ワクチンによる膵臓癌の「再プログラム化」で免疫療法の奏効改善/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

ワクチンによる膵臓癌の「再プログラム化」で免疫療法の奏効改善/ジョンズホプキンス大学

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ワクチンによる膵臓癌の「再プログラム化」で免疫療法の奏効改善/ジョンズホプキンス大学

2014年6月18日

ジョンズホプキンスキンメルがんセンターの研究者らは、膵臓腫瘍内で免疫細胞結節形成を誘発するワクチンを開発し、試験を実施した。このワクチンは難治性癌である膵臓癌を本質的に再プログラム化し、免疫療法への脆弱性を亢進するものである。

ジョンズホプキンスの研究チームによる研究(Cancer Immunology Research誌6月18日号掲載)で、膵臓癌の中で最も多い膵管腺癌患者39人を対象としてこのワクチンを検証した。膵管腺癌は標準化学療法に対して抵抗性を示し、致死率が高い疾患であり、診断から5年後の患者生存率は5%未満である。

膵管腺癌は通常、その癌細胞に対して免疫反応を誘発することはない。研究チームは、ジョンズホプキンスのElizabeth Jaffee医師が開発したワクチンを用いて腫瘍を「再プログラム化」し、抗癌作用のある免疫系T細胞を腫瘍に組み入れることに成功した。

このワクチンGVAXは、患者の腫瘍に免疫細胞を取り込むように改変された照射腫瘍細胞を成分とする。今回の研究では、GVAXを免疫調整剤シクロホスファミドと組み合わせて試験を実施した。シクロホスファミドは、癌を破壊するT細胞の活性を抑制する主な免疫細胞であるTreg(制御性T細胞)を標的とする。

ジョンズホプキンス大学医学部Dana and Albert “Cubby” Broccoli 腫瘍科教授であるJaffee医師によれば、今回の再プログラム化は、他の癌種の抗癌剤として用いられている免疫調整剤に対する膵腫瘍の脆弱性を亢進させるように設計しているという。

Jaffee医師と、その同僚のLei  Zheng医師によれば、ワクチンGVAXはさまざまな種類の腫瘍を改変して、免疫療法の効果が一層高まるような状態にする可能性があるという。

たとえば、同医師らは特定のメラノーマについて、T細胞を標的とする免疫療法を検証したところ、本来の特性として免疫系反応を誘発する癌のうち、10~30%で奏効がみられたが、免疫療法がほとんど奏効しないか、まったく奏効しない残りの70%の患者については選択肢がほとんどないということである。

本研究によれば、ワクチンGVAXは患者の腫瘍構造内に三次リンパ集合体と呼ばれる構造体を形成し、それが免疫細胞の活性化と移動の調整を助けることがわかった。Zheng医師(ジョンズホプキンス大学医学部腫瘍・外科学助教)は次のように話す。「この集合体はワクチンを投与した患者39人のうち33人で発現したが、驚くほど整然とした構造で、自然に存在する同種類の腫瘍では通常みられないものであった。このことから、腫瘍内でリンパ球構造の有意な再プログラム化が起きたと推測される」。

Jaffee医師は次のように話す。「この集合体は腫瘍内の免疫学的バランスを変えることができる。つまり、Tregの働きを弱めることによって、腫瘍を攻撃できるT細胞を活性化する環境を整えるのである。そして、そのT細胞は、そうした所定の腫瘍環境において癌タンパク質を認識するようになると思われる」。

ワクチンGVAXとその結果生じるリンパ集合体は、Tregのように抗癌免疫細胞を抑止する複数の分子構造の活動を促進した。それは悪いことのように聞こえるかもしれないが、実際には、腫瘍内で免疫調整剤の新たな標的が増えることを意味するとZheng医師は説明する。

研究者らは、膵管腺癌患者に関する次の研究として、ワクチンGVAX投与後に、さらに免疫が活性化するように、免疫抑制分子の一種であるPD-1に対する抗体とGVAXの組み合わせを検証する予定である。「私たちは、免疫療法の組み合わせによって最大の効果が得られると考える」とZheng医師は話す。

本研究に参加した他のジョンズホプキンス研究者は以下のとおり:Eric R. Lutz, Annie A. Wu, Elaine Bigelow, Rajni Sharma, Guanglan Mo, Kevin Soares, Sara Solt, Alvin Dorman, Anthony Wamwea, Allison Yager, Daniel Laheru, Christopher L. Wolfgang, Ralph H. Hruban, and Robert Anders。シンシナチ大学医学部Jiang Wang氏も本研究の共著者である。Jaffee氏はジョンズホプキンス大学Skip Viragh Pancreas Cancer Clinical Care and Research Centerのco-directorである。

本研究は、以下の資金提供を受けた:米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立癌研究所(NCI)(K23 CA148964-01, P50 CA062924)、ジョンズホプキンス大学医学部Clinical Science Award、米国臨床腫瘍学会(ASCO)Young Investigator Award、ジョンズホプキンス大学のViragh FoundationおよびSkip Viragh Pancreatic Cancer Center、 National Pancreas Foundation、 Lefkofsky Family Foundation、 Lustgarten Foundation、 Sol Goldman Pancreatic Cancer Center。

Aduro BioTech社と、ジョンズホプキンス大学およびJaffee氏との間で締結したライセンス契約に基づいて、同大学は当ワクチン製品売上に関するマイルストーンペイメント(目的達成報奨金)およびロイヤルティの権利を有する。

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山田登志子 訳
大野 智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)監修
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原文

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