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低線量ヘリカルCTによる検診で喫煙者の肺癌死亡率低下

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低線量ヘリカルCTによる検診で喫煙者の肺癌死亡率低下

低線量ヘリカルCTによる検診で胸部X線より肺癌死亡率が20%低減
NCIニュース 2010年11月4日

米国国立癌研究所(NCI)は本日、比較的早期に癌を発見することで肺癌死亡率低下をめざして検診方法を検証した大規模試験の初期結果を発表した。

National Lung Screening Trial(NLST)(全米肺検診臨床試験)は、55〜74歳の現在および元ヘビースモーカー53,000人以上を対象とした全国規模のランダム化試験である。低線量ヘリカルコンピュータ断層撮影(CT)と標準的な胸部X線という2種類の肺癌検診法で肺癌死亡率を比較した結果、低線量ヘリカルCTによる検診を受けた被験者群の肺癌死亡率が20%低下していたことが明らかになった。NLSTは、米国国立衛生研究所の一部門であるNCIから助成を受け、American College of Radiology Imaging Network(ACRIN)(米国放射線学会画像ネットワーク)とLung Screening Study group(肺癌検診研究グループ)が実施した。NLSTのデザインと試験実施計画書を記載したNLST研究チームによる論文 “The National Lung Screening Trial: Overview and Study Design”(全米肺検診臨床試験:概要と試験デザイン)が11月3日にRadiology誌で発表され、http://radiology.rsna.org/cgi/content/abstract/radiol.10091808で公開されている。

「適切にデザインされたこの大規模試験では、特にハイリスク患者に検診を実施することで肺癌死を予防できるかどうかの調査が、厳密な科学的方法を用いて行われました」とNCI所長のHarold Varmus医師は述べた。「肺癌は国内、海外とも癌による死亡原因の第1位ですから、20%も肺癌死亡率を減らせる手法が検証されれば、肺癌の犠牲者を大幅に減らせる可能性があります。ただ、この結果が禁煙運動に水を差すようなことになってはなりません。禁煙は依然として肺癌やほかのさまざまな癌の主な原因ですから」。

この試験から独立した立場のデータ安全性評価委員会(DSMB:Data and Safety Monitoring Board)から、現時点までのデータにより、すでにこの試験における主な疑問点に対して確実な統計的回答が得られており、本試験を中止すべきだという[url=http://www.cancer.gov/images/DSMB-NLST.pdf]通達[/url]がNCI所長になされた後、NCIはNLSTの初期結果発表を決定した。数カ月以内にさらに完全な分析が詳細な結果とともに作成され、ピアレビュー学術誌で発表される予定である。NSLTの参加者には個々に試験責任医師が結果を連絡している。被験者への通知状はDSMBレターとともにhttp://www.cancer.gov/clinicaltrials/noteworthy-trials/nlstで閲覧できる。

NLSTは2002年8月に開始され、20カ月にわたり全米33カ所で男女合わせて53,500人を対象に行われた。被験者の条件は、年間30箱以上の喫煙歴を有し、現在または元喫煙者で肺癌の徴候、症状、肺癌の既往歴のないことであった。年間の喫煙本数は、1日に吸うタバコの箱数の平均×喫煙年数として計算した。

被験者は低線量ヘリカルCT(スパイラルCTとも呼ばれることが多い)か標準的な胸部X線のいずれかに無作為に割り付けされ、年1回検査を3回受けた。ヘリカルCTではX線を用いて、7〜15秒間息を止める間に胸部全体の多重画像スキャンを行う。標準的な胸部X線は、息を止めるのは1秒足らずであるが、得られるのは胸部全体の画像1枚で、解剖学的構造物が重なり合っている。これまで、標準的な胸部X線で肺癌死亡率を低下できることを証明しようとした試みがあったが、失敗に終わっている。

被験者は臨床試験登録時、および開始後1年目と2年目の終わりに検診を受けた。その後最長5年間追跡調査を行った。死亡はすべて記録し、死因が肺癌である場合の検証には特に注意が払われた。DSMBが2010年10月20日に最終会議を開いた時点で、CT群の被験者に肺癌による死亡が合計354例あったのに対し、胸部X線群の肺癌死亡数は442例と大幅に多かった。DSMBは、肺癌死亡率におけるこの20.3%低減は統計的有意差の基準を満たすと結論し、試験終了を勧告した。

「検診による肺癌死亡率が有意に低下する明確な証拠をランダム化対照試験で得られたのは今回が初めてです。低線量ヘリカルCTが決定的な利点を持つという結果は、今後長期にわたり肺癌の検診と管理に影響を与えるでしょう」とNCIの肺検診研究担当NLSTプロジェクトメンバーであるChristine Berg医師は述べた。

この試験の主要評価項目ではないが、付随的結果として、総死亡率(肺癌を含め、死因を問わずすべての死亡)は、ヘリカルCT群の方が胸部X線群より7%低かった。NLSTにおける死亡例の約25%は肺癌によるもので、他は心血管疾患などが死因であった。結果のこの側面について、より詳しく解明するにはさらに分析が必要である。

NCIおよび提携団体がこの試験を行った目的は、肺癌検診の潜在的利点についてできる限り信頼性の高い結果を得ることであった。これから諸団体は、この試験から得られた広範なデータを活用し、さらに分析を行い、肺癌検診の臨床ガイドライン提唱と政策提言を行うことになるだろう。

「この試験結果から言えるのは、高齢で高リスクの人々に低線量ヘリカルCT検査による検診を行う利点が客観的に証明されたことで、低線量ヘリカルCT検査をきちんと実施し、異常が認められた人を慎重に追跡調査すれば、何千人もの命が救える可能性があるということです」とACRIN担当NLST全国主任研究員のDenise Aberle医師は述べた。「ただ、肺癌と喫煙の密接な関係を考えると、肺癌死を予防する唯一無二の方法は絶対に喫煙習慣を始めないことであり、すでに喫煙している人は永久に禁煙することだと、試験責任医師はあらためて強調しています」と語った。

ヘリカルCTの問題点としては、多重CTスキャンによる放射線の累積効果、肺癌ではないことがわかり病因特定のためさらに検査が必要になった患者の外科的・内科的合併症、肺癌の疑いとともに肝疾患や腎疾患など肺癌と関係のない疾患を調べるため余分に精密検診を受けるリスクなどがある。さらに、検診によってがんが疑われるものの結果的に大部分のケースで癌ではないと判明する結果を出す傾向があり、、多大な不安や経済的負担をもたらす。もちろん、これらの問題と、肺癌死亡率の大幅低下という利点とを天秤にかけて検討しなければならない。

また、今回の被験者は、人種バランスを考慮した高リスクの米国人喫煙者であるとはいえ、モチベーションが高く、大きな医療施設で検診を受けた都市部の住民が多数を占めている。したがって、この結果は、他の集団にも低線量ヘリカルCTを推奨するほどの効果を厳密に予測していない可能性がある。

DSMBおよびNLSTの被験者への通知文が閲覧できるNLSTのサイトは:
http://www.cancer.gov/clinicaltrials/noteworthy-trials/nlst

NLSTに関するQ&Aは(翻訳中):
http://www.cancer.gov/newscenter/qa/2002/nlstqaQA

肺癌および肺癌検診について詳しくは: http://www.cancer.gov/cancertopics/types/lung*5

“The National Lung Screening Trial: Overview and Study Design”(全国肺検診臨床試験:概要と試験デザイン)はRadiology誌で発表。
本論文が公開されているウエブサイトは: http://radiology.rsna.org/cgi/content/abstract/radiol.10091808

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丸野有利子 訳
後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)監修
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原文

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