膀胱癌患者に対するロボット手術には大きな利点は認められない/スローンケタリング記念がんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

膀胱癌患者に対するロボット手術には大きな利点は認められない/スローンケタリング記念がんセンター

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膀胱癌患者に対するロボット手術には大きな利点は認められない/スローンケタリング記念がんセンター

2014年7月24日

ダ・ヴィンチシステムのようなロボット手術の技術はますます一般的になり、多くの癌手術に適応されている。しかし、一部の患者は手術ロボットによる手術を受けることで利益を得ているかもしれないが、どの手術において、どういった患者に対して手術ロボットが有効であるかについて専門家の見解は定まっていない。

スローンケタリング記念がんセンター(MSK)所属の研究者は、現時点で最も信頼のおける臨床試験を行い、進行膀胱癌の一般的な治療法である根治的膀胱摘除術では、ロボット支援手術が標準的開腹術と比較して患者の合併症が少ないかを研究してきた。その結果によると、手術ロボットの使用により合併症発生のリスクを低下させ、在院日数を減らすというエビデンスは認められない。

New England Journal of Medicine(NEJM)誌に本日発表されたレターによると、医師らは従来の手術でもロボット手術の技術でも同等に安全といえるが、ロボット支援手術を受けた患者の方が回復が早い、在院日数が短い、合併症が少ないということは概して認められなかった。

「ロボット手術に関しては多くの興奮すべき事実があり、説得力のある理由が存在することもある」と泌尿器科医であり共同でこの研究を指揮したBernard Bochner医師はいう。「新しい技術の導入は、医師がよりよい行為をできるようになるか、患者の転帰が改善したときに意味をなすにすぎない。もしそうでなければ、新しい手段を使うために必要とされる新しい技能を身に着けるためのコストや手間に対して疑問を呈さなければならない」。

ロボット手術とは

ロボット手術とは、いくつかの小さな切開から行う低侵襲手術である腹腔鏡手術の1つである。術者は、手術室内のコンソールに座り、ロボットと連動したアームにつながる、機器を操作する手足のコントローラーを使い、モニターを通して組織をみる。

「この技術は並外れた正確さを可能にし、ある種の手術領域においては非常に有効である。しかし、われわれのロボット手術の経験によると、必ずしもすべての外科医にとって、あるいはすべての種類の手術において適切な方法とはいえない」と泌尿器科医であり、ロボット手術の専門家で本研究の共著者であるVincent Laudone医師はいう。

研究の目的

膀胱摘除術は従来、外科医により手動の機器を使用して切開創から膀胱を除去し、泌尿器系を再建する開腹手術により行われてきた。今日まで、膀胱摘除術においてロボットと開腹を比較する多くの研究は、後ろ向きに少数の患者のデータを集めたものだった。

しかし、新たな治療法の有効性を、信頼性をもって評価する最善の方法はランダム化試験(無作為に2つの治療のうち1つを割り当てた患者を長期にわたり追跡する研究)の実施だとBochner医師はいう。

研究の方法

根治的膀胱摘除術と尿路変向術、つまり膀胱を除去し、尿流経路を外科的に変更することを予定している膀胱癌患者がこの研究の対象となった。この試験は118人の患者を登録し、無作為にロボット手術または開腹術に割り当てた。すべての手術は、豊富な知識を持ち、開腹またはロボットによる膀胱摘除術に関して10年以上の経験があるMSK所属の医師によって行われた。

研究者はその後90日間の追跡調査を行い、在院日数、回復期間、感染や腸機能回復の遅延などのさまざまな術後合併症の有無のデータを集めた。「われわれはこの研究を、ロボットが患者にとって手術を容易にすることを示すような何らかの改善点を転帰から見出せるように設計した」と、Bochner医師は説明する。「これまでの経験に基づきわれわれは改善点があることを期待していた。この手術を必要とする多くの人々は他に医学的な問題を抱えており、大手術後に回復することは困難なことがしばしばあった」。

研究結果

しかし、研究者によるとロボット支援手術を受けた患者の転帰に大幅な改善はみられなかった。術後の合併症に関しても、ロボット手術と開腹手術のグループで有意差はみられず、在院日数はほぼ同等で、平均して8日であった。唯一認められた有意差は、ロボット手術は概して長時間を要するが、出血が少ないということだ。

「ロボット手術により患者の回復が改善するというわれわれの期待に反して、膀胱摘除術をロボットを用いて行うことに明らかな利点はないという最高水準のエビデンスが示された」と、Bochner医師はいう。しかし、研究者は2つの手術の間にみられたわずかな相違を無視することはできないことにも言及している。

正当化できない医療費

Bochner医師は、開腹手術に比べてロボット手術は費用がかかるということを考えると、今回の結果は特に厳しいものであると付け加えた。ある研究によると、価格差は11パーセントで、それは主にロボット設備と機器の購入および維持費である。

NEJMの報告によると、MSKの研究者は、新しい手術手技を導入する前にランダム化試験を実施する必要性を強調した。それは、安全性を強化し、質を維持するだけでなく、専門家によれば、すでに維持不能になっており対処しなければならない米国における癌治療の費用増加をコントロールするためにも有効であろう。事実、米国再生再投資法会議の要請により米国医学研究所が発行した2009年のレポートでは、一般的な手術手技におけるロボット手術と従来の手術の費用対効果の比較を求めている。

患者にとっての意義

「われわれの研究結果によれば、開腹手術、ロボット手術ともに安全かつ効果的な治療を提供していると思われる」と、Bochner医師はいう。しかしながら、明確な利点を示すことができなかったので、MSKにおいて膀胱摘除術を行う必要のある膀胱癌患者に対しては、希望があればロボット手術という選択肢も提示はするが、開腹手術を推奨しつづけるということにも言及した。

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池上紀子 訳
榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院) 監修
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原文

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