生存期間を延長する卵巣癌IP化学療法の利用不足が明らかに/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

生存期間を延長する卵巣癌IP化学療法の利用不足が明らかに/ダナファーバー癌研究所

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生存期間を延長する卵巣癌IP化学療法の利用不足が明らかに/ダナファーバー癌研究所

2014年5月29日

転移していない(原発の)卵巣癌患者は、化学療法を標準的な静脈内点滴ではなく、腹腔内投与で行うことで、生存期間が平均で16カ月延長する。しかし腹腔内投与が適する患者でこうした治療を受けているのは少数派にとどまることが、ダナファーバー癌研究所の研究報告で明らかになった。

国立癌研究所が腹腔内投与(IP)化学療法を新たな標準療法に推奨するという稀なアラート(注意情報)を2006年に発表した後、IP化学療法の利用は急上昇したとダナファーバーのSuzan F. Smith婦人科がんセンターのAlexi Wright腫瘍内科医は話した。同医師は、2014年5月31日にシカゴで行われる米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で、この調査結果をポスター発表する予定。

しかし2007年に適格な卵巣癌患者へのIP化学療法の利用が2005年の15%から50%に増えた後、同療法の利用がそれ以上は増えず、むしろ若干下がったようだとWright医師は報告した。同医師の研究は、6つの総合がんセンターにおける臨床の場で、医師がIP化学療法を使用しているかどうかを調査した初めての研究である。

際立ったのは、医師がIP療法を使っている場合でも、しばしば化学療法の内容に変更が加えられている例が目立ち、臨床試験で高い有効性が証明された化学療法が実施されていないことが示唆されたことだった。患者の40%以上で、医師が投与量を減らしたり、より毒性の低い薬剤に変更したりしていたと、Wright医師は報告した。同医師は、画期的な結果を示したIP化学療法の臨床試験で多くの患者が治療を完遂できなかったことをあげ、「腫瘍医は患者が楽なように薬剤の投与量を減らしたのかも知れません」と話した。「しかしながら、過去には減量した化学療法が生存率の低下を招いたこともあり、これは患者を別のリスクにさらすことになります」。

驚いたことに、標準以下のIP化学療法を行った場合でも、IP化学療法を受けた患者は静脈点滴による化学療法を受けた患者より生存期間が長かった。IP化学療法の5年生存率は62.5%だったのに対し、静脈点滴による化学療法は45.0%だった。

IP化学療法はより毒性が強く、経験ある外科医と支持療法の治療医が必要なため、全米総合がんネットワーク(NCCN)に属するほどの大規模がんセンターで実施される場合が多いと、Wright医師は言う。しかし6つのNCCNセンターでIP化学療法の適用となる患者に対する使用を調査したところ、がんセンターによって使用率は16%から71%と大きな開きがあることがわかった。

「施設によって、これほど大きな差があることに驚きました」と、Wright医師は述べた。「各がんセンターで患者の希望にこれほど差があるとは考えにくいです。むしろ、医師の好みあるいは当該施設の治療方針の偏りが、患者にどのような治療を提供するか決めている可能性もあります。この治療には大きな生存利益が伴うので、この結果は問題です」。

本研究はIP化学療法使用のばらつきに影響した要因を特定、測定するようには計画されていなかったため、Wright医師はこうした疑問に答えるため、さらなる研究を求めた。

本研究の対象となった患者は3期の卵巣癌患者。これは癌が卵巣を超えて広がっているが、肝臓実質または肺には達していない段階である。

推奨される治療内容は、手術による完全切除、または1センチメートル以上の腫瘍をすべて切除する「腫瘍減量手術」。その後、患者はシスプラチンとパクリタキセルの2剤を規定用量で、18週間にわたり6サイクルのIP化学療法を受ける。薬剤は手術で腹膜に埋め込まれたカテーテルを通して、腹腔内臓器は包む膜に保護されたまま、腹腔液に満たされた腹腔内のスペースに投与される。

報告によれば、この治療を受けた患者は埋め込まれたカテーテルに関連する合併症を起こしがちである。また脱水症、血球数の低下や貧血といった副作用が起こる割合が2倍であり、こうした理由から治療を中止する率も静脈点滴化学療法の2倍だった。

「そうであっても、臨床でのIP化学療法は生存率の顕著な改善につながり、化学療法薬剤の投与経路が重要であることを示唆しています」と、Wright医師は述べた。

ASCOで発表されるダナファーバーの研究についてより詳しい情報は、www.dana-farber.org/ascoを参照してください。

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片瀬ケイ 訳
喜多川亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)監修
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原文

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