない、40歳から75歳の約47,000人の男性を調べた。

研究の被験者は2年に1度、人口学的情報や病歴、薬の使用や生活要因についての質問表に答えた。

研究者らは前立腺癌と診断された男性らを対象に治療記録や病理報告書を評価した。

被験者の中で5,002件の前立腺癌が報告された。

調査初期段階で被験者全体の2%が日常でのジゴキシンの使用を報告し、これらの人は薬を使用しなかった男性と比較し24%前立腺癌になる相対的リスクが低かった。

10年間ジゴキシンを使用している人々は使用していない人に比べて、前立腺癌が生じるリスクが約半分に下がった。

前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングや前立腺癌の家系、他の心臓病薬の使用など潜在する「交絡因子」を排除したとしても、ジゴキシン利用者の前立腺癌のリスクが低下するということは変わらないと研究者達は述べた。

次の段階ではジゴキシンの前立腺癌細胞に対する作用機序を確定することであり、そのことによってジゴキシンや他の同効薬を有望な前立腺癌治療薬として臨床試験でテストすることを支持することになるだろうとPlatz博士とYegnasubramanian医学博士は述べた。

ジゴキシンは心臓細胞にあるナトリウムやカリウムの酵素経路を変え、また研究者らによると前立腺癌にある全く同じか別の経路にも効果があるとも述べている。

国立癌研究所、国立衛生研究所、ジョンズ・ホプキンス大学のPatrick C. Walsh Prostate Cancer Research FundやNational Heart, Lung, and Blood Instituteにより研究用資金が提供された。

その他研究を行った科学者たちは、ジョンズ・ホプキンス大学からCurtis R. Chong氏とJoong Sup Shim氏、ハーバード大学公衆衛生学部、Channing laboratory、ハーバードメディカルスクール医学部、Brigham & Women’s HospitalからそれぞれStacey A. Kenfield氏Meir J. Stampfer氏、Walter C. Willett氏、Edward Giovannucci氏などである。

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訳: 小川明彦   監修: 林 正樹(血液・腫瘍内科)

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原文

 

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