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HER2陰性転移性乳癌に対するベバシズマブによる維持療法

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HER2陰性転移性乳癌に対するベバシズマブによる維持療法

欧州臨床腫瘍学会(ESMO) プレスリリース

 

ランダム化第3相臨床試験IMELDAとTANIAにおけるベバシズマブの有効性と安全性

 議題:乳癌/抗癌剤、生物学的療法

スペインのマドリードで開催されたESMO2014の、転移性乳癌Proffered Paperセッションにおいて、HER2陰性転移性乳癌に関するランダム化第3相臨床試験IMELDAおよびTANIAの結果が発表された。IMELDA試験では、ベバシズマブによる維持療法にカペシタビンを併用することで、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)について、統計的に有意にかつ臨床的に意味のある改善がみられた。TANIA試験では、ベバシズマブを含む初回治療後に病勢の進行を認めた患者に対してベバシズマブの投与を行ったところ、無増悪生存期間が有意に改善し、主目的が達成された。

 

IMELDA:ベバシズマブ+ドセタキセル併用による初回治療後の、ベバシズマブ単剤あるいはベバシズマブ+カペシタビン併用による維持療法の有効性および安全性

初回治療の化学療法と維持療法の延長は、全生存期間に影響する可能性がある。局所再発または転移を有するHER2陰性乳癌では、初回治療の化学療法とベバシズマブとの併用が、有意に無増悪生存期間を改善する。ベバシズマブはタキサンと併用することにより最も効果を発揮するが、タキサンには蓄積毒性があり、病勢進行まで治療を継続することを難しくしている。

 

2011年に承認が取り消されるまで、HER2陰性転移性乳癌に対するベバシズマブとドセタキセルの併用療法は、複数の第3相試験の結果に基づく有効な初回治療の選択肢だと考えられていた。最大9サイクルのドセタキセルによる初回治療は、ベバシズマブを病勢の進行まで継続することで、無増悪生存期間と奏効率(RR)を有意に改善した。

 

非盲検ランダム化第3相試験IMELDAでは、VEGFの阻害を継続する一方で、異なる作用機序を持ち忍容性が高い化学療法へ切り替えることが、より有効な治療であるかが検証された。すなわち、ベバシズマブ+ドセタキセル併用の初回治療後、病勢進行までベバシズマブは継続し、ドセタキセルをカペシタビンに切り替えて無増悪生存期間の延長を検証した。結果は、Tenon University Hospital、 Medical Oncology Department(フランス、パリ)のJoseph Gligorov医師によって発表された。

 

試験の対象は、HER2陰性乳癌で測定可能な転移を有し、ECOGのパフォーマンス・ステータスPSが2以下で、過去に化学療法を受けていない患者とした。

 

ベバシズマブ+ドセタキセル併用療法を3から6サイクル行った後、病勢進行がみられなかった患者をランダム化し、ベバシズマブ単独もしくはベバシズマブ+カペシタビン併用療法を、病勢進行がみられるまで行った。層別因子は、エストロゲン受容体(ER)の状況、内臓への転移、奏効の状況およびLDHの値とした。

 

主要評価項目はランダム化から病勢進行または死亡までの無増悪生存期間であった。副次的評価項目は、RR、臨床的有用率、病勢進行までの期間、ランダム化からの全生存期間、安全性、QOLなどであった。症例数は、無増悪生存期間ハザード比(HR)0.70、無増悪生存期間中央値がベバシズマブ群5.8カ月に対しベバシズマブ群+カペシタビン併用群が8.3カ月に増加すると仮定し設計。290人をランダム化するため、360人の患者の登録を必要とした。両側検定で有意水準5%、検出力80%での検出に必要な無増悪生存イベントが、244例となるように設定した。この試験は全生存率を正式に比較するようには設計されていない。

 

2009年6月から、試験への参加登録が早期に打ち切りとなった2011年3月の間に、患者287人が登録し、そのうち284人が治療を施行、その後初回治療を終了した185人(65%)をランダム化し、維持療法を行った。最終ランダム化から2年間追跡を継続するようプロトコルを修正した。

 

年齢中央値は、ベバシズマブ群で54歳、ベバシズマブ+カペシタビン併用群で49歳であった。トリプルネガティブ乳癌はベバシズマブ群で22%、ベバシズマブ+カペシタビン群で27%にみられた。内臓への転移の割合は両群でほぼ等しかった(69%対68%)が、初回治療の参加時には、ベバシズマブ群に3つ以上の臓器の転移が多くみられた(57%対47%)。

 

