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マンモグラフィ検診:利益とリスクを理解するために

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マンモグラフィ検診:利益とリスクを理解するために

マンモグラフィ検診:利益とリスクを理解するために
2010年10月1日

1.乳癌をできるだけ早期に発見するための最良の方法とは?

女性の年齢に応じて、高解像度のマンモグラフィ検診による検査を定期的に行うことが、乳癌の早期発見のための最も効果的な方法です。訓練を受けた医療専門家による乳房検査(視触診検診という)を併用することで、マンモグラフィ単独の場合に比べて有効性が高まるかどうか、また大多数の女性にとって、デジタルマンモグラフィあるいは磁気共鳴影像法(MRI)は、標準的なフィルムマンモグラフィよりも有利であるのかを判断するための充分な情報は、現在利用可能な研究から得ることはできません。

2.マンモグラフィ検診の利益とは?

ある研究により、マンモグラフィ検診を行うことで、50歳から74歳の女性における乳癌による死亡数が約17%減少したことが示唆されています。スクリーニング開始年齢を50歳から40歳に引き下げることで、乳癌死亡率はさらに3%低下します。40歳未満あるいは74歳を超える女性の場合、定期的に行われるマンモグラフィ検診、あるいはベースライン時のマンモグラフィ検診(比較のために使用されるマンモグラフィ)による利益は確認されていません。

3.マンモグラフィ検診のリスクとは?

他の医療検査および処置と同様に、マンモグラフィ検診にも利益および不利益は存在します。マンモグラフィのリスクは以下のとおりです:

● スクリーニングによる癌の発見は、必ずしも命が救われるということではありません:

マンモグラフィにより触診では確認できない悪性腫瘍を発見することはできますが、小腫瘍の治療を行うことで必ずしも女性の命が助かるという意味ではありません。急速に成長する癌や進行性の癌は、発見される前に体内の他の部位に転移している可能性があります。また、より生命を脅かす他の健康状態を患う女性の場合は、マンモグラフィにより乳癌が早期発見されてもそれが役に立たない可能性があります。

● 偽陰性結果:

マンモグラフィでは、スクリーニング時に存在する乳癌の20%までが見落とされることがあります。偽陰性結果となる主因は乳腺密度が高いことによります。乳房は、高濃度組織(腺組織および結合組織、合わせて乳腺組織として知られています)および脂肪組織により構成されます。マンモグラフィ画像上では、脂肪組織は黒い部分として表示されますが、高濃度組織および腫瘍は白い領域として示されます。乳腺組織と腫瘍の密度が類似していることから、乳腺密度が高い女性において、腫瘍の発見はより困難となります。偽陰性結果は、老年層の女性よりも若年層の女性に多くみられますが、それは若年層の女性の方が乳腺密度が高いことによります。女性は加齢によって、乳房における脂肪の割合が増えることから偽陰性結果は生じにくくなります。偽陰性結果は、実際に乳癌に罹患している女性に対して、治療の遅れおよび偽りの安心感をもたらす可能性があります。

● 偽陽性結果:

偽陽性結果は、放射線科医師の診断によりマンモグラフィで異常所見が認められたが、実際に癌が存在しない場合に生じます。マンモグラフィで認められた全ての異常所見は、癌が存在するかどうかを確定するために、追加検査(診断マンモグラフィ、超音波検査、あるいは生検、もしくはそれら全て)を行い追跡調査を行うべきです。偽陽性結果が比較的生じやすいのは、若年層の女性、乳房生検の既往歴を有する女性、乳癌の家族歴を有する女性、およびエストロゲン(例えば、更年期ホルモン療法)を服用している女性です。偽陽性結果は、乳癌と診断された女性に対して不安や心理的苦痛などをもたらします。また、癌の可能性を排除するために行われる追加検査は費用および時間がかかり、さらに身体的不快感をもたらす可能性があります。

● 過剰診断および過剰治療

マンモグラフィ検診により、治療を要する腫瘍が発見されることに加え、無症状あるいは生命を脅かすことのない、つまり乳癌の「過剰診断」につながる腫瘍が特定されることもあります。これらの生命を脅かすことのない腫瘍の治療は不必要で「過剰治療」につながり、癌治療に伴う有害事象を経験することになります。現在のところ、医者が治療を必要とする乳癌と必要としないものの識別が不可能なため、全ての乳癌が治療の対象となっています。

● 放射線暴露

マンモグラフィには、極少量の放射線が使用されます。この放射線暴露による危害リスクはわずかですが、X線の連続照射は発癌の可能性を高めます。しかし、利益がリスクを上回る場合がほとんどです。

4.マンモグラフィ検診の開始年齢、および頻度について。

米国国立癌研究所(NCI)の推奨事項は、以下のとおりです:

  • 40歳以上の女性は、1〜2年ごとにマンモグラフィ検診を受けること。
  • 乳癌発症リスクが平均より高めの女性の場合は、マンモグラフィ検診を40歳未満で受けるべきか、またその頻度について医療従業者に相談すること。

米国の他組織によってもマンモグラフィ検診は推奨されています。下表にて、NCIを含む米国の主な組織による推奨をまとめます。

乳癌の平均的リスクを有する女性に対するマンモグラフィ検診の推奨事項

組織 推奨
米国国立癌研究所(NCI) 開始年齢は40歳、頻度は1〜2年ごと。
米国予防医療専門委員会(USPSTF)
  • 50歳未満の場合、マンモグラフィの特定の利益とリスクについて女性のリスク要因および価値を重要視した上で、2年ごとのスクリーニングの開始年齢は個人が意思決定を行う。
  • 50歳〜74歳の場合、2年ごと。
米国がん協会(ACS) 開始年齢は40歳、頻度は毎年。
米国産婦人科学会(ACOG)
  • 40歳〜49歳、1〜2年ごと。
  • 50歳以上、毎年。

 

 

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訳:栃木和美
監修:原 文堅(乳腺科)
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