イブルチニブはオファツムマブと比較し、前治療歴のある慢性リンパ性白血病(CLL)の生存期間を改善する/NCI臨床試験結果 | 海外がん医療情報リファレンス

イブルチニブはオファツムマブと比較し、前治療歴のある慢性リンパ性白血病(CLL)の生存期間を改善する/NCI臨床試験結果

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イブルチニブはオファツムマブと比較し、前治療歴のある慢性リンパ性白血病(CLL)の生存期間を改善する/NCI臨床試験結果

2014年6月27日掲載

要約

イブルチニブ(Imbruvica)で治療を受けた再発あるいは難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)患者または小リンパ球性白血病(SLL)の患者に対する国際ランダム化第3相臨床試験において、イブルチニブ(Imbruvica)投与を受けた患者は、オファツムマブ (Arzerra)投与を受けた患者より、疾患が悪化することなくより長く生存しました(無増悪生存期間が長かった)。イブルチニブ投与を受けた患者は、オファツムマブ投与を受けた患者より、生存期間(全生存率)も長く、治療に対する臨床反応を示す傾向がありました。

出典

2014年5月31日 New England Journal of Medicine(論文を参照)

背景

慢性リンパ性白血病(CLL)は米国成人において最も多いタイプの白血病であり、診断時に高齢の場合が多くみられます。CLL患者では、異常な白血球(リンパ球、厳密にいえば B細胞)が通常より高いレベルで体内にて生成されます。疾患が悪化(進行)すると、これらの細胞が制御不能に陥り、血液中、骨髄中、肝臓内、脾臓内またはリンパ節内で正常な細胞を押しのけるように増殖します。大部分の癌細胞が血液中か骨髄中に存在している時、疾患はCLL(慢性リンパ性白血病)と呼ばれるのに対し、疾患がリンパ節や骨髄におよぶ際はSLL(小リンパ球性白血病)と呼ばれます。

CLLは通常進行が遅い疾患です。疾患が早い段階で診断された患者は症状がほとんどなく、あったとしてもわずかで、治療を必要とするほど疾患が進行するまでは定期的に経過観察が行われます。しかし、治療を受けたほとんどの患者が、最終的にCLLを再発します。再発あるいは難治性CLLあるいはSLLの患者にとって治療の選択肢は限られています。

イブルチニブまたはオファツムマブは、再発あるいは難治性CLL患者の治療のため米国食品医薬品局(FDA)によって承認されています。これら2つの薬剤の作用点はそれぞれ異なります。オファツムマブはCLL/SLL細胞上のCD20抗原に結合するモノクローナル抗体です。この結合によって直接的に癌細胞死を誘発します。また、癌細胞を破壊するために免疫系を働かせる引き金にもなるのです。イブルチニブはブルトン型チロシンキナーゼと呼ばれるタンパク質の働きを阻害します。このタンパク質は、B細胞の成長や生存のため重要となるB細胞受容体によって制御を受けている重要なシグナル経路の一部に関与しています。

試験

ランダム化非盲検RESONATE試験を行うため、前治療後に再発あるいは前治療に効果を示さなかったCLL患者(SLL患者18人)391人が登録されました。試験の参加者は、1回以上の前治療歴があり、プリンアナログと呼ばれる化学療法剤治療の対象ではない米国、欧州、オーストラリアの患者が対象となりました。

患者は、1日1回 イブルチニブ経口投与か、週1回24週間点滴によるオファツムマブ静脈内投与を受けるようランダムに割り付けられました。オファツムマブ群に割り付けられて試験中に疾患の悪化を示した患者は、イブルチニブへのクロスオーバーを可能としました。患者の大多数は、疾患が進行した状態でありおよそ半数が3回以上の前治療歴がありました。

試験の主要評価項目は無増悪生存期間とし、副次評価項目は全生存率及び奏効率としました。本試験はオハイオ州立大学総合がんセンターの医師であり、研究の筆頭著者であるJohn Byrd氏により指導され、Pharmacyclics社とJanssen社の資金提供を受けました。

結果

試験の追跡期間中央値は9.4カ月でした。イブルチニブ投与を受けた患者では、疾患の増悪や死亡の転帰に至った例が半数未満であったのに対し、オファツムマブ群では8.1カ月後の時点で疾患の増悪や死亡の転帰に至った例が半数ありました。結果としてイブルチニブ投与群は、オファツムマブ群と比較して疾患の進行あるいは死亡のリスクが78%減少しました。