IMELDA試験結果

維持療法において治療期間中央値は、ベバシズマブ+カペシタビン群の方が高かった(8.3カ月対3.5カ月)。患者確保の早期打ち切りにより、計画よりも症例数が少なかったものの、カペシタビンをベバシズマブに併用する維持療法では、ランダム化時点からの無増悪生存期間(ハザード比0.38、p値<0.001、中央値11.9カ月対4.3カ月)、探索的解析(初回治療開始からの無増悪生存期間)、およびランダム化時点からの全生存期間中央値(ハザード比0.42、p値<0.001、39カ月対23.3カ月)となり、統計的に有意に、臨床的に意味のある改善がみられた。しかし、報告の時点では全生存率の追跡期間が不十分でイベント発生率が低かった。

 

ベバシズマブ+カペシタビン併用群では、33%の患者に手足症候群が発現したことが主な原因となり、管理可能な程度に有害事象が増加した。高血圧が併用群の9%、ベバシズマブ単剤群の3%に認められた。蛋白尿は両群で同じ割合(4%)であった。胃腸炎はベバシズマブ単剤群患者3人に認められた。

 

IMELDA試験の結論

Gligorov医師は、ベバシズマブを含む初回治療で奏効した患者が、ベバシズマブをカペシタビン併用で継続すると有効性が増すと結論づけた。現在は、臨床試験後の抗癌治療に関するデータの収集および患者から報告される転帰についての評価を行っている。

 

Hope Rugo医師は試験結果について「病勢進行後のベバシズマブ継続が転帰に影響を与えるかという問いに、IMELDA試験は答えようとしました」と述べた。Rugo医師は、ベバシズマブは、化学療法による初回治療に奏効した後の適切な維持療法であるかと疑問を呈する。この試験では、カペシタビン+ベバシズマブの併用治療がベバシズマブ単剤の治療よりも長期となり(サイクル数が2倍)、無増悪生存期間も著しく延長し、初回治療開始時からの無増悪生存期間も倍であった。全生存率も有意に改善したが、同時にグレード3以上の毒性(主に手足症候群、高血圧、血栓塞栓症も)もほぼ倍みとめられた。患者の10%は、手足症候群によりカペシタビンの継続中止となった。

 

TANIA:局所再発または転移を有するHER2陰性乳癌に対するベバシズマブによる初回治療後のベバシズマブ継続または再導入の有効性と安全性

複数のランダム化第3相試験において、局所再発または転移性のHER2陰性乳癌に対して、初回治療または二次治療の化学療法にベバシズマブを併用すると、無増悪生存期間が有意に改善することが明らかになった。持続してVEGFを阻害することが、長期の病勢コントロールに重要な役割を果たしている可能性がある。非盲検ランダム化第3相試験TANIAは、ベバシズマブによる前治療を行った局所再発または転移性乳癌に対する、ベバシズマブの継続治療について検証した。試験結果はドイツ、ノイ・イーゼンブルク市のGerman Breast Groupの最高責任者でありUniversity Women’s HospitalのGunther von Minckwitz氏により発表された。

 

初回治療としてベバシズマブ+化学療法を12週以上行い、その期間中またはその後に、病勢進行がみられた局所再発または転移を有するHER2陰性乳癌患者をランダム化し、二次治療で単剤の化学療法群と、ベバシズマブを併用する(3週毎に15 mg/kgまたは2週毎に10 mg/kg)群に1:1に割り付けた。

 

層別因子は、ホルモン受容体の状態、初回治療における病勢進行までの時間(6カ月未満対6カ月以上)、選択された化学療法(タキサン対非タキサン対ビノレルビン)、LDH値(正常上限1.5倍以下対1.5倍超)であった。

 

二次治療は、病勢進行、許容できない毒性、または同意の撤回まで継続した。二次治療で病勢が進行した場合、化学療法単独群の患者には三次治療でベバシズマブを用いない化学療法を行い(クロスオーバー無し)、ランダム化で化学療法+ベバシズマブ併用群に割り付けられた患者は、三次治療でも化学療法とベバシズマブを併用した。

 

化学療法の選択は基本的に治療担当医師に任されたが、重複は認められなかった。薬剤は、パクリタキセル、ナブパクリタキセル、ドセタキセル、カペシタビン、ゲムシタビン、ペグ化リポソームドキソルビシン、非ペグ化リポソームドキソルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ビノレルビン、シクロホスファミド、イキサベピロン、三次治療のみの選択肢としてエリブリン。

 

