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2011/05/17号◆特集記事「新しい化学療法レジメンで進行膵癌患者の生存期間が延長」

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2011/05/17号◆特集記事「新しい化学療法レジメンで進行膵癌患者の生存期間が延長」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年5月17日号(Volume 8 / Number 10)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

新しい化学療法レジメンで進行膵臓癌患者の生存期間が延長

もっとも致命的なタイプの癌の1つである転移性膵臓癌の患者に対する第3相臨床試験で、4剤併用による化学療法レジメンが過去最長の生存期間延長をもたらした。FOLFIRINOXというこの化学療法を受けた患者では、現在の標準治療であるゲムシタビン投与を受けた患者に比べ生存期間が約4カ月延長した(11.1カ月対6.8カ月)。

本試験はフランスの48病院で実施され、結果は5月12日付New England Journal of Medicine誌に掲載された。

このレジメンで用いる薬剤はフルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリンイリノテカンオキサリプラチンである。重大な副作用があるため転移性の癌患者すべてに適しているわけではない、と一部の膵臓癌研究者は注意を促している。それでもいわゆる全身状態(パフォーマンス・ステータス)が良好であれば、今回のレジメンが治療対象候補患者の標準治療となりそうだと研究者らは述べている。

「奏効率、全転帰からみて、進行膵臓癌患者で得た結果としては今回の結果は明らかに最高のものです」。ノースウエスタン大学ロバート・H・ルリー総合がんセンターのDr.Al Benson氏はこう述べた(同氏は本研究には関与していない)。「ただし、強い毒性を生じる可能性もある併用法であるため、このレジメンを患者に検討する際には注意喚起が必要です」とも話している。

本試験の結果は予想外の結果とも言えた。過去数十年間、膵臓癌患者に対しさまざまな化学療法剤を単独または種々の併用法として投与する試験が行われてきたが、病勢進行や生存期間に与える影響は常にごくわずかであるかゼロであった。

それでも医師および患者は治療のリスクとベネフィットをはかりにかける必要がある、とNCI癌治療・診断部門のDr.Jack Welch氏は強調した。「しかし現在までの膵臓癌研究の成果を考えると、FOLFIRINOXレジメンのベネフィットは誇張してもしすぎることはないでしょう」。

試験デザインおよび患者選択

フランスで実施された本試験は効果的なデザインが採用されている、とWelch氏は述べた。本研究には最終的に患者342人が参加したが、当初はもう少し小規模のランダム化第2相臨床試験としてスタートした。88人目の患者までに得られた抗腫瘍効果をもとに、フランスの同研究チームは本研究を拡大し、第2相臨床試験の患者を今回の第3相臨床試験における患者集団に組み入れた。

試験に参加した患者の全身状態を通常用いられる0~5のスケールで評価すると、全員が0または1であった。転移性膵臓癌患者のおよそ20~25%がこのカテゴリーに属し、FOLFIRINOXによる治療を受ける候補となりうる、とバーバラ・アン・カルマノス癌研究所(デトロイト)のDr.Philip A. Philip氏は説明している。

本試験のFOLFIRINOX群では全生存期間の改善に加え、腫瘍の退縮が少しでも見られた患者は3分の1近くに及んだ。対してゲムシタビン群は患者の9%にすぎなかった。

昨年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会で報告された本試験の生存期間に関する初期の結果をもとに、「地域の腫瘍医もだんだんとこのレジメンを日々の診療で採用しつつある」とPhilip氏は述べた。

FOLFIRINOXレジメンに関連する重大な副作用には好中球減少症、末梢神経障害、消化管症状などがある。ただし、ゲムシタビン群で副作用のために本研究から脱落した患者はさらに多い、と本研究代表でCentre Alexis Vautrinおよびナンシー大学のDr.Thierry Conroy氏は電子メールで指摘している。

全身状態以外に、患者の年齢(76歳未満)および肝機能をもとに本レジメンの候補とするかが決まる、とConroy氏は解説した。

FOLFIRINOXレジメンでは好中球減少症リスクが高いことから、胆管ステントを留置した患者で実施する場合は慎重に進める必要がある、とBenson氏は付け加えた。膵臓癌患者では膵頭に形成された腫瘍が胆管を閉塞して小腸への胆汁排出を妨げることが多く、胆管ステントの留置も普通に行われる。ステントはこの閉塞を緩和するため留置される。

胆管ステントを留置した患者では、好中球減少症を起こした場合、感染症から致命的な血液内の感染である敗血症に進行するリスクが高まる、と同氏は述べた。

低毒性の併用法を求めて

本試験の結果は喜ばしいニュースではあるが、進行膵臓癌についてはまだ研究すべき課題が山積している、とPhilip氏は強調し、「新薬の開発にあたっては、このレジメンに耐えられないような、全身状態がさらに悪い患者を無視してはなりません」と述べた。

研究者らはFOLFIRINOXレジメンの成功を足掛かりに次を見据えている。たとえばConroy氏らは、早期の膵臓癌と診断され外科的手術で腫瘍切除を予定している患者のごく一部で術後補助療法として本レジメンを試すことを計画している。

FOLFIRINOXの成果は調査研究の新たな道を開いた、とWelch氏は強調した。FOLFIRINOXを骨格として他の治療法、特に毒性の重ならない標的治療と組み合わせるなどがある。また、このレジメンは4薬がすべて不可欠なのか、用量を調節して効果を維持して重大な副作用を少しでも軽減できないかなど、徹底的に分析して効果を最大化する必要がある。

「長年のあいだ化学療法の骨格といえばゲムシタビンがすべてでした」とWelch氏は語る。「今は、より柔軟に考えることができます」。

—Carmen Phillips

【画像下キャプション訳】膵癌の中でもっとも多い型の腺癌を示す病理切片標本。こう診断されるた膵癌患者のうち5年以上生存するのは5%未満である.(写真:Ed Uthman)[画像原文参照]

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橋本 仁  訳
畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター) 監修
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