ソラフェニブは一部の転移性甲状腺癌患者の無増悪生存期間(PFS)を改善する/NCI臨床試験結果 | 海外がん医療情報リファレンス

ソラフェニブは一部の転移性甲状腺癌患者の無増悪生存期間(PFS)を改善する/NCI臨床試験結果

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ソラフェニブは一部の転移性甲状腺癌患者の無増悪生存期間(PFS)を改善する/NCI臨床試験結果

2014年5月27日掲載

要約

国際第3相試験の結果から、放射性ヨウ素治療がもはや奏効しない局所進行性あるいは転移性分化型甲状腺癌患者に、ソラフェニブ(ネクサバール)が有効である可能性が示されました。ソラフェニブ治療を受けた患者は、プラセボを投与された患者より、癌の進行がない状態での生存期間(無増悪生存期間/PFS)が延長しました。

出典

2014年4月24日Lancet誌(論文抄録参照)

背景

甲状腺癌の約95 %が、甲状腺の濾胞細胞から発生する乳頭型または濾胞型のいずれかに分類されます。これらの腫瘍細胞は十分に分化しており(正常な甲状腺細胞のようにみえる) 、稀にみられる高悪性度の甲状腺髄様癌や未分化型甲状腺癌に比べてゆっくりと増殖する傾向にあります。乳頭癌および濾胞癌は、どちらも十分に治療が可能であると考えられており、手術や放射性ヨウ素療法といった標準治療によく反応します。

しかしながら、分化型甲状腺癌患者のごく一部は進行して放射性ヨウ素療法が奏効しない転移性疾患(難治性疾患)になります。放射性ヨウ素抵抗性の転移性癌を発症した患者に対する治療選択肢は非常に限られています。これらの患者の生存期間を延長させる治療法はまだ示されていません。放射性ヨウ素抵抗性の転移性癌患者のうち、診断後10年生存できるのは、わずか 10~20%に過ぎないのです。

実験室での研究から、甲状腺癌の発生および進行に関連する変化が腫瘍細胞においていくつか確認されました。それにはタンパク質(細胞増殖促進キナーゼ)の慢性的活性化を引き起こすBRAFおよびRAS遺伝子の変異や、腫瘍増殖を支えるのに必要な新たな血管形成を促進するタンパク質である血管内皮増殖因子(VEGF )、およびその受容体VEGFRの産生の増加などがあります。

ソラフェニブは、腎臓癌および肝臓癌を有する一部の患者の治療薬として食品医薬品局(FDA)によって承認された薬剤であり、VEGFRおよびB -RAFタンパク質の活性を阻害します。さらに、いくつかの初期臨床試験で、ソラフェニブが放射性ヨウ素抵抗性転移性甲状腺癌を有する患者の治療に有効である可能性が示唆されました。

試験

ランダム化二重盲検プラセボ対照DECISION試験に、事前の14カ月で癌が進行した、放射性ヨウ素抵抗性の局所進行性あるいは転移性分化型甲状腺癌を有する417人の患者が登録されました。この国際試験には、欧州、アジアおよび米国出身の乳頭癌、濾胞癌および低分化癌患者が含まれていました。

試験の参加者は1日2回のソラフェニブ400㎎経口摂取あるいはプラセボに、ランダムに割り付けられました。試験中に癌が進行したプラセボ群患者には「クロスオーバー試験」が実施され、ソラフェニブ治療を受けることができました。

この試験の主要エンドポイントは、患者が治療開始後、疾患が増悪することなく生存した期間(無増悪生存期間)であり、独立審査によって評価されました。二次エンドポイントは全生存期間と客観的奏効率でした。

この試験はペンシルベニア大学AbramsonがんセンターのMarcia Brose医学博士が主導しました。Bayer Healthcare製薬とOnyx 製薬が本試験に資金供給しました。

結果

プラセボ群の患者に比べ、ソラフェニブ治療を受けた患者では無増悪生存期間が統計的に有意に延長しており、プラセボ群の5.8カ月に対して10.8カ月でした。この無増悪生存期間の延長は、患者の年齢や疾患の程度あるいは転移部位に関係なくみられました。

完全奏効した患者はひとりもいませんでした。客観的奏効率、つまり治療によって腫瘍サイズが測定可能なほど減少した患者の割合は、ソラフェニブ群で12%、プラセボ群では1%未満でした。

