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臨床試験の再活性化計画がNCIから発表

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臨床試験の再活性化計画がNCIから発表

癌診療の効率化向上に向けた共同研究グループ・プログラムの統合計画
NCIニュース 2010年12月23日

長きにわたり、新たな癌治療のための臨床試験を多く全米で実施してきた臨床試験共同研究グループ・プログラム(Clinical Trials Cooperative Group Program)に対して、今回大きな見直しが行なわれることが、国立癌研究所(NCI)によって発表された。主な改革としては、現在成人癌患者の臨床試験を実施している9つのグループ(組織)を、さらに洗練された4組織へと統合するものであり、新たな癌治療の試験をデザインし実施する予定である。これらの見直しは、癌患者に大きな利益をもたらすことと、研究者への情報提供を目的としている。この動きは、NCIが要請した米国医学研究会(Institute of Medicine:IOM)からの2010年4月の報告書に準じたもので、共同研究グループ・プログラムの再編をはじめとする数多くの見直しが求められた。

NCI総長のハロルド・バーマス医師(Harold E. Varmus, M.D.)は、「臨床試験は、癌のケアや治療の中核となるものであり、NCIでは臨床試験がその効力を発揮できるよう最善を尽くしてきた」と述べた。「癌の発生と進行の要因となる遺伝子変化およびエピジェネティックな変化に関する知識は過去10年で急激に増加した。その結果、得られたさまざまな癌における知見を生かした新治療を、NCIは臨床試験という手段を用いて判断せばならず、その方法をわれわれ自身で評価し改善していかなければならないのである」。

IOMの4月の報告書では、今の臨床試験システムが、非能率的かつ煩雑であるほか、財源不足や複雑すぎることも指摘されていた。この報告書では、既存の成人患者向け共同研究グループ(adult cooperative groups)を統合してグループ数を減らすことで、より一体化して機能する可能性があると提言されていた。

NCI共同研究グループ・プログラムは50年以上前に設立され、3,100を超える施設と14,000人を上回る研究者などからなり、このプログラムで毎年25,000人以上が臨床試験に登録されている。小児患者向けグループは、4グループあったものが数年前に1つに統合されており、唯一となった小児患者向けグループを他のグループと統合させる予定はない。

癌治療・診断部門(NCI関連部門)責任者James H. Doroshow 医師は、「癌診療は、分子腫瘍学の進歩に伴い著しく変わってきており、そうした患者の腫瘍の分子特性を最大限に利用してその患者にとって最良の治療へ導くためには、近代化した臨床試験とそれを実施する近代化したシステムとが必要となる」と語った。「癌の解明が進むとともに、臨床試験のデザインと実施も変わっていかねばならない」。

過去数10年間にわたり普及してきた標準治療と比較して、新治療のほうが優れているかどうかを確かめるため、癌の臨床試験では単剤療法や多剤併用療法もしくは手術や放射線などとの併用療法が用いられてきた。最近では、腫瘍の遺伝子プロファイリングを決定に用いる臨床試験が一部で始まった。例えば、現在進行中の「TAILORx」というNCI主導の乳癌試験では、早期乳癌女性の再発リスクとの関連が多くみられる遺伝子を、より適切で効果的な治療を患者に割り当てるために利用できるかどうかについて検討している。

この種の試験では、ある遺伝子経路変化の認められた腫瘍を有する患者集団を見つけ出すために、きわめて多くの患者にスクリーニングを行う必要がある。したがって、こうした試験には、多くの腫瘍検体の獲得・分注、DNA塩基配列決定、遺伝情報に適合した治療選択肢のマッチングが必要となる。こうした試験のより一層の複雑さゆえに、現在の共同研究グループ構造を最新化かつ簡略化すべきであり、そこに理論的根拠がある。

今回の統合により、オペレーションセンター・データ管理センター・腫瘍バンクの効率化が進むことが目的とされており、これらの見直しには、現在活動中のすべての共同研究グループの評価が勘案される。現在のグループは、提案された見直し案について意見を述べたり、NCI上層部との話し合いで再編計画の具体的な側面を検討したりする機会も与えられる。

具体的なグループ統合が進められるなか、新しい臨床試験を開始するまでの期間の短縮などの一般的な効率化についてはすでに計画されている。今までは、新しい試験が提案されると、承認を得るためのコンセプトを提出せねばならず、この一連の手続きに数年間もかかる場合もあった。さらに、このレビューがコンセプト承認から2年以内に完了しなかった場合、試験への参加登録者が最終目標数に達する可能性は極めて低かった。その理由の一つとして、コンセプトの基礎となる科学的論点が、新たな進歩に追い抜かれてしまう可能性があるからである。

2011年1月1日からNCIは新たに期限を適用する予定である。これは「作業効率化部会Operational Efficiency Working Group」によって公式化されるもので、新しい臨床試験を開始するまでの期間が半減され、コンセプト承認から2年以内に開始されない試験は打ち切られることになる。

NCIでは、その他にもいくつかの方法を用いて効率を上げようと努力している。その具体例を以下に挙げる。

 中央試験審査委員会(セントラルIRB)によって、全米の臨床試験プロトコルの最終許可と承認のための平均期間を、2007年の150日間から、2010年に42日間へと短縮した。

 改訂を行った審査プロセスを優先する。改訂後は、患者支援者(アドボケート)やがんセンターの専門家を含める予定であり、画像診断または癌制御のような疾患別モニタリングまたは治療法別モニタリングに新たに重点を置く。

 情報技術を最新のものにし、1つのシステムで、患者情報や転帰などの臨床試験標準化データを収集できるようにする。

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遠藤香利 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科)監修
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原文

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