主要評価項目はランダム化から2回目の病勢進行または死亡までの無増悪生存期間であった。追加評価項目は、あらかじめ設定したサブグループにおける二次療法での無増悪生存期間、ランダム化から3回目の病勢進行または死亡までの期間に基づいて算出した二次および三次療法での無増悪生存期間、二次療法の客観的奏効率、全生存期間、安全性、QOL、バイオマーカーなどであった。

 

症例数は、ハザード比0.75、無増悪生存期間が7カ月から9.3カ月に延長すると仮定して設計。有意水準5%、両側検定80%検出力での検出に必要な無増悪生存期間イベントには、488人中384人を必要とした。

 

TANIA試験結果

ESMO2014では、試験担当医師は、予め規定され十分に考察がなされた二次治療の無増悪生存期間解析結果を発表した。三次治療に関する評価項目は最終解析で発表される。

 

2011年1月から2013年4月まで、494人の患者が参加した(化学療法群247人、化学療法+ベバシズマブ群247人)。ベースライン特性は、化学療法群と化学療法+ベバシズマブ併用群でそれぞれ、年齢中央値は54歳と56歳、トリプルネガティブ乳癌患者は23.1%と19.8%、無再発期間12カ月以下の患者は9.7%と7.3%であり、両群でほぼ同等であった。

 

二次治療で選択された化学療法で最多であったのはカペシタビンで、その割合は化学療法群で59.7%、化学療法+バシズマブ群で60.4%であった。

 

追跡期間中央値は、両群で同等であった。2013年12月20日のデータカットオフ時点で、二次治療における無増悪生存期間中央値は化学療法群で4.2カ月、化学療法+ベバシズマブ群で6.3カ月であった(層別ハザード比:0.75、p値:0.0068)。無増悪生存期間の層別因子によるサブグループ解析においても、化学療法+ベバシズマブ併用群においてより良好な結果となった。

 

最良客観的奏効率は、両群で統計的に異なるものではなかった(16.8%と20.9%)。しかし、病勢安定は化学療法群では33.5%、化学療法+ベバシズマブ群では48.9%の患者にみられた。

 

奏効期間中央値は、化学療法群と化学療法+ベバシズマブ群で、それぞれ10.6カ月と8.3カ月であった。

 

副作用の発生率は、化学療法+ベバシズマブ群で若干上回った。

•高血圧(7.1%対13.5%)、
•蛋白尿(0.4%対6.9%)、
•静脈血栓塞栓症(2.1%対3.3%)、
•発熱性好中球減少症(1.7%対3.3%)、
•うっ血性心不全(0.4%対2.0%)、
•出血(1.7%対0.4%)、
•動脈血栓塞栓症(1.3%対0%)、
•創傷治癒合併症(0%対0.8%)、
•胃腸穿孔(0%対0.4%)、
•瘻孔/膿瘍形成(両群で0%)、

 

TANIA試験の結論

著者らは、ベバシズマブによる初回治療で病勢が進行した患者に対してベバシズマブを投与することにより、無増悪生存期間が統計的に有意に改善し、試験の主要目的は達成されたと結論づけた。二次治療での安全性は、過去に行われた局所再発または転移性乳癌に対するベバシズマブの試験から予測される通りであった。ランダム化時点から三次治療における病勢進行または死亡までの最終的な全生存期間と無増悪生存期間、および三次治療での安全性に関する結果は、2015年半ばに得られる予定である。

 

Hope Rugo医師はTANIA試験についても議論し、この試験では、奏効後の維持療法として、化学療法と標的治療単独の効果を明らかにしようとしたと述べた。患者のほぼ85%がタキサン系(パクリタキセル73%)による初回治療を受けた。初回治療では著しい無増悪生存期間の増加がみられた。患者のほぼ60%はカペシタビンによる二次治療を受けた。ベバシズマブを継続することにより無増悪生存期間が増加した。客観的奏効率は増加しなかったが、病勢安定は増加、また過去の試験にみられたように、トリプルネガティブ乳癌で大きな効果があった。さらに、ベバシズマブに伴い毒性がより多くみられた(高血圧、蛋白尿、好中球減少)。

 

初回治療の化学療法で奏効した後に行う維持化学療法は無増悪生存期間と全生存期間を改善する。ベバシズマブの併用効果はまだ明らかではなく、費用と毒性に対してバランスがとれていなければならない。このセッティングで、ベバシズマブ単剤を維持療法で使用すべきではない。患者のほぼ75%はホルモン受容体陽性で、維持ホルモン療法の影響がある可能性もある。

 

Rugo医師は、乳癌でのベバシズマブの役割はまだ明らかにされていないと結論付けている。

 

原文掲載日

翻訳平沢沙枝

監修原 文堅 (乳腺科/四国がんセンター)

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