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同じ癌、異なる増殖時間帯/MDアンダーソンがんセンター

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同じ癌、異なる増殖時間帯/MDアンダーソンがんセンター

同じ癌、異なる増殖時間帯
腫瘍増殖における分子時計の役割発見は、乳癌治療に影響を与える可能性がある

MDアンダーソンがんセンター ニュースリリース
2014年7月30日

誰一人として同じ遺伝子構造を持たないのと同様に、乳癌患者の腫瘍細胞は、どれ一つ取っても遺伝的に全く同一の細胞は存在しないことが、最近の研究により解明された。

テキサス大学 MDアンダーソンがんセンター(所在地:米国テキサス州ヒューストン)の遺伝学部門 助教であるNicholas Navin博士が主導した研究によれば、腫瘍細胞の増殖スピードは、それぞれの細胞ごとに大きく異なるという。この研究による知見は、乳癌の診断と治療に重要な意味を持つ可能性がある。また、乳癌患者の化学療法に対する抵抗性の獲得に対処する取り組みにも役立つ可能性がある。

Navin氏の研究成果は、Nature誌今週号に掲載され、腫瘍内における「ゲノム多様性」に関する知見の一つとなった。乳癌腫瘍の大規模な塩基配列解析研究によって、高い頻度でみられる突然変異が、これまでに多数同定されているが、多様性に関する知見は限られている。Navin氏の研究チームは、Nuc-Seqという新規の塩基配列解析法を開発し、これにより、異なるサブタイプの乳癌がさまざまな腫瘍多様性を示したことを明らかにした。

「特徴のある、二つの『分子時計』が、腫瘍増殖の異なる段階で作動していることがわかりました」と、Navin氏は語った。「トリプルネガティブ乳癌の腫瘍細胞は突然変異率が高く、エストロゲン受容体陽性(ER+)乳癌の腫瘍細胞では変異率は高くはありませんでした」。

乳癌の約75%はエストロゲン受容体陽性(ER+)で、女性ホルモンのエストロゲンの刺激によって増殖する。このタイプの乳癌は、ホルモン療法により治療することが多い。トリプルネガティブ乳癌は、全乳癌の15~25%を占め、ほとんどの場合、ホルモン療法あるいは化学療法に対する反応は不良である。

Navin氏の研究チームは、単一細胞塩基配列解析法としてNuc-Seqを開発し、これら2つのタイプの乳癌における細胞突然変異メカニズムの解明に用いた。単一細胞分子配列解析を併用することで、何千もの細胞をプロファイルすることが可能であった。

「単一細胞ゲノム研究の分野で共通の問題は、個々の細胞で検出された突然変異を検証する手段がないことです」と、本研究の筆頭著者を務めた遺伝学部門のYong Wang博士研究員は語った。「この問題への対策として、私たちは、単一細胞塩基配列解析にtargeted single-molecule deep sequencingを併用しました。この方法では、突然変異の検証だけでなく、何千もの細胞が突然変異を起こす頻度を正確に測定することができます」。

化学療法分野では、治療抵抗性を引き起こす変異が、腫瘍の少数の細胞にもともと存在するのか、あるいは治療に反応して自然発生的に変異が起こるのかを、解き明かすことが重要な課題になっている。

「この問題は、長い間バクテリアの研究により検討されていますが、ヒトのほとんどの癌についてはあまり理解が進んでいません。この研究のデータから、多数の多様性に富んだ突然変異が、化学療法施行以前から腫瘍内に存在する可能性が示されました。ですから、ゲノムの多様性を測定することは、化学療法に対する抵抗性を獲得する患者を見極めるといった予後判定上の有用性があるのではないかと期待しています」とNavin氏は語った。

この研究により、ゲノムの多様性が、患者の腫瘍の浸潤や転移、予後不良の予測といった臨床応用に役立つ可能性も示された。

本研究に関する共同研究者は次のとおりである。Funda Merica-Bernstam, M.D., chair, Department of Investigational Cancer Therapeutics、Han Liang, Ph.D., an assistant professor, Bioinformatics and Computational Biology、Asha Multani, Ph.D., assistant professor, Department of Genetics、Paul Scheet, Ph.D., associate professor, Department of Epidemiology、Ken Chen, Ph.D., professor, Department of Bioinformatics and Computational Biology、Yong Wang, Ph.D., postdoctoral fellow, Department of Genetics

本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)(R21CA174397-01、TR000371、RO1CA172652、U24CA143883)以下、次から研究助成を受けている。米国国立癌研究所(NCI)(1R01CA169244-01、R01CA172652、CA016672、U54CA143798)、Nadia’s Gift Foundation Damon Runyon-Rachleff Innovator (DRR-25-13)、the T.C. Hsu and Alice-Reynolds Kleberg Foundation、the Center for Genetics & Genomics、the Susan G. Komen for the Cure、the Dell Foundation、the Cancer Prevention Research Institute of Texas

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菊池明美 訳
原野謙一 (乳腺・婦人科癌/日本医科大学武蔵小杉病院)監修
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原文


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