12カ月後の追跡時に、イブルチニブ投与群患者の90%は生存していたのに対し、オファツムマブ群では81%でした。イブルチニブ投与群の死亡リスクは57%減少しました。

臨床的特徴や分子生物学的特徴に関わらず、イブルチニブ群の生存転帰は良好でした。具体的には、プリンアナログ療法で反応がなかったケースや、17番染色体の特異的欠失を伴う腫瘍のような場合においてもイブルチニブの効果は良好でした。

独立した審査組織による評価では、イブルチニブ群の奏効率はオファツムマブ群に比べてはるかに高く、43%に対し4%でした。

分析の最終段階で、疾患の進行がみられたオファツムマブ群患者の57人をクロスオーバーとしイブルチニブ投与を開始しました。

イブルチニブ群患者で頻度の高かった副作用は下痢、倦怠感、発熱、吐き気でした。グレード3以上の有害事象が1つ以上認められた患者は、オファツムマブ群よりイブルチニブ群の方に多く認められました(それぞれ47%、53%)。オファツムマブ群患者よりイブルチニブ投与群の患者で多かった有害事象(グレード3以上)は、下痢(4%対2%)、頻脈を含む不整脈(3%対0%)でした。グレードに関わらず出血に関わる有害事象は、オファツムマブ群と比べイブルチニブにより多くみられました(12%対44%)。霧視、白内障など眼の症状もイブルチニブ投与を受けている患者により多くみられた、と著者は報告しています。

制限事項

RESONATE試験の奏効率を割り出すのは、いくつかの要因があるため容易ではない、と米国癌研究所における白血病またはリンパ腫の臨床試験を指導しているWyndham Wilson医師は説明しました。

イブルチニブの場合、その薬理作用がリンパ球増加症(血中のリンパ球数の増加)の原因となることが多いが、大抵の場合数か月以内で収まる、と同氏は説明します。リンパ球増加症は通常は疾患の進行を意味しますが、イブルチニブ投与患者におけるリンパ球の増多は、必ずしも疾患が悪化したということにはなりません。実際に、イブルチニブ投与患者の20%においてリンパ球増加症と同時に、脾腫の改善やリンパ節腫張の改善といった薬剤に対する効果がみられます。試験の責任者は、これらの患者を考慮に入れると、イブルチニブ群の奏効率について実質的には63%であったとしています。

また、奏効率の解析を難しくしていることの背景に、FDAからの承認へと導いた臨床試験でのオファツムマブ奏効率に比べ、今回のオファツムマブ投与の患者は実質的に奏効率が低かったということがあります。RESONATE試験責任者が述べているのは、この相違は患者の反応を評価するため、それ以前の試験では用いていなかった一連のCTスキャンが影響している可能性があるということです。CLL患者において、患者のリンパ節や脾臓の縮小の有無を評価することにより、治療反応性が疑わしい事例に対し、確実な判断をするためにCTスキャンが、現在一般的に使用されています。

平均して、イブルチニブ投与の患者群は、オファツムマブ投与患者より3ヶ月以上長く投与を受けていたと著者らは指摘します。白内障の発生率が、オファツムマブ投与を受けている患者の1%に対し、イブルチニブ投与の患者は3%となっていることは、「注視すべきであり(イブルチニブへの)より長い曝露がリスク上昇に関与しているかもしれません」と著者らは言及しています。イブルチニブが関与した心房細動の発生率が高くなっていることも現在調査中である、と続けました。

コメント

RESONATE試験は、「イブルチニブの無増悪生存期間についての非常に顕著な優位性を示しただけでなく、比較的重要な全生存期間の優位性も示しています」とWilson 医師は語っています。

「私見ですが、イブルチニブや、B細胞受容体シグナル伝達に影響を及ぼす他の薬剤は、リツキシマブ以来、B細胞リンパ腫に対して必要とされる、おそらく最も重要な薬剤だということです。それら薬剤の開発は、B細胞リンパ腫の治療、またこの場合はCLL治療において、本当に画期的な出来事であることを意味すると考えます」。

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滝川俊和 訳
佐々木裕哉(血液内科、血液病理/久留米大学病院)監修
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原文

 

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