1日4杯以上のコーヒーで前立腺癌の再発や進行のリスクが低下する可能性/フレッドハッチンソンがん研究センター | 海外がん医療情報リファレンス

1日4杯以上のコーヒーで前立腺癌の再発や進行のリスクが低下する可能性/フレッドハッチンソンがん研究センター

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1日4杯以上のコーヒーで前立腺癌の再発や進行のリスクが低下する可能性/フレッドハッチンソンがん研究センター

コーヒーに含まれる生理活性物質が抗炎症および抗酸化作用を示す可能性

2013年8月26日シアトル発― コーヒーの摂取(飲用)によって前立腺癌の再発や進行のリスクが低下するというフレッドハッチンソンがん研究センターの研究者による新しい研究成果が、Cancer Causes & Control 誌への掲載に先行して、電子版で公開された。

論文の責任著者で、フレッドハッチンソンがん研究センター公衆衛生科学部門で前立腺癌研究プログラム(Program in Prostate Cancer Research)の共同ディレクターを務めるJanet L. Stanford博士は、コーヒーやお茶に含まれる生理活性物質が、前立腺癌の再発を防いだり、進行を遅らせたりする効果を示すかどうかを明らかにする研究を行った。
Stanford博士らはコーヒーを1日に4杯以上飲む男性は、週に1杯以下しか飲まない男性に比べて、前立腺癌の再発や進行のリスクが59%低いことを明らかにした。
しかし、コーヒー摂取と、前立腺癌による死亡率の減少との関連性は見出せなかった。両者の関係性について単独で検討するには、今回の研究では前立腺癌による死亡者数が少なすぎたためと考えられる。

お茶と前立腺癌の転帰との関係性を検討した最初の研究

今回の研究では、紅茶の摂取については、前立腺癌の再発や進行のリスク低下との関係性は明らかにならなかった。また、紅茶を飲むことによる前立腺癌死への影響についても、いかなる結論も導き出されなかった。
「われわれの知る限り、今回の研究は、紅茶の摂取と前立腺癌の転帰に関連があるかどうかを調べた最初のものです。しかし今回調べたコホートでは、お茶を習慣的に飲んでいる男性の人数が少ないこと、そして、紅茶の飲用量の最大カテゴリーを1日1杯以上としていることに、注意を払わなければなりません。両者の関連を明らかにするには、今後、紅茶の摂取量がもっと高い、多人数の集団を対象として検討しなければなりません」と、著者らは述べている。

今回のコホート研究は、ワシントン州キング郡の住民で、2002年から2005年までの診断時に35歳から74歳であった、前立腺癌生存者(前立腺癌サバイバー)1,001人を対象とした。追跡調査の対象者は、前立腺癌と診断される以前の2年間における食習慣や飲料摂取について、食物摂取頻度質問票に回答した。この質問票については有効性が確認されている。さらに、人口統計学的データ(人種、年齢、収入、教育レベル、就業状況、居住地域など)や生活様式についての情報、癌の家族歴、薬剤の服用状況、前立腺癌検診の受診歴に関する聞き取り調査を受けた。

研究グループは、癌と診断されてから5年以上にわたって追跡調査(フォローアップ)を行い、前立腺癌が再発したか、進行していたかを調べた。ここで、追跡調査の対象となったのは、存命中の、調査に協力的であり、癌転移がないと診断されていた患者であった。

調査コホートに当初含まれていた1,001人の患者のうち、コーヒー摂取について回答し、追跡調査の基準にあてはまった630人が、最終的な解析の対象となった。630人のうち、61%は1日最低1杯、12%は最も大量に、すなわち1日4杯以上のコーヒーを飲んでいたことがわかった。

さらに、最初に行った食物摂取頻度質問票のデータから、894人の患者における毎日のコーヒー摂取量と前立腺癌死との関連も検討した。追跡調査期間中央値にあたる8年半以降に死亡した125人のうち、38人が前立腺癌によって死亡していた。しかし、毎日のコーヒー摂取量と前立腺癌による死亡率やそれ以外の原因による死亡率との関連は見いだせなかった。死亡例が少ないと、こういった解析には限界がある。

