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ある型のリンパ腫の治療標的となりうる遺伝子が同定された

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ある型のリンパ腫の治療標的となりうる遺伝子が同定された

NIHの研究者らがある型のリンパ腫治療の標的となりうる遺伝子を同定
NCIニュース 2010年12月22日

ある特定のリンパ腫患者の治癒率は今のところ低いが、その標的治療につながる可能性のある遺伝子変異が同定された。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫として知られる癌の一種にたいへん多くみられる遺伝子の異常は、MYD88遺伝子の変異であることがわかった。MYD88は、侵入してくる微生物に対する正常な免疫応答に不可欠なタンパク質をコードしている。MYD88タンパク質配列中のある変異により、制御できない細胞内シグナル伝達が起こり、それが癌細胞の生存につながっている可能性が新たな実験によって示されている。この研究は米国国立衛生研究所(NIH)の一機関である国立癌研究所(NCI)の研究者が主導し、2010年12月22日付のNature誌電子版で発表された。

各遺伝子の変異、あるいはより頻繁にみられる変異の組み合わせにより、リンパ腫などの癌が発生している可能性がある。リンパ腫は感染と戦う白血球から生じる血液の癌である。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は非ホジキンリンパ腫の一種で、この疾患の形態として最もよくみられる。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫には3種の亜型があるが、それらのうち活性化B細胞様(ABC)型の3年生存率は40%と最も悪い。

NCI癌研究センター代謝系部門(Metabolism Branch)のDr. Louis M. Staudt氏らは、ABC型の発生に関与しているタンパク質同定の研究を行ってきたが、それはこれらのタンパク質はABC型リンパ腫の患者の治療法を向上させるための標的となる可能性があるからである。これらの重要なタンパク質を同定するために、何千もの遺伝子を不活性化する遺伝子スクリーニングを行った。ABCリンパ腫細胞が死滅するのは、MYD88とIRAK1をコードする遺伝子を不活性化したときであるとわかった。IRAK1はMYD88とともに働くもう一つの細胞シグナル伝達タンパク質である。

次に研究者らは、なぜABCリンパ腫細胞がそのようにMYD88に依存しているのかを説明できる遺伝子変異を探した。リンパ腫生検の検体382例のMYD88配列を調べた結果、ABCリンパ腫の検体の29%に同一の変異があり、それがMYD88タンパク質の一つのアミノ酸を変化させていることがわかったが、この変異は他の亜型のリンパ腫ではまれであるか存在しなかった。MYD88の変異体によってABCリンパ腫細胞の生存は維持されるが、変異のない場合は維持されず、MYD88遺伝子の変異はABC型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の発生に重要な役割を果たしていることが示唆された。

MYD88がどのようにABCリンパ腫細胞の生存を促進するかを解明するため、研究者らはリンパ腫細胞においてMYD88と相互作用するタンパク質を調べた。MYD88の変異型は、遺伝子スクリーニングで同定されたIRAK1および関連するタンパク質IRAK4に含まれるタンパク質複合体を自発的に形成した。このタンパク質複合体では、IRAK4はIRAK1を変化させる酵素として機能したが、それはMYD88タンパク質変異体がリンパ腫細胞の生存を促進するのに必要であった。研究者らによれば、製薬会社が炎症性および自己免疫疾患用としてIRAK4阻害剤を開発中であるため、この知見はすぐに治療に結びつくかもしれない。

「この研究の結果は、MYD88シグナル伝達に依存し、そのためIRAK4のみを標的にする治療法、またはこのリンパ腫細胞の生存を維持させる他の調節経路を標的とする薬剤と組み合わせる治療法によって治療効果を得られる可能性があるABC型びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者を同定することを可能にするものであると考えています」とStaudt氏は語った。

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鈴木 久美子 訳
吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院)監修
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原文

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