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稀少癌と細胞内酸素欠乏につながりが認められた

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稀少癌と細胞内酸素欠乏につながりが認められた

稀少癌(一部の消化管間質腫瘍(GIST)と細胞内酸素欠乏との関連を発見−NIH
NCIニュース 2010年12月21日

米国国立衛生研究所(NIH)の研究者は、消化管のまれな癌が、細胞への酸素供給に関与する酵素の機能不全と関連していることを発見した。

その酵素の機能不全とは一部の症例でしか認められていないが、酵素の生成に必要な情報を含む遺伝子異常が原因であった。その他の症例ではその様な遺伝子異常は認められなかったが、何らかの遺伝子が原因であると考えられている。

消化管間質腫瘍(GIST)は食道、胃、腸の腫瘍である。消化管の筋肉を制御する神経系細胞から発生する。

この10年で、成人に発症するGISTの多くで、KITおよびPDGFRAと呼ばれる2つの遺伝子に変異があることが発見された。この遺伝子変異のあるGISTでは、症例の多くで薬剤のイマチニブ(グリベック)が有効である。残念ながら、小児が発症するGISTの大部分は、KITにもPDGFRAにも変異がないため、イマチニブは治療効果がない。小児性GISTは非常にまれであり、年間100万人あたり1人に満たない。

現在、このようなKITやPDGFRAに変異がない腫瘍を使ってGISTの遺伝子レベルでの原因特定を目指して研究が行われている。34人の患者から、コハク酸脱水素酵素に関する遺伝子に変異があるGISTの検体が集められた。コハク酸脱水素酵素とは細胞内に酸素を取り込み細胞自身のエネルギーを作るための酵素である。コハク酸脱水素酵素の遺伝子に当たりをつけた理由は、GISTや傍神経節腫(GISTと同様に神経細胞由来の腫瘍)を発症するCarney Stratakis症候群というまれな疾患の患者において、コハク酸脱水素酵素の変異が認められることが過去の研究で判明しているためである。コハク酸脱水素酵素とその構成パーツ*1

研究対象のGIST患者の12%において、コハク酸脱水素酵素のパーツ、すなわちサブユニットの生成に必要な情報を含む遺伝子に変異が認められた。具体的には同酵素のBとCのサブユニットにおける欠損であった。それ以外の患者ではこのような変異は認められなかったものの、腫瘍組織内のコハク酸脱水素酵素は機能しておらず、細胞呼吸は阻害されていたようである。研究者は、未知の変異が同酵素の機能不全の原因だと考えているとみられる。

「この疾患の根本原因を細胞呼吸までたどることで、GIST腫瘍の形成過程について有望な手掛かりが得られました」とNIHの Eunice Kennedy Shriver米国国立小児保健発達研究所(NICHD) 所内研究部門の部長代理であり、Carney Stratakis症候群の名前の由来でもある首席著者Constantine A. Stratakis医師(理学博士)は述べた。「この発見により、従来の療法が奏効しなかったタイプのGISTに対する治療法開発につながるかもしれません」

主著者は、ダナ・ファーバー癌研究所およびボストン小児病院所属のKatherine A. Janeway医師とStratakis博士の協力者である米国国立癌研究所(NCI)のSu Young Kim医学博士、2人の所属先およびマイアミ、サン・アントニオ、ボストン、ニューヨーク、フランス、オランダ、オーストリア、アイルランド在住の研究者、NIHの小児GIST・野生型GISTクリニック(Pediatric and Wild-Type GIST Clinic)*2のスタッフである。この研究はNIHの稀少疾患対策室、米国国立癌研究所、 NICHD、 GIST癌研究財団、St. Baldrick財団、Voelcker財団研究者賞、アイルランド医学研究委員会、ライフ・ラフト・グループ(Life Raft Group)、GIST研究のためのShuman Family財団、Leduq財団、およびアイルランド政府から一部助成を受けている。

研究結果はNational Academy of Sciences紀要電子版で発表された。

「体内の健康な細胞はエネルギーを得るために酸素を必要とします。それにより細胞は成長し、増殖するのです」とStratakis博士は説明する。「これまでの研究で、腫瘍は正常細胞と酸素の使い方が異なることが分かっています」。

「私達の次の目標は、正常細胞における細胞呼吸に関与している他の遺伝子を同定することです。そしてそこの遺伝子変異が癌の中で何らかの役割を果たしていないかを突き止めるのです」とStratakis博士は述べた。

この研究は、GISTとその原因について理解を深め、新たな治療法を推進するため設立されたNIH の小児GISTおよび野生型GISTクリニックで行われた。同クリニックはメリーランド州ベセスダのNIH構内にあり、NICHDとNCIの支援を受けている。

コハク酸脱水素酵素は酸素を処理し、エネルギーを細胞に供給する。この酵素は、細胞にエネルギーを供給する細胞構造であるミトコンドリアの外膜に包埋されている。酵素はパーツ、すなわちサブユニットから成る。GIST患者では、酵素のBおよびCのサブユニットに変異がある場合もあれば、未発見の別の変異がおそらく原因となって酵素が機能不全に陥っている場合もある。
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丸野 有利子 訳
大渕 俊朗(呼吸器・乳腺内分泌・小児外科/福岡大学医学部)監修
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原文

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