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エンザルタミドは転移性前立腺癌患者の生存を改善する/NCI臨床試験結果

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エンザルタミドは転移性前立腺癌患者の生存を改善する/NCI臨床試験結果

2014年6月27日掲載

要約

国際的無作為化第3相臨床試験において、ホルモン療法エンザルタミド(イクスタンジ)により、アンドロゲン除去療法施行中に増悪した転移性前立腺癌男性の生存期間が延長しました。本試験の参加者は化学療法を受けていませんでした。

出典

2014年6月1日New England Journal of Medicine(論文参照)

背景

前立腺癌発生の初期段階では、癌は比較的高い濃度の男性ホルモン(アンドロゲン)により増殖します。精巣はアンドロゲンの主要な産生源であり、精巣による男性ホルモンの産生を停止させる治療法は、ホルモン療法またはアンドロゲン除去療法(ADT)として知られており、アンドロゲン感受性前立腺癌の一般的な治療法です。しかし、ほとんどの前立腺癌はいずれ去勢抵抗性を示すようになる、つまり血中のアンドロゲン濃度が非常に低くても増殖できるようになります。ADTは副腎や前立腺癌細胞そのものによる少量のアンドロゲンの産生まで除去することはなく、去勢抵抗性前立腺癌が成長するには、このわずかな量のアンドロゲンで十分なのです。

エンザルタミドは去勢抵抗性前立腺癌がアンドロゲンにより促進される増殖を防止するよう開発された、ホルモン療法のひとつです。本剤は前立腺癌細胞上でアンドロゲンがアンドロゲン受容体と結合するのを阻害することで効果を発揮します。

去勢抵抗性前立腺癌の治療にはドセタキセル(タキソテール)による化学療法があります。エンザルタミドはFDAにより、化学療法が奏効しなくなった転移性去勢抵抗性前立腺癌の男性の治療に認可されています。しかし、既往疾患があったり、副作用に耐容性のない多くの男性にとって、化学療法は治療選択肢とはなりえません。

試験

PREVAIL試験はランダム化二重盲検試験であり、軽度の症状がある、または症状がなく、化学療法歴のない転移性去勢抵抗性前立腺癌患者1717人が登録されました。試験には北米、ヨーロッパ、アジアおよびオーストラリアの患者が含まれていました。

患者は1日1回、エンザルタミド160mgを服用する群またはプラセボを服用する群に無作為に割り付けられました。

主要評価項目は全生存期間(OS:無作為割り付けからあらゆる原因による死亡までの期間)および画像診断による無増悪生存期間(PFS:無作為割り付けから死亡まで、または定期的に実施する画像解析により初めて増悪を認めるまでの期間)でした。副次的評価項目は化学療法を開始するまでの期間、および最初の骨関連事象までの期間(例えば骨折、脊髄圧迫または骨関連症状治療のための放射線療法の必要性など)などでした。

2013年10月、エンザルタミドを服用する男性で統計的に有意な死亡リスクの減少を示す中間解析が報告されたことに基づいて、独立データ安全性およびモニタリング委員会は、試験を早期に中止し、プラセボ群に割り付けられた男性がエンザルタミドの服用を開始することを許可するよう勧告しました。

本臨床試験はOregon Health & Science UniversityのTomasz Beer医学博士が主導し、エンザルタミドの製造および販売会社であるMedivation社およびAstellas Pharma社による資金の提供を受けました。

結果

経過観察12カ月の時点で、画像診断による無増悪生存率はエンザルタミド群では65%、プラセボ群ではわずかに14%でした。エンザルタミド群では画像診断により増悪が示された患者数が少なかったため,画像診断による無増悪生存期間中央値に到達しませんでした。一方、プラセボ群の画像診断による無増悪生存期間中央値は3.9カ月でした。

中間解析(中央値でおよそ22カ月の経過観察後)では、エンザルタミド群では28%、一方、プラセボ群では35%の患者が死亡しました。エンザルタミドを投与された患者ではプラセボを投与された患者と比較し、死亡リスクは29%低下しました。

エンザルタミド群では、画像診断による無増悪生存と全生存の改善は、臓器転移を有する患者を含め、すべてのサブグループの患者に認められましたが、臓器転移を有する患者は予後がより不良であるため、化学療法歴のない前立腺癌患者を対象とした他の試験では除外されていました。

著者らの報告では、エンザルタミドは事前に規定したすべての副次的評価項目に関して有用性を示し、化学療法を開始するまでの時間の中央値はおよそ17カ月延長し、最初の骨関連事象のリスクは減少しました。

前立腺癌が増悪した後、両群で多くの患者が追加治療を受けており、その割合はエンザルタミド群では40%、プラセボ群では70%でした。最も一般的な追加治療はドセタキセルとアビラテロン(ザイティガ)でした。(別のホルモン療法であるアビラテロンは、精巣と同様に副腎と前立腺癌細胞によるテストステロンの産生も防止します)

エンザルタミドを服用した患者で最もよくみられた副作用は疲労、便秘、および背部痛と関節痛でした。高血圧はエンザルタミド群で最もよくみられた重篤な(グレード3以上)副作用でした。

エンザルタミドはプラセボと比較して、前立腺癌男性の自己記入式健康関連QOL調査票によって評価されるQOLの低下を遅らせることができました。

制限事項

試験に参加した多くの患者は、前立腺癌が増悪した後には生存を改善することが証明されている治療を受けるようになるという事実があるため、エンザルタミドの全生存に対する効果を評価することはとても複雑な問題だとNCIの癌診断・治療部門(Division of Cancer Treatment and Diagnosis)のBhupinder Mann医師( M.B.B.S.)は述べています。

将来、ドセタキセルの投与を受けていない去勢抵抗性前立腺癌患者人口はより少なくなるでしょうとMann医師は指摘しました。なぜなら、最近報告されたNCIの後援による大規模臨床試験によると、アンドロゲン感受性である前立腺癌患者では、ADTの初期にドセタキセルによる治療を行うと、全生存は大幅に改善することが示されたからです。その試験で見られた生存率の改善は、より広範な転移のある患者に主に認められました。

「より多くの患者が早い時期からドセタキセルの投与を受けるようになるので、PREVAL試験の結果をこうした患者に直接適用することはありません」と博士は述べました。

コメント

転移性前立腺癌のある男性患者は、化学療法により全生存と無増悪生存が改善すると著者らは記述しました。しかし、「多くの患者はそもそも、既存の疾患があったり、関連する毒性作用のため、こうした治療を受けることはありません。従って、効果的で使いやすく、より毒性の低い治療が必要なのです」と述べています。

もしFDAがエンザルタミドにこの適応を認可するなら、本剤により「化学療法を受けていない去勢抵抗性前立腺癌患者にもうひとつの選択肢がもたらされることになる」ということにMann医師は同意しています。

エンザルタミドが参加者自身が評価したQOLの低下を遅らせたという事実は、「治療効果が、患者自身の受ける恩恵へつながった」ことを示唆するものであると著者らは述べています。

 

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小縣正幸 訳
榎本裕 (泌尿器科/三井記念病院) 監修
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原文

 

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