全生存期間は、ソラフェニブによる治療を受けた患者とプラセボ群の患者との間で差はありませんでした。客観的に奏効しなかった患者のうち、ソラフェニブ群の42%近くが、治療開始後少なくとも6カ月間、安定状態を保っていたのに対し、プラセボ群では33%でした。

プラセボ群の患者の約70%が、癌の進行が始まった時にクロスオーバーが実施され、ソラフェニブ治療を受け始めました。

本試験におけるすべての患者の61%(ソラフェニブ群では126人、プラセボ群では130人)について、腫瘍組織中のBRAFおよびRAS変異に関する情報が利用できました。これらの遺伝子変異は、ソラフェニブ治療を受けた患者における無増悪生存期間の延長とは関連していませんでした。

ソラフェニブ治療を受けたほぼすべての患者に副作用がみられました。副作用の大部分は軽度なもので、手足皮膚反応、下痢、発疹、疲労および脱毛などがありました。

にもかかわらず、ソラフェニブ群患者の3分の2近くが副作用のために一時的に治療を中止あるいは投与量を減量し、19%近くが完全に治療を中止しました。

ソラフェニブ群患者の約37%およびプラセボ群患者の26%に重篤な有害事象がありました。ソラフェニブ群における重篤な有害事象には、二次癌の発症、呼吸困難および胸水がありました。心臓発作による死亡例もまた、ソラフェニブに起因するものでした。

2013年11月22日、 FDAは、DECISION試験の結果に基づいて、放射性ヨウ素抵抗性転移性分化型甲状腺癌患者の治療にソラフェニブを承認しました。

制限事項

「放射性ヨウ素抵抗性転移性甲状腺癌患者に適用できる薬剤が新たにFDAによって承認されたことは、患者にとってよいニュースです」と NCIがんセンターの内分泌癌の専門家であるElectron Kebebew医師は述べました。

しかし、一部の放射性ヨウ素抵抗性、転移性甲状腺癌の患者ではソラフェニブがかなりの副作用を生じる可能性があり、本疾患はゆっくりと進行するものなので、迅速な治療が必要ないかもしれない、と指摘しました。「治療によって完全寛解しないことや患者のわずか12%にしか部分寛解がみられないことを考えると、臨床的判断を導くためには、こうした患者でどのぐらい急速にこの癌が進行したか、またもっとも急速に進行した患者が治療に奏効しやすい傾向にあったかどうかを知ることが有益でしょう」と示唆しました。

「病気の進行を遅らせることは重要ですが」とKebebew氏は続け、「ソラフェニブが全生存を改善するかどうかは明らかになっていません。それが患者や臨床医にとって重要な情報なのです」と述べま した。

コメント

「DECISION試験の結果は、 進行性の放射性ヨウ素抵抗性分化型甲状腺癌の新たな標準治療を確立しました」とLancet誌の付随コメントに、 オハイオ州立大学総合がんセンターのSigurdis Haraldsdottir 医学博士およびManisha Shah医師は記述しました。

「非常に多くのプラセボ群患者についてクロスオーバー試験が実施され、ソラフェニブ治療を受け始めているので、全生存期間が改善されないのは当然です」と彼らは続けました。

「全体的に、DECISION試験でみられた副作用は、ソラフェニブについて他の臨床試験でみられたものと一致していました」とHaraldsdottir氏とShah氏は指摘しました。「臨床医はソラフェニブのように複数のキナーゼを標的とする薬剤に共通する影響と考えた方が良いでしょう」と警告しました。

「これらの作用の中には出血、血栓塞栓症、腸穿孔および左心室機能障害などといった稀な重篤な作用があるかもしれません」とHaraldsdottir氏とShah氏は説明しました。 「ですから、患者がソラフェニブ治療を受けている時には、有害事象の厳密なモニタリングや早期発見そして対応が不可欠なのです」。

これらの患者にソラフェニブを使用する際には、治療と副作用の間の適切なバランスを取ることが必要です、とKebebew氏は強調しました。「閾値を見つける必要があります。なぜなら、こうした副作用プロファイルをもつ薬剤から判断すると、疾患が急速に進行するまで、その使用を延期したほうがよいかもしれないからです」。

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井上陽子 訳
東光久(血液癌、腫瘍内科領域/天理よろず相談所病院)監修
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原文 

 

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