現在、オランダ・マーストリヒト大学の博士課程の学生で、今回の研究が行われた当時はフレッドハッチンソンがん研究センターでStanford博士が率いる前立腺研究グループの大学院生であった、筆頭著者のMilan Geybels氏は、以下のように語った。「今回の解析はこれまでのものとは異なります。というのは、前立腺癌の再発や進行について複合的な指標を用いて調べたからです。つまり、追跡調査期間における前立腺特異的抗原(前立腺腫瘍マーカー)レベルの変化や実施された二次治療の種類、そして癌検診および生検からのデータについての詳しい情報をもとにして、調査期間での腫瘍転移の有無や特定原因による死亡率を検討したのです。こういった詳細な情報から、前立腺癌の再発や進行の徴候があるかどうかを判定することができました」。

今回の追跡調査の結果は、ハーバード公衆衛生大学院による医療従事者を対象にした追跡調査研究(Harvard’s Health Professionals Follow-up Study)での結果と一致している。ハーバードの調査では、コーヒーを1日に6杯以上飲む患者は、飲まない患者に比べて、転移性もしくは致死性の前立腺癌のリスクが60%低下することが判明していた。

コーヒーに含まれる植物化学物質には抗炎症および抗酸化効果がある

今後は、コーヒーを飲むと前立腺癌リスクが低下する現象を裏付ける生化学的な機序を解明するために、さらなる研究が必要である。しかし、コーヒーには抗炎症作用、抗酸化作用、グルコース代謝の調節に関連する生理活性を示す植物化学物質が含まれることがすでに知られている。このような天然化学物質には次のようなものがある。

●カフェイン 細胞増殖を抑制し、アポトーシス(プログラム細胞死)を促進する作用を示す。これまでの研究から、基底細胞癌、グリオーマ(神経膠腫、脳および中枢神経系の癌)、卵巣癌をはじめとするいくつかの種類の癌の発症リスクを減らす可能性が見出されている。
●ジテルペン類 ジテルペン類であるカフェストールやカーウェオールは癌の増殖を抑える可能性がある。
●クロロゲン酸 カフェイン酸と共に、DNAメチル化を阻害する働きがある。DNAメチル化とは、多くの種類の癌の発生や進行に関与する生化学的な過程のひとつである。

癌の再発に対するコーヒーの抑止効果を確認するにはさらなる研究が必要

研究グループは、前立腺癌の二次予防を目的として、コーヒーもしくはコーヒーの特定成分を摂取することは推奨できないと強調している。その予防効果が、ランダム化臨床試験によって証明されたわけではないからである。さらに、コーヒーに含まれるどの成分が抗発癌性を示すのかについては議論が継続中であり、大規模な前向き研究を追加的に行うことが必須である。

コーヒーの飲用は、一部の男性に問題を引き起こすおそれさえあるとGeybels氏は言う。

「コーヒーはよく飲まれている飲料ですが、コーヒーの摂取量の増加が、場合によっては、有害な可能性があることを指摘しなければなりません。たとえば、高血圧であれば、コーヒーに含まれるカフェインの副作用に大きく影響されやすい可能性があります。また、コーヒー中の特殊な成分によって、血清コレステロール値が上昇し、冠状動脈の健康状態に脅威をもたらす可能性があります。コーヒー摂取量について質問や不安がある患者さんは、かかりつけ医に相談してみることが大切です」。
研究者らはまた、今回の研究には不足している点があることにも言及した。すなわち、診断後にコーヒーを飲む量がどのように変化していたのか、飲まれていたコーヒーがカフェインを含むものなのか、含まないものなのかについてのデータが欠けていた。さらに、コーヒーがどのように淹(い)れられたかについての情報も得られていなかったのである。コーヒーの生理活性物質の化学的特性は、エスプレッソ式、サイフォン式、ドリップ式と、その淹れ方によって影響を受ける可能性がある。

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宮島郁子 訳
大野 智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)監修
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原文

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